最近流行のインテリジェントキーを車内に置いてスタートボタンを押すと、正面の3連メーターの針が浮き出て
回転してから、全体が浮き出る儀式は既に以前の試乗で体験したのと変らない。
しかし、あの時は始動する度の子供騙しの儀式にはウンザリしたが、GS450hの場合はチョッと違う。ハイブリッド車はスタートボタンを押しても、エンジンが掛かる訳でも、回転計の針が跳ね上がる訳でもないので、
この儀式が結構サマになるから不思議だ。
正面の3連メーターの中央(速度計)と右(燃料計と水温計)は他のGSと共通しているが、左のパワーメーターがハイブリッドであることを主張している。
こうして見ると、昨年のGS発売時に感じたメーター類の変な先進性は、実は半年後に追加される予定のハイブリッドをメインにデザインされていたのではないかとさえ思ってしまうくらいに、
あれ程チグハグだったメーター類が、このGS450hではピタッと決まっている。
足踏み式のパーキングブレーキを踏んで解除し、ブレーキペダルに乗せた足を離すと、クルマは全く無音でクリープ現象のようにゆっくりと前進する。
このクルマはダッシュボード中央の液晶ディスプレイにハイブリッドシステムの作動状況を画で表示するエネルギーモニターモードというのがあるので、今回はそれを表示させて走る事にする。
そのモニターを見ていると、ブレーキペダルを踏んでいるときはモーターに駆動指令は出ていないが、ペダルを放した瞬間にモーター駆動状態となる。
これは、ブレーキペダルを放したことを感知して、極ゆるい前進をするようにモーターを制御することで、一般的なクリープ現象をシミュレートしているのだろう。
ここで、極僅かにスロットルを踏むと、クルマはそのままモーター駆動で10km/h程度の速度で駐車場構内を走行する。それにしても、全く無音の走行は結構不気味な物がある。
もう少しスロットルを踏み込むと、微かなエンジン音が聞こえる前にエネルギーモニターにエンジン駆動が加わったことが表示される。
駐車場から2車線の幹線道路に出て、クルマの流れに乗って走行する。今度は正面左のパワーメーターに目を移してみると、流れに乗った定速走行中では、メーターの針はグリーンのECOという範囲を示している。
これは、余ったエンジンパワーで充電している事を示している。前方の信号が赤になったので徐々に減速すると、モニターの針は下側のブルーの範囲、すなわちCHARGEを示して、
減速によるエネルギー回生が行われている事を示している。このGSの場合は、ハリアーのように回生制動時のヒューンという地下鉄のような音が派手に聞こえるという事がない。
信号が青に変ると同時に、今度はフルスロットルを踏んでみる。ハリアーハイブリッドでも経験しているが、電気モーターによる低速からの加速は独特のトルク感と
共にグイグイと速度を上げ始める。
この時のパワーメーターは白い領域を指してバッテリーからモーターに電力を供給中である事を示している。スタートしてから一瞬後にはV6エンジンのビートも聞こえてくる。
このエンジン音は決して大きくは無いが、今までが殆ど無音だったので、始めてエンジンらしき音を耳にすることとり、この加速こそがハイブリッドの真の魅力といえる。
試乗コースには国道と県道が地上で立体交差するために、県道側が急な上り坂となっているところがある。普通はこのような坂では、どんなにトルクがあるクルマでも平地に比べるとガックリと加速が落ちるもの
だが、GS450hは流石に停止状態で最大のトルクを発生する電気モーターの特徴から、この急坂でもガソリンエンジンでは有り得ないトルク感でグイグイと加速する。
本来、ハイブリッドと言うのは燃費の良さが最大の売りだと思っていたらば、そういう貧乏っぽい期待はプリウスあたりに任せておいて、最近は大型SUVや豪華ミニバン、そしてこのGSなど、豪快な加速を求めるユーザー向けで、
エコは一体如何したんだ何て言いたくもなるが、大体、総額で800万円のGS450hをポンと買える経済状態ならば、リッター当たり数キロの燃費向上や、一月当たり1〜2万円程度のガソリン代の節約なんて如何でも良い事というのが本音だろう。 |
基本的にはガソリン車と変らないデザインだが、左側は回転計ではなく、パワーメーターとなる。速度計のフルスケール180km/hはシラケル。スイフトスポーツでも220km/hフルスケールなのに?
