ヒュンダイ グレンジャー (2006/4/29)

 




カムリ


マークX 2.5


スカイライン 250GT
 

 

 


多くの日本人が指摘しているように、一見ホンダと間違える程に似ているスタイルとエンブレム。
見方によっては先代カムリとも似ているし、要するに北米のベストセラー日本車のパクリで、
マークXが5シリーズに似ているといっていも、これ程に露骨ではない。

韓国の威信をかけた88年のソウルオリンピックだったが、この大イベントでVIPを送迎するために必要な高級乗用車が80年代半ばの韓国には存在しなかった。 そこで、ヒュンダイが提携先であった三菱自動車に泣きついて、三菱の指導の元に完成したのが1986〜92年の初代グレンジャーだった。と、言っても一部外観上の違いなどはあるものの 、中身は2代目デボネアの韓国ノックダウン版だ。

2代目グレンジャー(1992〜98年)も、これまた3代目デボネアそのものだ。この頃のデボネアは販売台数の低迷に悩んでいたが、韓国版のグレンジャーは韓国内の高級車のトップシェアーを誇る、憧れの高級乗用車だったから、 量産効果を期待してボディは韓国で製作され、これを日本の三菱も使っていた。日本では相手にされない時代遅れのデボネアが、韓国では国民憧れの最高級車だった訳だ。

1996年にヒュンダイはショーファードリブンの最上級車としてグレンジャーより1ランク上に位置するダイナスティを発売した。このためフォーマルカーとしての用途が減った3代目グレンジャー(1998〜2005年)は韓国車としては珍しい4ドアハードトップボディで、 名称もグレンジャーXGと呼ばれた。このクルマは日本でもヒュンダイXGとして販売されていた。 エレガントなスタイル、豪華なインテリア、V6 3ℓエンジンとマニアルモード付きの5速ATと、当時としては世界の先端を行くグレンジャーXGは、韓国民に自信を与え、今や韓国の自動車産業は日本を追い越したとまで思わせたようだ。しかし、XGというのは、ぶっちゃけディアマンテだ。優雅な4ドアハードトップは、実は時代遅れのディアマンテをベースにしたからで、内装の細かい部品もディアマンテだし、自慢の5速ATは操作レバーもパネルも、三菱”INVVECS-U”そのものだ。
ここで、2車を比べてみると。

            三菱ディアマンテ    ヒュンダイXG
寸法(全長×全幅×全高)mm 4785X1785X1435     4875X1825X1420
車両重量          1510kg       1650kg
エンジン          V6DOHC 24VALVE     V6DOHC 24VALVE
 型式           6G72        G6CT
 内径×行程mm      91.1X76.0       91.1X76.0
 総排気量ℓ        2.972       2.972
 
最高出力        270ps/7000rpm      184ps/5000rpm
 
最大トルク       30.7kg-m/4500rpm    25.8kg-m/3500rpm

さて、こうして見るとXGの方が少し大きいが、それにしても車重は140kgも重い。エンジンは基本的に同じ物のようだが、XGはパワー、トルクともにかなり低い。製造技術が低いのか、それとも本当のノウハウを教えないのか?
数年前にXGに試乗した際は、想像以上にシッカリした乗り味に驚いたものだが、考えてみれば当時でも1世代前の三菱車とはいえ、腐っても鯛で、 これを必死に小改良を繰り返したXGは、まあ其れなりの水準だった訳だ。要するに目一杯手を入れたディアマンテだったのだ。 あのころのクラウンと言えば、特にロイヤル系ときたら、フワフワ・ぐらぐらだったから、それに比べれば結構マトモに思えたのだけれど、 そのクラウンもゼロクラウンになって、当時に比べれば大幅に欧州車的になっているから、果して新型グレンジャーは、どの程度まで対抗できるのだろうか。

 


初代グレンジャー(1986〜1992)は基本的に2代目デボネアそのもの。 写真はデボネア。


2代目グレンジャー(1992〜98年)もまた3代目デボネアそのもの。 写真はデボネア。
 


3代目(1998〜2005年)はグレンジャーXGと呼ばれ4ドアハードトップによるパーソナルセダンに変身。ショーファドリブンのフォーマルセダンはダイナスティに引き継がれる。 日本国内ではヒュンダイXGとして販売された。

 
グレンジャーXGのベースは実はこのディアマンテ。
 
 

