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Porsche Macan (2017/5) 前編 その1

  

ポルシェといえばスポーツカーメーカーの代名詞であり、販売しているクルマは 911 というのは半世紀前から変わらないが、それ以外にも廉価版やら 911 との代替を目論んだ車種 (928) など何度かチャレンジしたが 911 を超えるヒット作は出なかった。結局 911 と前半分を共有化してミッドシップにエンジンを搭載した2シータースポーツを 911 の半値近くという大バーゲン価格で大成功したボクスタ−により、ポルシェの生産台数は飛躍的に向上して経営状況からも回復出来たが、ここまでの製品は半世紀に渡って全てがスポーツカーだった。

このようにスポーツカー以外の車種を販売した事のないポルシェが初めて手がけた4ドア・フロントエンジン車はサルーンを飛び越えて一気に SUV まで行ってしまったのには世間もアッと驚いた訳だが、SUV とは、すなわちスポーツ・ユーティリティ・ビークルだから、サルーンよりもスポーツイメージが強く、しかもスポーツカーの対極に位置するという点でも、この決定は正解だったかもしれない。

そのポルシェ初の SUV がカイエンで、初代 955 は 2002年に発売された。グレード構成は発売時点ではカイエンS V8 4.5L と S用のV8 エンジンをターボで過給したカイエン ターボという如何にもポルシェらしいラインナップで価格 (税別) は其々 860万円および 1,250万円だったが、その1年後にはベースグレードの V6 3.2L のカイエンが発売され、価格は 599万円とポルシェブランドとしては割安だった。その初代カイエンは4年後の2006年に大規模なマイナーチェンジを行い 957へと進化した。

そして2代目カイエンは 2010年発売の 958 で、初代同様に4年後には後期モデルとなったが、初代のような開発コードが新しくなるような大規模なものではなかった。そしてこの 958 後期モデルが現行モデルとなっている。

なおカイエンに関する試乗記は
  ⇒ PORSCHE Cayenne S (957) 試乗記 (2007/6)
  ⇒ Porsche Cayenne Turbo 試乗記 (2011/1)
  ⇒ Porsche Cayenne S E-Hybrid 試乗記 (2015/5)
があるので、参考にされたい。


写真1
初代後期モデル (957 2006-2010)


写真2
2代目前期モデル (958 2010-2014)

初代カイエンが発売された 2003年当時は 599/659万円 (MT/AT) という比較的買いやすい価格だったカイエンも2代目が発売された2010年ではベースグレードでも 748/795万円 (MT/AT) と初代よりも 150万円も値上がりしているから、これではチョッと手が出ないユーザーも多かっただろう。

このように高級化してしまったカイエンよりも下位になるエントリーモデルとしてマカンが発売されたのが 2014年末だった。このマカンは2010年にその存在を発表された時には Cayjun と呼ばれていたが、これは Cayman Junior の略と言われていた。このマカンについては本来なら早急に試乗記を発表したかったが、何しろ凄い人気というか引き合いで試乗車が確保できず、結局少し落ち着いた半年後に試乗したが、それも本命のベースグレードではなく最上位のターボだった。これについては下記にて。   ⇒ PORSCHE MACAN TURBO 試乗記 (2015/5)

ところで下表を眺めてマカンとカイエンのエントリーグレード同士を比較すると、その価格差はピッタリと 200万円という胡散臭い価格設定だが、兎に角その差額で息子の私立理系大学の入学金と最初の一年分の払込金くらいは出るだろう。なにっ、残る3年分はどうする、って? いや、そのう‥‥。あっ、最近の理科系は修士課程まで進むのが常識らしいから、残る3年ではなくて5年であり、ということはマカンの予算は全て学費に回す事になり‥‥ぎゃー、何てぇこった。

実は今回のマカンも何時ものように既に日記でよりサイズの大きい写真を紹介している。
⇒ BMW New 5 Series (2017年3月27日からの日記)

