トヨタ カムリ (2006/4/21)

 




マークX 2.5


スカイライン 250GT
 

 

 


最近のトヨタ車として平均的なスタイルだ。北米でベストセラーということもあり、万人向けの
デザインとなる。前幅1820、全長4815という外寸は日本の道路では、やはり大きいが、
運転してみれば特に大きさは感じない。

世界一のクルマ需要国でもある米国。この国で今一番売れている乗用車はトヨタカムリと言うのは、皆さんご存知と思う。 ところが初代カムリは米国向けとして開発された訳ではなかった。
初代カムリ(A40)が登場したのは1980年1月で、内容的には2代目セリカの4ドアセダン版であり、カリーナの兄弟車でもあった。エンジンは1.6ℓと1.8ℓの2本建てで、 その後、同年の8月に追加設定されたのが、4輪ディスクを装着するA50で、1.8ℓに加えて2ℓの設定もあり、最上級モデルは2ℓツインカムの18R-GEU(135ps)を搭載した2000GTという、今のカムリとは全く別の路線を行っていた。
実はA40カリーナの2000GTは B_Otaku が1年半程所有したことがある。ダブルチョークソレックスキャブを2連装し、結晶塗装されたカムカバー、エンジンブロックに鋳出しされたヤマハマークなどに憧れて買ったこのクルマは、確かに直線加速は速かったが、 今まで試乗記で何回か触れて来たように、伊豆の山道で初心者マークの女子大生の運転するメルセデス300TD(ディーゼルワゴン、S123)について行くのがヤットだった事実から、 スペックだけの国産車に愛想を尽かせた原因ともなった。この300TDを運転する機会は結構あったが、このワゴンを運転した後のカリーナGTでの帰路は苦痛の連続だった。何しろステアリングは右でも左でも、操舵するまでに外周で1cm以上の遊びを経ないと始まらないし、その遊びを超えてからも反応は鈍かった。 一応、走りに振ったGTというグレードでもこんな状況だから、これが一般的なファミリーカーだと更に悲惨だった。
カムリが米国向けとなったのは、1986年リリースの3代目(V20)からで、それも4気筒発売から1年後の1987年にリリースされたV6エンジン搭載車で、国内ではカムリプロミネントと呼ばれたモデルからだった。 プロミネントにはハードトップ(HT)モデルがあり、これに当時米国で新たに展開したレクサスチャンネルのフラッグシップであるLS400(国内ではセルシオ)に似せたグリルをつけたモデルをレクサスES250として北米展開された。
4代目、6代目については下の写真とキャプションを参照願うとして、国内専用の4気筒カムリは1994年〜98年の5代目(V40系)を最後に姿を消すこととなった。


4代目カムリ(V30、1990〜1994)
4気筒1.8ℓと2ℓの平凡な小型車だった。後にV6搭載のプロミネントというモデルも設定されたが、ウィンダムの発売により廃止された。
 


6代目カムリ(XV20、1999〜2001)
実はこのモデルは1997年に北米向けカムリの国内販売でカムリグラシアとして発売されたものが、99年のマイナーチェンジでカムリと改名されたものだ。
4気筒2.2ℓとV6 2.5ℓで、この時からカムリは米国向けの国内販売車となる。

7代目カムリ(CV30、2001〜2006年)は4気筒専用車となり、このV6版は国内ではウィンダム、 米国ではレクサスESとして発売された。 ここで米国に於けるカムリとそのライバルの販売台数を比較して見よう。

車種名  (販売価格)     2004年販売台数  2003年   2002年   2001年
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カムリ  ($18,270 - 27,520)  427.0千台  413.3千台  434.1千台  390.4千台
アコード ($18,225 - 29,300)  414.8千台  399.0千台  397.1千台  386.8千台
トーラス ($20,830 - 22,980)  353.6千台  332.7千台  300.5千台  248.1千台
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シビック ($14,760 - 20,760)  309.2千台  300.0千台  313.2千台  331.8千台
フォーカス($13,450 - 17,495)  248.1千台  300.5千台  322.7千台  353.6千台
カローラ ($14,105 - 17,880)  237.8千台  257.7千台  254.4千台  254.0千台
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90年代には米国でのサルーン売り上げのトップはアコードで、その前にはフォードトーラスだった。
それにしても、一車種で年間400万台も売れるのだから米国での商売が如何に大切かが判るというのもだ。 だから、日本のカーメーカーも米国人が喜ぶように、米国人の嗜好を徹底的に研究していて、その結果が大きなボディのFFサルーンとなった訳だから、 日本国内では使い難いのは当然だ。カムリにしてもアコードにしても、現在は米国の現地工場で生産されている。日本車を海外で生産したら、それは外車?になってしまうから、 日本にはメリットが無いような事を言う人がいるが、そんな事は無い。日系メーカーの現地生産は、確かに実際の会社の運営は殆どが米国人だが、 これらのクルマの設計・開発は国内本社だし、もしも現地で設計しているとしても、オリジナルは日本製だから、日本の本社にはロイヤリティーが入る。 それに、現地工場の主だった生産設備などは、直系のエンジニアリング会社が日本で作って現地工場に売却するし、これまたタップリとノウハウ料をもらうので、 悪い言い方をすれば、米国での膨大な利益の一部を日本の本社が吸い取っているような状態になる。これはカーメーカーのみならず、部品メーカーも同様で、 日本の大手部品メーカーの中には、米国の子会社との連結決算で大いに利益を出しているものの、国内事業だけだと大した事は無い会社もある。