ところで、「ヒュンダイを知らないのは日本だけだ」等と強気なCFもあながちハッタリではないようで、今やヒュンダイは世界第7位のメーカらしい。人によっては日本車にとって大変な脅威で、 米国でも日本車のシェアーを奪われていると も言う。本当にそうなのか?以下、米国の状況を見てみれば・・・・。

米国の乗用車販売台数(千台/年)と[占有率](%)の推移(千台/年)
車種名     2004年     2002年     2000年
----------------------------------------------------------------
GM     1,847 [24.6]  2,031 [25.1]  2,492 [28.2]
トヨタ    1,054 [14.0]   986 [12.2]   973 [11.0]
フォード    889 [11.8]  1,178 [14.5]  1,527 [17.3]
ホンダ     843 [11.2]   839 [10.4]   882 [10.0]
ニッサン    537 [ 7.2]   491 [ 6.1]   422 [ 4.8]
クライスラー  497 [ 6.6]   527 [ 6.5]   649 [ 7.3]
ヒュンダイ   300 [ 4.0]   297 [ 3.7]   234 [ 2.6]
VW      228 [ 3.0]   331 [ 4.1]   353 [ 4.0]
BMW     226 [ 3.0]   214 [ 2.6]   163 [ 1.8]
MB      194 [ 2.6]   170 [ 2.1]   153 [ 1.7]
マツダ     188 [ 2.5]   159 [ 2.0]   167 [ 2.0]
キア      156 [ 2.1]   153 [ 1.9]    98 [ 1.1]
スバル     122 [ 1.6]   124 [ 1.5]   116 [ 1.3]
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成る程、こうして見ればヒュンダイは今や米国でも結構なシェアを獲得しているし、ここ数年は昇り調子は間違い無い。 ヒュンダイの躍進した分は日本車が食われたのかといえば、そんな事はなく、トヨタはいつの間にかフォードを抜いて2位に躍り出ているし、 ニッサンにしても、ここ数年で大いに上昇しており、その伸び率はヒュンダイと変わらない。と、言うことは日本や韓国勢が延びた理由は、他の何処かが落ち目になったからに違いなく、 そう思って良く見れば、最大の原因はフォードの不振だろう。もちろんGMも落ち込んでいるし、クライスラーだってフォード程では無いにしろ落ちている。 ヒュンダイが伸びた原因はビッグスリーの不振に割り込んだというのが正しいのではないだろうか。 いや、言い方を変えれば、ビッグ3の低迷は日本や韓国などの躍進が原因とも言える。
話が本題から逸れるが、上の表を見て気が付くのは、BMWとMBの躍進だ。あんなに高価なクルマが結構な売り上げを達成しているし、 ここ数年の躍進はヒュンダイ以上だ。これだけ売れれば、安く供給できるのは当たり前だし、また安いから売れるという好調なスパイラルになっていく。

それでは、グレンジャー自身の米国での売れ行きはと言えば、2004年の販売台数は16.6千台で、カムリの427万台には遠く及ばず、(自称)ライバルのレクサスESの75.9千台にも歯が立たない。北米で売れているヒュンダイ車はエラントラ(113千台)とソナタ(107千台)で、聞くところではレンタカーに多いとか。
新型グレンジャーは米国ではAZERAという名称で、日本仕様の3.3ℓ、234psに対して北米仕様は3.8ℓ、263psとなる。価格帯は$24,335〜26,835で、これはカムリ($18,270〜27,520)のベースグレードより高い設定になっている。 聞くところによれば、AZERA(グレンジャー)のライバルはレクサスES(NewES350は$33,865)とヒュンダイでは公言しているとか。成る程、エンジン排気量等から見ればカムリよりもESのクラスということか。 しかし、米国人は安くて得だと思えばブランドに拘らないそうだが、流石に安物ブランドの代名詞のようなヒュンダイの高級車では、いくら安くても躊躇するだろう。これを販売不振と言うのか、月に千台以上も売れていると驚くのか、人それぞれという事か?


テールランプの形状は、これまた多くの指摘があるように、先代の北米アコードにソックリ。


トランクスペースは圧倒的に広い。特にサスの張り出しが少ないので、幅方向のスペースの広さは群を抜いている。ショボいサスが幸福に転じたということか?