そこで試乗記では上位セグメントのカイエンとの比較を行う事にする。今回試乗しているクルマのグレードはマカンが ”S” でも無いし ”Turbo” でもない素のマカンで、正直言ってやっと遭遇できたという気持ちだ。対するカイエンはこれも ”素のカイエン” (885万円) としたかったが、そうもいかず、カイエン S E-Hybrid という中間のモデル (1,199万円) となってしまった。

先ずは斜め前方からというお馴染みの構図から比べると、あれっ? 何だか妙に似てねぇか‥‥という感じだが、サイズはカイエンが一回り大きいので迫力という面では一歩勝っている。とはいえマカンだって少しクルマに詳しければポルシェの SUV だっ! と判断できる筈だが、ポルシェのアイデンティティはクルマ好きには絶大だが一般ピープル、すなわちパンピーにはメルセデスや BMW 程には浸透していない。では同じく斜め後方から比べてみると、これまたよく似ている。それでは更に比較するために真正面から比較してみる。


写真3
この角度から見ると両車は思っていた以上に似ている。


写真4
フロント程では無いにせよ、やはり似ている。ただし写真とは違い現車では大きさの違いで何となく判別できる。

先ずはフロントからだが、いやまあチョイと見たらソックリだが、それでも敢えて違いを探すとアンダーグリルの形状がマカンは下が広い台形でカイエンは下が狭い逆台形という程度だった。サイズとしてはマカンが全幅1,925 x 全高1,625o 、カイエンは全幅1,940 x 全高1,710o と幅は15o しか違わないが全高についてはカイエンは 85o も高く、これが見た目の印象を大きく変えている。

今度はリアを比べると、先ずはフロント以上に全高の違いが目に付く事とマカンはナンバープレートがバンパー位置にあることからリアゲートがスッキリしていて、この2つが軽快なイメージへと繋がっている。対するカイエンはウエストラインから上のグラスエリアの大きさ、すなわち全高の高さがマッチョ感を増強している。実際に実車を見た時の威圧感は圧倒的にカイエンの方が上だ。

次にサイドビューではマカンの全長 4,680o に対してカイエンは 4,855o と175o も長く、ホイールベースは其々 2,805 および 2,895o だからこれもカイエンは 90o 長い。加えて全高の高さと更にDピラーの角度がマカンはクーペ的に寝ているがカイエンは比較的立っているなどもあり、カイエンは明らかに一回り以上大きく見える。


写真5
この角度から比べるとマルでソックリ、強いて言えばアンダーグリルの台形の向きが違うくらいか。


写真6
リアの場合は全高の違いが出やすいので判別し易い。またナンバープレートの位置違いによるバックドアの雰囲気も結構相違点となっている。

写真7 サイドビューを同じ縮尺で比べるとカイエンはワンサイズ以上大きいのが判る。それにマカンはDピラーがクーペ的なラインとなっている。

トランクリッドを開けてラゲージスペースを比べると、当然ながら全長の長いカイエンの方が広いスペースを持っている。更にマカンはリアゲート自体もウエストラインから上がクーペのようなラインを描いているから上下方向に狭く、しかもトノカバーがゲートと一体になっている写真のような情況ではまるでセダンのトランクルームのようだ。勿論トノカバーを外せば良いのだが、カイエンと違って構造上もバックドアと一体にして使うことを考えている感がある。

マカンのヘッドライトは標準では今時珍しいハロゲンで、オプションでバイキセノン (28.3万円) や LED (48.4万円) が選べる点では多くのユーザーがオプションを選ぶだろうが、そんなものは必要の無いユーザーの為には目一杯ベーシックな標準装備にするのはポルシェ流だ。ただしマカンSではバイキセノンが標準で LED は 20.1万円だから、Sとの価格差にはこれらが含まれている事になる。

因みにカイエンではベースグレードの場合はやはりバイキセノン (16.3万円) や LED (50.4万円) で、これがカイエンSでは、ややっ、ベースグレードと同じだった!


写真8
ラゲージスペースは当然ながら全長の長いカイエンの方が広い。

写真9
ヘッドライトは双方ともベースモデルではハロゲンでバイキセノンも LED もオプションとなるのはポルシェらしい。

 

さて、次のインテリアについてはその2にて。

⇒その2へ