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Mitsubishi Eclips Closs (2018/3) 前編 その1

  

度重なる不祥事により遂に三菱グループからも見放され、ルノー・日産グループの傘下となった三菱自動車 (以下三菱) から久々のブランニューモデルで、しかも三菱独自の新型車としては恐らく最後であろうと思われるエクリプスクロスが発売された。

このエクリプスクロスは売れ筋のCセグメント小型 SUV で、国産車では マツダ CX-5 やトヨタ C-HR などと競合する大激戦区での勝負となる。そこで最初に三菱の SUV というか、そのまたルーツのオフロード 4WD 車について軽く振り返ってみる。

ご存じと思うが三菱の 4WD 車のルーツは戦後警察予備隊 (後の自衛隊) 向けの小型車の入札に米国ウィリス車と提携してジープのノックダウン車で参加し、これが採用されたのが始まりで、その後国産ジープは民間用にも販売されて各種公官庁や建設・電力業界でも使用されていた (写真1) 。そのジープのバリエーションにホイールベースを伸ばして4ドアとして、バンというかワゴンというか、これこそ SUV の先祖とも言えるモデルがジープ 30系で、特徴的なあずき色 (ダークグリーンもあった筈) とアイボリーのツートンのクルマ (写真2) は今でもマニアが大切に所有していて偶に街中で見る事もある。

この 30系 の発展型とも言えるのがパジェロで、特にバブル期後半に発売された2代目は大いなるヒットとなり、その中でもボディサイドに太いストライプの入った上級モデルは当時 300万円を軽く超える高価格にも関わらず街中でも頻繁に見かけたものだった。因みにこの上級車の事を当時は口の悪いマニアから "金屏風" などと呼ばれていた (写真3) 。

その三菱が1991年、当時のブームにあやかってシャリオのシャーシーをショート化してオフロードテイストのボディを載せたのが RVR であり、ナンチャッてオフローダ−というかライトクロカンというか、これはある意味現在の SUV のルーツとも言えるものだ (写真4) 。


写真1
米ウィリス社と提携して製造し自衛隊の正式装備となった三菱ジープは民間向けにも販売されていた。写真はCJ3B (1957) 。


写真2
ロングホイールベースでこれぞ 4WD ワゴンのルーツである 30系。


写真3
バブル期には300万円超の価格にも関わらず良く売れたパジェロ。その中で一番人気は通称 "金屏風” と呼ばれたスーパーエクシードだった。


写真4
パジェロ全盛期に発売されたシャリオベースのナンチャってオフローダーである RVR はライトクロカンのルーツだった。

まあこの辺の話は機会があれは別途詳細を纏めるとして、今回は現行三菱の SUV およびオフロード系について一覧表としてみた。これを見ればエクリプスクロスは RVR より1サイズ上でアウトランダーより下というポジションと判るが、サイズ的にはホイールベースが RVR の2,670o に対して エクリプスクロスは‥‥んっ、 同じ? あっ、いや、これがアウトランダーとなれば 2,670o で、ありゃ、これも同じだ。いや、ホイールベースは同じでもトレッドが RVR では前/後が 1,525/1,530o だが、エクリプスクロスでは 1,545/1,545o と少し広く、アウトランダーだと‥‥おっと、これは事実上エクリプスクロスと同じで、要するに三菱には事実上1種類のプラットフォームしか無いという事だろうか?

今回の試乗車はエクリプスクロス G 4WD で価格は 292.3 万円だが、このグレードはオーディオレスの為に実際にはナビなどの予算を必要とする。また同グレードでも 2WDならば 270.6万円となる。なお エクリプスクロス については何時ものように既に日記で内外装写真を掲載しているので、そちらも合せて参照願いたい。
⇒ Mitsubishi Eclipse Cross (2018年3月27日からの日記)

と言う事からこの試乗記前編では何時ものように見方を変える為に、今回はライバル比較をする事にした。そしてその相手はといえば、やっぱりマツダ CX-5 だろう。と思っては見たが、販売台数から言えばダントツでトヨタ C-HR であり、さーてどちらを選ぶか。え〜い面倒くせえ!両方ともやっちまえ、という訳で今回は3車種の比較をやってみた。えっ、販売台数からすれば昨年度 26位の CX-5 よりも15位のホンダ ヴェゼルだろう、って? いや、まあ、それはそうなんですが、発売時期が2013年という事は既に5年が経過していて、その面では話題性に欠ける、という事で (汗 ‥‥。あっ、勿論ホンダ車が嫌いだとか、ホンダディーラーはセースルマンに馬鹿が多くて足が遠のくだとか、そんな事は無いので念の為。

それではこれまた何時ものように最初は斜め前方から比較すると、当然ながら3車3様ではあるが、一目でメーカーが判るのは CX-5 であり、最近のマツダのアイデンティティの確立は立派なものだ。 C-HR はトヨタの最近の顔で、これはカローラなどと同じものだから、これまたトヨタ車と判ると言えば判る。そして主役のエクリプスクロスはといえば、まあ一見した処では何処のクルマか判らない。

そして後方のスタイルはと言えば、どれも SUV だから共通点は多い筈だが、今回の3車種は結構個性的だ。特に C-HR は中々の個性を発揮している。


写真5
一目でマツダと判るCX-5、カローラの雰囲気もあるトヨタ顔の C-HR 、メーカー不詳みたいなエクリプスクロス。


写真6
リアはそれぞれ特徴的で、とくに C-HR のエグいデザインが目立つ。

フロントビューを比べると前述の比較ではアイデンティティーが全く感じられなかったエクリプスクロスだが、こうしてみるとスリーダイヤのマークが三菱車であることを主張している。でも、まあそれだけだが。CX-5とC-HR は既述のようにマツダとトヨタであることはフロント全体のデザインで判る。

リアビューは小さなテールライト以外は比較的オーソドックスな CX-5 に比べ、エクリプスクロスはリアウィンドウを横切るテールランプというかハイマウントストップランプというか、これが結構個性的だ。そして C-HR は大きく膨らんだフェンダーや極端に絞ったキャビンなど、チョイとデザイン先行な面もあるが個性は一番あるし、一目で CH-R と判る。

なおサイズは幅 x 高さで比べると、エクリプスクロス 1,805 x 1,685o、CX-5 1,840 x 1,690o、C-HR 1,795 x 1,565o で CX-5 の幅の広さと、C-HR の低さが目に付く。


写真7
スリーダイヤのマークが三菱車であることを主張しているエクリプスクロス。他の2車はグリルにアイデンティティがある


写真8
リアではC-HR の極端なブリスターフェンダーとグラスエリアの絞り込みが目立つ。

サイドビューではこれまたオーソドックスな CX-5に対してエクリプスクロスは後部 (Cピラー以降) が独特の鋭角的なラインである事が特徴で、C-HR では更にクーペ的なルーフラインが目に付く。元々全高の低い C-HR のルーフラインはBピラー以前から既に下降している。全長とホイールベースでは CX-5 が一番長く C-HR は最も短く全高も低いから結果的に少し小さい。

写真9
全長 x 全高 / ホイールベースは
Eclips Closs: 4,405 x 1,685 / 2,670o
CX-5: 4,545 x 1,690 / 2,700o
C-HR: 4,360 x 1,565 / 2,640o
スタイルは C-HR が一番個性的だ。

この続きはその2にて‥‥。

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