話を新型グレンジャーに戻すと、全幅1865mm×全長4895mmというサイズは、カムリより全幅で45mm、全長で80mmも大きい。 外観は一見ホンダ風でもあり、旧型カムリ風でもある。いや、”風”なんて生易しいものではなく、ソックリといっても良い。日本車だって昔からパクリは毎度のことだったが、このグレンジャーのパクリ具合は半端じゃない! まあ、この辺は韓国内でも批判が多いらしいし、実際に朝鮮日報でも批判していた ようだ。

日本で販売されるグレンジャーはベースグレードが3.3GLS(299.25万円)で、これに17インチタイヤ、スーパービジョンメーター、本革と木目調コンビのステアリングホイールなどの“豪華装備”を追加したLパッケージ(339.15万円)がある。 2つのグレードの価格差は40万円にも及ぶが、その割にはLパッケージに追加される装備は有用なものはないし、上級グレードに定番のナビもない。それゃ、まあ、ライン 標準で金星社のナビなんて付いていても、喜ぶ日本人はいないだろうから、正解ではあるが。


リアスペースは十分だが、平らでホールドの悪いリアシート形状のため、ここに長時間乗る気はしない。


フロントシートも座面が小さく、座り心地も悪い。トヨタカムリのシートも良くないが、これは更に悪さを強調したような出来だ。


ドアを開ければ“GRANDEUR”のロゴがお出迎え。“M5”や“CARRERA”とは言わないまでも、せめてLEXUS程度なら・・・・。

      

室内の質感は特に文句を言うレベルではなく、パネルの繋ぎ目などもよく出来てはいるが、その雰囲気は何やら日本車的というか、トヨタ車のようだ。 これならディアマンテと多くのインテリアパーツを共用していた先代XGの方が、高級車的な豪華さという面では勝っていたと感じる。 最近はあらゆる面で進歩した日本車でも、未だに欧州車に敵わないのがシートだが、グレンジャーのシートも日本車と比べても、どうしようもなさでは更に上手だ。グレンジャーは全グレードで本革シートを採用しているが、革の表皮は滑りやすく、座面やバックレストの形状は小ぶりで、しかも平らで、オマケに変に柔らかい。
カタログには「柔らかな革の感触、木目の美しさ、上質なメタルトリム・・。素材を吟味したインテリアが、あなたを心地よく受け止めます。」と書かれているが、 その柔らな革のシートは、何やら○○家具で「展示品処分、3点セット79,800円」のソファーセットのようだし、木目の美しさと言ったって、プラスチックのフェイクウッドだから、印刷が美しいと言いたいのだろうか?
リアーシートに目をやると、流石に大きな(北米では中型だが)FFセダンだけあってスペースは十分だし、乗り込む前に少し離れて室内を見ると、本革シートやウッド(調)トリムが実に高級車っぽい。 ところが、実際に後席に乗り込んでみると、フロント以上に平らなシートは腰の無いウレタンとともに、見かけとは違って居心地は良くない。


室内も日本車的な雰囲気だが、ダッシュボード上部に細い木目“風”トリムを配したところがチョッと
新しく感じる。全体の雰囲気はトヨタ的だ。パネルの繋ぎ目などの仕上げは結構良く出来ている。

今流行の電子キーではなく、オーソドックスなメカ式のキー。ただし、内溝キーになっているのは高級車っぽい!
リモコンはキーとは別体となっている。

最近の日本では軽自動車でさえ採用している電子式キーはグレンジャーには付いていない。 キーは少し前の高級車の証しでもある内溝式で、一般的にキーと一体のリモコンはグレンジャーの場合は別体となっている。このキーを差し込んで回すというオーソドックスな操作でエンジンは目覚める。 アイドリングは結構静かで安定してはいるが、このクラス(V6、3リッター)のトヨタ車のように、エンジンが回っていることを確認するのは回転計のみという程に静かではない。三菱のINVVECS-Uその物のATセレクターをDレンジに入れて、 トヨタ車ソックリのプッシュ/プッシュ式のパーキングブレーキをリリースする。