 


米国ではベストセラーのカムリだけあって、セダンのみならずクーペとカブリオレをラインナップしている。

写真左上:先代カムリセダン($18,445 - $25,805)
写真右上:クーペ版のSOLARA($19,530 - $30,210)
写真左下:オープンモデルのCONVERTIBLE

挑戦飛躍―トヨタ北米事業立ち上げの「現場」
トヨタの高収益を支える北米事業。いかにモノづくりの精神を根付かせたか。その立ち上げを追体験する。元トヨタ副社長がつづるノンフィクション。
 

 
   

今回発売された新型カムリ、V40は全て167ps、22.8kgmを発生する4気筒2.4ℓの2AZ-FEエンジンを搭載する。 グレードは3種類で、ベースグレードがG(247.8万円)、Gに対して主にアルミホイールと助手席電動シート(2WDはGでも運転席のみ電動)を標準装着されたG“リミテッドエディション”(264.6万円)、 そして最上級グレードが主にHDDナビゲーションと本革シートを装着したG“ディグニスエディション”(336万円)となる。Gとリミテッドエディションには4WDも設定されていて、それぞれ260.4万円と281.4万円。 なお、この新型カムリは北米ではハイブリッド車もラインナップしている。


細長いテールランプの形状はレクサスに類似している。

トランクは大柄なFFセダンということもあり十分な奥行きをもつが、幅方向は奥にいくとサスの張り出しで狭くなる。

外観は北米向けのトヨタ車のセオリー通りのデザインだし、 全幅1820mm×全長4815mmという堂々たるサイズで、寸法上ではクラウンよりも大きいことになる から、普通の建売住宅の駐車場やマンションの機械式駐車場ではシンドイかもしれない。
試乗車はGグレードで、一見アルミホイール風のホイールキャップからは黒いスチールホイールが覗くが、このクルマを買おうというユーザーからすれば、 「アルミホイール?何のために必要なんだ??」という具合に違いないから特に問題は無いだろう。


広さとしては十分のリアスペース。体格の良い米国人が4人乗って長距離をドライブできる寸法だから、短足の日本人には十分過ぎる。

シート表皮といい内装トリムといい、これぞトヨタらしさ満点の室内。これを豪華と思える人には幸せなクルマ生活を提供するが、欧州車的な内装を好む人には耐えられないセンスでもある。

ドアを開ければ、そこは典型的なトヨタ車の世界で、一見高級そうな毛足の短いコットンスエード風のシート表皮や、ヤタラに毛足が長いフカフカのカーペットなど、 何やら場末のキャバクラのような雰囲気は、ハッキリ言ってセンスの欠片もない。北米カムリの写真を見れば、こんなにジャパンオリジナルにはなっていないから、国内向けと言う事で確信犯的にコテコテのトヨタ内装にしたのだろうか?
シートに座った瞬間から柔らかいが腰を支持しない、如何にも密度の低い安物のウレタンが入っていそうな想像どおりの手抜き座面により体が全く安定しない。 しかも、どこをどう調整しても太ももは宙に浮き、尻の一部で体全体を支えるので腰への負担は大きく、オマケに浮いた足は支えが無いので、とに角疲れる。 更に腕とステアリングホイールの位置関係も、シートを位置を調整したり、ステアリングを上げたり下げたり、出したり引っ込めたりと、これまた色々と試みたが結局ベストな位置が探せなかった。 この国内向けカムリのシートは米国向けとは違うのだろうか?というより、こんな見掛けだけの出来の悪いシートで米国人からクレームが付かないのだろうか?と考えてみれば、北米で販売されているカムリの大多数は米国内で製造されている。 シートなんていうのは、欧米が本家だから、北米生産車のシートは現地調達(略して現調という)していると考えるのが普通だ。と成れば、国内向けのカムリは北米のベストセラーであるカムリの居住性とは別物なのだろうか?