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デザインは全く変らないが、ディスプレイにハイブリッドシステムの状況をモニタするエネルギーモニターモードがある。
セレクターも全く同じ。無段変速のハイブリッドではあるが、マニアルモードでシーケンシャルシフトをシミュレートする。
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パワーメータはグリーンのECOで充電中、白いPOWERがモーター駆動使用中、そして青いCHARGEが回生制動による充電(エネルギー回収)中であることを示す。
それにしても、このメーターデザインはハイブリッドにはピッタリで、ガソリン車の回転計は開発手順としては後から追っ付けたような気がする。 |
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エネルギーモニターモードの画面表示。 |
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抜群の加速力はハイブリッドの魅力だが良い事ばかりではない。走っていて直ぐに気が付くのがステアリングの緩慢さで、贔屓目に言えばスポーティな味付けのGSとは思えない程にトロい。
車両重量1890kgとGS350の1640kgより250kgも重く、GS430の1700kgと比べても190kgも重い事と、
200psモーターやエンジンとモーターの動力を分配する無段変速機などの重量物の大部分をフロントに置くことから想定される重量バランスを考えれば、ある程度は納得できる特性でもある。
ハリヤーのように元々がデカイ図体と重い重量のSUVなら、それ程に違いが目立たないが、スポーツセダンを謳うGSではチョット辛い。
こんな状況だから、ワインディン路でハンドリングを試す気にはとれもなれないが、街中でのチョットしたコーナーでもアンダーを感じるのは言うまでもない。
実は以前、クラウン・マイルドハイブリッドに乗った際に、3ℓエンジンとは思えない程に情けない動力性能と、フワフワ&ヨレヨレの操舵性能に唖然として、
当時のクラウン(先代のJZS170)の味付けだからコンナ物なのかと思っていたが、もしかするとハイブリッド化のデメリットもあったのかも知れない。
GS450hには路面の凹凸に応じて電子制御する減衰力制御サスペンションのAVSが標準装備されている。走行中にスポーツとノーマルのモードを切り替えたみたが、スポーツだとチョット硬めだけど決して乗り心地は悪くない、このクラスの欧州車のような乗り心地だった。
ノーマルでは少しフワつく傾向はあるが、乗り心地自体はかなり良い。言ってみれば重量級の欧州車、例えばBMW7シリーズのような乗り心地で、ハイブリッド化による重量増加は、トロい操舵性能と引き換えに重量感ある乗り味を提供したようだ。AVSの外にもコーナーリング時のロールを押さえる電子制御スタビライザーや、ギヤ比可変ステアリングのVGRS、アクティブステアリング統合制御のVDIMなど、走りを極める為の最新電子制御技術がこれでもか、
と投入されているが、何しろ250kgの錘の大部分がフロントに載る事実は如何ともし難い。
GS450hのブレーキシステムはGS350/430やIS350、それにクラウンアスリート3.5にも装着されている物と基本的には同じ、フロントに対向4ピストンキャリパーを装着する電子制御、いわゆるブレーキバイワイヤーシステムを装着している。
ハイブリッド車のブレーキは電気式の回生ブレーキと摩擦式の油圧ブレーキ(要するに普通のブレーキ)を複雑に制御する必要があるため、フルエレキのシステムは寧ろ必須となる。と、いう事は、トヨタが此れ
程までにブレーキバイワイヤーの開発に力を注いだのは、ハイブリッド(とその先の電気自動車)の開発を視野に入れていたからだろう。
このブレーキシステムを装着したクルマは前述の4種類全てに試乗しているが、何故かフィーリングにバラつきがあった。
今回のGS450hは、その中では最もフィーリングの良かったGS350と殆ど同等だった。すなわち、ストロークは極めて短く踏力に比例した制動力が得られ、これに匹敵するフィーリングはポルシェ、それもベースグレードよりも強力なブレーキシステムを備えるカレラSくらいだろう。