3.3ℓ、V型6気筒。234ps、31.0kgmのスペックは日本車に比べて見劣りする。

運転席からの第一印象はシート位置が高く、更にボンネットが良く見えるから、意外に取り回し が良い。既に触れたように、シートは座面が小さく腿のサポートも良くないので尻だけで体を支えることになり非常に疲れる。走り出すと、流石にV6、3.3ℓのトルクは、チョット多めにスロットルを踏むと飛び出すように発進する。加速自体は悪くないし、低いギヤなら5500rpm程度までストレス無く回ることは回るが、高回転域での音は決して気持ちよくは無い。 トルク感に関しても、排気量3ℓ超えの高級サルーンとしてはイマイチで、クラウン3.0のBMW530iに勝るとも劣らない、踏み込めば驚く程の加速もないし、 ましてや0.2ℓ大きいとは言え、フーガ350のアメ車顔負けの低回転からの図太いトルクも持ってはいない。度々言われることに、欧州車の200psは国産車の250psよりも体感的に速いとか、 トヨタはスペック程にはパワーはないから、俗にトヨタ馬力なんて陰口をたたかれているが、ヒュンダイはトヨタより更に上手の「韓国馬力」とでも言いたくなる。

グレンジャーは静かに加速するぶんにはATのシフトショックなどは感じられない。ただし、このATは40〜50km/h程度で巡航中にフルスロットルを踏んでも反応しない。それでも、踏み続けるとエンジン回転数がモアーと上がり始めて2〜3秒後にシフトダウンをした事が判る。コンナにゆっくりとシフトダウンをするので、ショック自体は少ないが、これでは使い物にならない。今度はマニアルモードを試すために、レバーをDから左に倒してみる。BMWだと、この段階でSモードとなるのだが、グレンジャーはこの段階でマニアルモードになるようだ。停止時に1にして発進してみたが、レスポンスはまあまあで、取り合えずあっても無駄にはならないが、実際にこのクルマのオーナーがこの機構を使うことは稀だろう。


指針の中心やメーターの目盛が白く、何やらポップな印象が高級セダンを狙ったコンセプトと相容れない。上級グレードのLパッケージはスーパービジョンという、言って見ればトヨタのオプディトロンのようなメーターになる。


ステアリングホイールにはオーディオのコントロールスイッチを持つ。センターにヒュンダイのロゴマークを付けるなど、最近の欧州や日本車の雰囲気を真似ている。


XGと変わらないATセレクター。言い換えればディアマンテのINVVECS-Uそのもの。左ハンドルと共通のためなのか、左に寄っている。

 


純正ナビは設定がなく、デーラーオプションで取り付け枠のみが設定されているので、本体は社外品を買って付けることになる。

ステアリングは適度な操舵力と、このクラスの大柄なFF車としては標準的なレスポンスで、このクルマが米国でライバルとしているカムリと同程度ではある。サスペンションの設定は現代の国産車に比べると柔らかめだが、それでも韓国内仕様や北米仕様に比べれば遥かに硬めだそうだ。しかし、ブレーキを軽く掛ける度にノーズダイブが起こる。その代わり、街乗り速度での乗り心地自体は悪くないが、少し大きな段差では意外とショックがあるし、ボディ全体がブルンとするなど、低剛性ボディの典型的な乗り心地で、少し前の日本車レベルだ。 試乗車に装着されていたタイヤは韓国製のKUMHO SOLUSという銘柄で、前回試乗したヒュンダイクーペがミシュランパイロットスポーツを装着するという大サービスだったのに比べると随分 ケチったものだ。

昨年試乗したヒュンダイクーペはいわゆるドアンダーというやつで、とに角曲がらない!そこで今回はヒュンダイクーペでは40km/hでも曲がれなかったコーナーを試してみた。 前回と同じコーナーを45km/hくらいで進入してみると、コーナーリング特性は意外とアンダーが弱く、柔らかくてノーズダイブの多いサスから 想像するよりもロールは少なかった。サスペンションの左右差を規制するアンチロールバーが強力なのだろうか?ロールの規制技術は習得出来たが、前後のピッチング を押さえることは、そう簡単には習得出来ないのかもしれない。まあ、クーペが余りにも酷かったから、それに比べれば大いなる進歩には違いないが、だから国産車と比べて勝っているかと言えば精々互角。それも、走りは期待出来ないようなクルマと比べた場合だ。 例えばライバルのカムリとならば、結構良い勝負かもしれない。ただし、このクルマは実際の速度よりも速く感じるという、一昔前の日本車的な特徴を持つ。15年以上前にメルセデス等に乗ると、何時もの国産車で50km/h程度の積もりで走っていて、ふと速度計を見るとギョッということがあった。 この感覚は今でも多少はあるが、以前に比べれば国産車(の良いほう)はかなり良くなっている。グレンジャーは如何かと言えば、試乗の途中で片側一車線とはいえ十分な広さの一級国道の中速コーナーを80km/h程度で回ってみたら、その時の感覚はヤケ に速度感があるし、コーナーリング中は、かなり不安を感じた。 これに比べてカムリはそれ程の速度感は感じなかったから、総合的な出来という点ではマダマダなのだろう。
ブレーキは以前乗ったヒュンダイクーペなど韓国車の標準からすれば、可也の進歩が見られる。何より、踏めばチャンと減速するし、パッドの食い付き感もあるので、以前のような不安はない。しかし、停止時にブレーキペダルを踏んでみれば、遊びの部分を過ぎて、パッドがローターに当ったあたりから更に踏力を増すと、ペダルはかなりストロークする。要するに、ブレーキシステム全体の剛性が低いのだろう。国産車でもこれに近いクルマもあるし、走行中のフィーング自体は、それ程悪くは無いから、 これもまた、低位の国産車程度には追いついているとも言える。ブレーキに関しては、最近の国産車の改善は著しいから、ヒュンダイが国産のトップクラスに追いつくのは 、これまた当分先だとも断言できる。