如何にもトヨタ的なインテリア。明るい配色の“木目調パネル”は好みの分かれるところ。
北米カムリの内装写真を見ると、木目調パネルは使っていない。日本とアジア専用パーツか?
この写真はベースグレードのG。


こちらは上級モデルのディグニスエディションのインテリア。目に付く違いはステアリングホイールくらいだ。
ナビは標準装備だが、他のグレードでもメーカーオプション(約25万円)で同じものが付けられる。
 

ベースグレードでもステアリングスイッチは装備される。
左がオーディオで右がエアコン関係。

 

キーは最近流行の電子式で、車内にキーがあれば、ブレーキペダルを踏んでスタートボタンを押すとエンジンは始動する。 4気筒とは言ってもトヨタの中級車だから、アイドリングは静かだし振動も感じられない。ただし、V6系程には静かではなく、 ましてやV8のセルシオやマジェスタのように、回転計を見ないとエンジンが回っているのか判らない程ではない。カムリの2AZ-FEエンジンはエスティマなどのミニバンでも御馴染みで、 これは決して新しくも、高級でも、高性能でもない。
試乗車にはナビが装着されていたが、本来Gグレードにはオプションで価格は約25万円となる。


2.4ℓ、4気筒。エスティマなどのミニバンでも定番となった2AZ-FEエンジン。
167ps、22.8kgmのスペックの割には、乗ってみると結構遅い!

走り出した直後の極低速では、エンジンは静かだしスロットルを少し踏んだだけでも、クルマはグイっと前進するから、 これは中々と思うのだが、例によってトヨタ得意の非線形スロットル特性だから、速度が乗ればそれ程トルクフルという訳ではない。
信号待ちでの停止から、青になったのでフルスロットルを踏んでみると、1速では多少ウルサイしスムースでは無いものの、回転計の針はグングン上がって6000rpmで2速にシフトアップされた。 4000rpmから先は品の無いバルブ音などのメカニカルノイズが聞こえるが、意外にも6000rpmまで、それ程ストレス無く回る。2.4ℓという排気量は4気筒としては大きい方だから、スムースさを要求するのは酷だけれど、 今やエスティマなどのミニバンでも定番となった2AZ-FEエンジンは、熟成という意味では十分で、これこそトヨタの80点主義的優等生エンジンだ。
実際に市街地を走っていて気になるのは、エンジンのトルクよりもATの特性だ。スペックでは5速ATだから最新の6速には敵わないまでも、特に不足は無い筈だ。 ところが、都内の片側2車線の道路を40〜50km/hで流れに乗って左車線を走っていていて、左前方に停車中のトラックを発見。 右車線には少し後ろに1台のクルマが併走している場合、キックダウンして前に出ようと右足を踏み込んでも、ATはビクともせずに、エンジンは緩慢な加速を続ける。 前に出るのを諦めて減速して右に入ろうとするが、その後ろにも何台かのクルマがいるから、結局一旦停止する破目になる。この特性は以前V35スカイライン250GTでも体験したが、 250GTは旧式の4速ATだったからだろうと想像していたが、カムリは一応5速ATを備えている。これでも、何時も踏んでいれば、学習機能が記憶して少しはレスポンスが良くなるのだろうか?
カムリは車両重量1500kgに167psだから馬力当たりの重量は9.0kg/psとなり、これは1430kgに150psのBMW320iの9.5kg/psよりも有利な筈だけれど、実際に運転してみれば320iはカムリに比べて体感的な動力性能では遥かに上回っている。 この辺が仕様書だけを見て比較している国産オタクの悲しいところだが、この手の連中はクルマ関連の商用BBSには毎日のように出没している。