最も、このフィーリングは言い換えれば板を踏んでいるような感覚だから、普通のドライバーからすると、違和感があるかもしれない。この辺は、如何にでも味付けが出来るだろうから、
市場の要望を聞きながら今後変化していく事は考えられる。
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フロント&リアともに8J×18ホイールと245/40R18タイヤを装着する。
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GS430とサイズは等しいが、ハイブリッド専用デザインのホイールと標準でランフラットタイヤが装着される。 |
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トヨタが世界に誇る先進技術は何かと言えば、誰でもがハイブリッドと答えるだろう。その伝家の宝刀を折角
のレクサス開業に何故使わないのかと疑問に思っていたが、今回GS450hに乗って気が付いたのは、ハイブリッドというのは大きく重いクルマに向いていて、
その意味ではSUVのハリアーにはピッタリだったのだが、これをセダンであるGSに適用するには、大幅なシステムの変更と新開発技術が必要とされたようだ。
要するに必死で開発しても今までかかってしまった訳だ。それで、結果は如何かと言えば、大幅な重量増加と前後重量のアンバランス。その結果、電子制御技術のオンパレードを持ってしても、緩慢な操舵性は消す事ができなかったために、強力な加速性能が益々アンバランスに感じられるクルマになってしまった。
だが、ここでハタと考えた。レクサスGSと言ったって、元を正せばトヨタアリストだから、その本質は直線番長。ユーザーはクラウンじゃチョットつまらないと思っている不良中年だし、
元々コーナリング云々なんて如何でもよく、豪快な加速のみを求める、いわゆる直線番長の線だから、GS450hこそ本来の姿とも言えるのかも知れない。
GS450hのベースグレードが680万円、豪華装備のバージョンLが770万円という価格はメルセデスE280の682.5万円、BMW
525i/530i
の夫々620/722万円と同価格帯となる。確かに先進性を買うならば、この価格でもGS450hを買うユーザーはいるかもしれない。いや、先進性なんかクソ食らえ、加速命で買うユーザが本命か。「ベンツのE280だっえぇ?あんな遅せぇクルマに700万も出せるかバカヤロ、ダダでもイラねえゃ!」みたいな輩が買うのだろうか?
ハイブリッドの持つ、環境にやさしい、”エコ”のイメージを考えれば、官公庁向けの用途も考えられるが、その場合はGSのリアスペースの狭さやスポーティ
ーイメージ、それにレクサスブラントの持つ富裕層向けの贅沢ブランドというイメージが官公庁としては世間に対して説明が付かないから採用は難しいだろう。それなら、クラウンにこのシステムを載せたらとは誰しも考えるが、そこはトヨタの事だから、既に着々と発売準備を進めているかもしれない。となれば、600万円以下の可能性もでてくる。クラウン
ロイヤルサルーン4.5hとでもいうのだろうか?
今回GSハイブリッドに試乗して一番に感じたことは、ハリアーハイブリッドの出来の良さとコストパフォーマンスの高さだった。今現在でハイブリッド独特の加速性能を手に入れたければ、間違いなくこちらがお勧めだ。
何しろ4WDとしてモーターを前後に分けた事や、ボディ形状からくる搭載性の有利さから操舵性だって悪くないし、何より400万円代前半という価格が最大の魅力だ。
今年後半に出るLSは、当然ハイブリッドをラインナップしてくるだろう。元々クラウンやマークXのプラットフォーム上にレクサス車をデッチ上げたGSと違い、設計段階からハイブリッド化も十分に考慮されている
だろうから
、相当に期待出来る。そう考えると、残念ながらGSハイブリッドはワンポイントリリーフ、いや中継ぎというところか。年末のLSを今から楽しみにしよう。
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