試乗した標準グレードは前後共に6.5J16アルミホイールと225/65R16タイヤを装着する。 写真はリア。


フロントタイヤ・ホイールともリアと同じ。 装着さていたタイヤはKUMHO SOLUSという韓国製のタイヤだ。


リアキャリパーは日本車にソックリの形状を
している。
 


フロントキャリパーも先代XGと違い、日本車ソックリ
の形状になった。ボディのメッキ色といい、パッドの
青い塗装色といい、日本製に瓜二つ!

 

日本車ソックリの外観デザインどころか、マークまで日本の某社に似せたと言いたくなる程に、コピー商品臭さがムンムンしている、このクルマ。 先代のXGは三菱車(ディアマンテ)のボディ違いとでも言える内容で、それを2.5ℓならば 220万円で売っていたから、この抜群のコストパフォーマンスという強力な強みがあったにも拘らず結果は惨敗だった。それでは新型グレンジャーはといえば、確かに3.3ℓ、V6に本革シートまで付いた高級車が300万円で買えるのは、コストパフォーマンスでは強みと言えない事もないが、先代XGの時とは事情が変わり、ホンダからは3ℓ、V6のインスパイアが284万円と、本革シートは付いて無いにしても、グレンジャーより安いのだから、 日本国内で果して勝負になるのだろうか?その、インスパイアですら販売不振だし、カムリだって大して売れていない。要するに北米向けのFF車というのは日本では市場自体が小さい。今回の試乗の結果では、性能的には少し前の日本車程度には追いついたともいえるが、最先端の日本車に比べればマダマダだ。加えて、最近のニュースに目をやれば、竹島や横田めぐみさんの問題など、日本人としては韓国自体に不信を持つような事実も多いから、ヒュンダイ車の日本国内展開では、この面でも大きなハンディがある。ヒュンダイの販売店は過去の経緯から三菱系のデーラーが多いようだが、経営は成り立っているのだろうかと心配になってしまう。

普通のサラリーマンにとって300万円のクルマを買うということは、クルマに対する思い入れが可也あるユーザーだろう。それに一般的な家庭でクルマを買うという事は、一生のうちに何度も無いビッグイベントとなるから、こんな時に、いくらコストパフォーマンスが良いと言っても、韓国車を買うだろうか?家族思いのオトウサンや家庭を牛耳っている のがオカアサンならば、300万円出して買うクルマと言えば、 もちろんビッグサイズのミニバンしかない。もしもカーマニアのオトウサンの発言力が強ければ、ランエボやインプSTIあたりを狙うだろうし、 セダン派ならばもう一息で何時かはクラウンのロイヤルエクストラでも良いし、憧れのスポーツカーならフェアレディZも視界に入る。 これらの選択を差し置いてグレンジャーを買うだろうか? 先代のXGは個人タクシー用としてソコソコ売れたそうだ。新型グレンジャーも近々LPG仕様が発売されるとか。タクシーならばコストパフォーマンスが最優先だし、個人タクシーが高級セダンを使う場合にフーガやクラウンロイヤルではLPG仕様がないので、経費の面では辛いだろうから、グレンジャーがLPG仕様を用意するのは正解だ。タクシー用として地道に実績を重ねて、焦らずに長い目で浸透させることが早道だろう。ただし、途中でギブアップしなければ・・・だか。