トヨタ得意のオプティトロンメーターは、一般的日米人から見れば豪華で先進的なのだろうか。

ディグニスエディションには標準で、その他のグレードではオプションで付く純正のHDDナビ。


最近ではチョット時代遅れになったゲート式のセレクター。このクルマでマニアルシフトはしないだろうから、これで十分とも言える。


ブルーの半透明パネルは点灯時に全体が光るが、その状態は結構安っぽい。

ステアリングの第一印象は非常に軽いことで、 勿論クリックではないし、最近の良く出来たFFのように、非常に癖が無くニュートラルな操舵性に感心するという、ゴルフVのように出来が良いわけでもない。それでいて、ただヒタスラ直進するというか曲がらないけれど真っ直ぐなら任しとけ、という事もない。 ステアリング自体の剛性感も良くないが、クルマとしての挙動も全体的にトロイ。そう言えば、今までデカいボディのFFでマトモに走ったクルマはなかったのを思い出す。 それでも、デカい上にリアに荷室を持つワゴンボディの北欧製(自称)高級輸入車やF1参戦イメージから、何も知らない素人がスポーツカーのような性能だと信じている 、低めのワゴン的ミニバンに比べれば、このカムリの方がマシではある。
このクルマでワインディングロードを攻めようなんてドライバーは皆無だろうが、本来のマーケットである北米の普通のユーザーには、 こんな特性が良いのだろうか?ナンだ、カンだ言ったって、カムリは北米セダン市場のナンバーワンなのだから・・・。
ブレーキに関しては、最近進化の著しい日本車の水準には達しているから、決して悪くはない。勿論、剛性感だの抜群の安定性だのは無いが、これもトヨタの80点主義の典型的な性能だ。
特に安定性や操舵性を求めた訳ではない、普通の市民(それも北米)の実用車となるカムリの乗り心地は、これまた結構良いが、感心するほどでもない。 扁平なタイヤが流行っている最近のクルマとしては、カムリの標準タイヤは60扁平だから、この点でも乗り心地には有利な筈だ。 良く整備された幹線道路を走る限りでは、中々の乗り心地を提供するが、少し厳しい段差になると、デカくて剛性感の乏しいボディの典型で、 行き成り不愉快な乗り心地となる。

もしも、このカムリのようなクルマしか知らないユーザーが、偶々レクサスGSに乗ったとしたら、そのクイックな操舵性とエンジンやATのレスポンスの良さに感動するだろう。同様にオデッセイのオーナーがレジェンド に乗っても感じることは同じで、国産の高級車って言うのはコンナに良いんだ!これはきっとベンツやビーエムより良いに違いない、と勘違いして、夜な夜な商用BBSに書き込むのだろうか?あの手のBBSでレクサスやレジェンドをけなすのはメルセデスやBMWオーナーが多いが、 国産車を擁護してベンツ・ビーエムがボッタクリだと騒ぐのは、レクサスやレジェンドのオーナーでは無いらしい。まあ、確かに現在の生活からすれば夢のまた夢でもある、憧れのレクサスやレジェントを貶されれば腹も立つだろう。


試乗したG(247.8万円)グレードは6.5J16スチールホイールと215/60R16タイヤを装着する。


リミテッドエディション(264.6万円)とディグニスエディション(336万円)には6.5J16ホイールと215/60R16タイヤという同サイズながら、アルミホイールを装着する。 

買い易い価格と大きなドンガラ。一見買い得のようだが、250万円と言えばマークXのベースグレードである2.5G  ”Fパッケージ”(245.7万円)が買える。 大味なフィーリングと安物感丸見えの内装のカムリに比べれば、マークXは遥かに欧州車的だし、エンジンだってワンランク上のV6だから、普通の日本人なら絶対にマークXを選ぶだろう。やはりカムリというクルマは、大味なユーザーがだだっ広い道を走るクルマだ。 それなら性格がアメリカンな人がいればお勧めかと言えば、走る道がジャパンオリジナルの狭い路地では、このクルマのメリットは殆ど見出せない。カムリの最上級車なら、336万円でHDDナビや本革シートが付いていると言ったって、 それだけ出せばマークXの3ℓが買えるし、クラウンロイヤルエクストラ2.5(337.1万円)も買える。レザーシートは付いてないが、サラリーマンの憧れ、いつかはクラウンの本物が買えてしまう。
そんな事を言うまでもなく、実際にカムリは売れていない。クルマの買い換えは300万円近い大金を投資するのだから、庶民にとっては人生のうちで、そう何度もないビッグイベントだ。 そんな重大な決断をするのに、大味でアメリカンなカムリを選ぶ事がないのは、販売実績を見ればわかる。実際に、このサイトの読者でカムリをターゲットに考えている人っているのだろうか?

聞いたところでは、カムリのお得意さんは不動産業者とか。広い後席にお客さんを乗せて、僻地のミニ開発一戸建て住宅に案内するには、安い車両価格と立派なボディで、 実に案配が良いらしい。どうです、社長!余った経費で1台買ってみたら?勿論、革のシートの奴ですよ。お客さんの案内だけでなく、 自慢のE55の代わりに税務署に乗って行けますよ。もっと早くに、そうしていれば、去年みたいにガッポリ修正申告させられることも無かったのにねぇ・・・・。