VOLVO S60 DRIVe & T6 SE (2011/4) 後編


ボルボといえば昔から”安全”という事になっているが、過去10年間に渡るフォードの支配でボルボは骨までしゃぶられてしまい、安全の分野でも他社より特に優れているとはいえない状況まで落ちぶれてしまった。しかし、ここ2〜3年はフォード自身の経営不振から 、傘下にあった高級車グループであるPAG(Premiam Automobile Group:ジャガー(ランドローバー、デイムラー含む)、アストンマーチン、ボルボ)の売却を決定し、ジャガーはインドのタタモーモータースに、アストンマーチンはクウェートの投資会社に、そしてボルボは最後まで売れ先が無かったが、昨年秋に中国の吉利汽車集団の傘下に入った。従ってボルボが実際にフォードから離れたのは最近だが、それ以前からフォードの影響力は薄れていたと思われ、ここ最近のボルボは安全装備でも一躍世界の先端に復帰する傾向があった。

そこで、以下にS60の安全装備について説明してみる。なお、解説中の図はボルボ社のカタログから転載したものだ。

★シティー・セーフティ(低速用追突回避・軽減オートブレーキシステム)
全車に標準装着されているもので、4〜30km/hで6m以内にいる前方車両の状態を監視して、追突の危険性を感知するとブレーキが準備態勢に入る。さらにドライバーがブレーキを踏まないと自動的にブレーキをかけることで、15km/h未満では追突を回避し、15〜30km/hではダメージを軽減する。このシステムはXC60に標準装備されていて、XC60試乗記で詳しく説明しているので、詳細はそちらを参照願いたい。

 


写真26
グリルに仕込まれたレーダーセンサーは前方150mまでの範囲で前車との距離をモニターする。
 

 

 


写真27
オプションのセーフティーパッケージ(25万円)用のセンサー(デュアルモードレーダー)およびカメラ。

 


写真28
死角への他車進入を警告するBLIS(ブラインドインフォメーションシステム)のセンサー(黒←)とウォーニング(黄色↓)。
 

 


写真29
前方視界も悪くないから、1,845mmという広い全幅の割には運転し易い。
 

 

★セーフティ・パッケージ
このパッケージは最上級グレードのR−DESIGNには標準装備、その他のグレードではオプション(25万円)となり、以下の安全機能が含まれている。

@ 全車速追従機能付ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)
30km/hまでの市街地の走行では前車に自動的に追従し、30km/h以上では希望の走行速度と前車との最低時間差を入力することで、進行に支障が無いときには希望速度で、レーダーが前方に車両を感知すると前車の走行速度に自動的に合わせる、というシステムだが、今回は試す時間も環境も無かった。
なお、このタイプのクルーズコントロールはBMWでも採用していて、先代530i xDrive(4WD)ツーリングの試乗記で実際に高速道路で使用した状況を紹介している。


A 車間警告機能
ACCが作動していない状態で前車との車間距離が接近すると車間警報機能が作動し、フロントガラスの低い位置に警告灯が点滅する。
T6の試乗中のことだった。2車線の決して広くは無い市道で前方には地元農家の車と見られる軽トラックが35km/hくらいで車線いっぱいに右に行ったり、左に行ったりとヨロヨロ走っていた。これゃあヤバイクルマの後に付いちまったなぁ、と思いながら車間距離を多めに取って付いていった。すると、突然フロントガラスの下端辺りが赤く点滅した。咄嗟に何のことだか判らなかったが、その直後に前方の軽が減速したと思ったらウィンカーも出さずに右折を始めた。おっと、危ない。即座に減速したが、何と軽は無理な右折で反対車線のクルマと衝突しそうになり、軽も対向車も急ブレーキ状態だった。こちらは軽の動作がヤバそうだったから警戒状態だったので間に合ったが、そこで考えてみると、あの赤い警告は車間警告機能が働いた事のようだった。もしも、ブレーキが遅れたら、恐らくBの機能が働いてブルブレーキが自動的に掛かったのかもしれない。

B 歩行者検知機能付追突回避・軽減フルオートブレーキシステム
前方150mの範囲内でフロントグリルに設置されたレーダーセンサーとルームミラー前方に搭載されたデジタルカメラが前方走行車両との車間距離や歩行者の動きを常にモニターし、危険を感知すると警報音を発しフロントガラスに赤い警告灯が点滅し、それでも減速しないとブレーキの油圧をプレチャージし、更には事故が避けられないと判断したら瞬時にフルブレーキを作動させる。
そこで、今回は実際に公道でクルマを歩行者の傍に寄せて反応を試してみた・・・・・・という訳にはいかないので、歩行者に対する作動は確認できなかった。


C ドライバー・アラート・コントロール
65km/h以上で走行路面に合わせたステアリングホイールの動きから得たデーターをデジタルカメラの信号を使用して通常のドライビングスタイルから逸脱したした操作を感知すると、インジケーターが注意喚起を促し、眠けや注意力散漫を感知すると警告音を発することで、ドライバーの注意力散漫による事故を未然に防ぐ。




D レーン・デパーチャー・ウォーニング
デジタルカメラが車線を記録し、路上のクルマの 位置を監視する。65km/h以上で車線を超えた場合に警告音を発する。なお、ウインカーを出した場合は通常の車線変更と判断して警告音は発しない。
  

E BLIS(ブラインドスポット・インフォメーション・システム)
ドアミラーに後ろ向きに装着されたカメラで車両の両側面を監視し、死角に車両が入った時にランプでドライバーに警告し、安全な車線変更をサポートする。実際に片側2車線の国道の左車線を走行してみたところ、写真28のように、 右の死角にトラックが入ってきた時にミラーの付け根にあるランプがオレンジ色に点滅した。

最近はスバルなども同じような自動追従装置を提供しているが、ボルボの場合は一歩すすめてデジタルカメラの画像解析の多用により歩行者を認識したりという具合に、時代の最先端を 行っている。極最近のボルボは、ボルボ=安全というキーワードを維持するために、結構頑張っていることは間違いない。
 

新型のS60は、最新のボルボらしく少し前までのフォード時代の悪夢から、徐々に抜け出しつつあるのが判る。
そして3.0TのT6だが、前編でも述べたように同じエンジンのXC60は609万円で、V70に至っては699万円もすることを考えれば、ボルボの3.0ターボであるT6としてはS60の519万円という価格は買い得には違いない。他のライバルを見ても、Dセグセダンで300ps超えならばBMW335iの686万円と T6では150万円も差がある。レクサスのIS350なら496万円と同等価格にはなるが、NAのレクサスは最大トルクが38.7kg・mでT6の44.9kg・m は2割近くも強力だ。なお、メルセデスCクラスとアウディA4には300ps級のモデルはなく、AMGやSなどとなってしまうことからも、T6の 買い得感が光っている。

1.6Tの場合は、出来としては中々良いが、如何せんナビつきで400万円という価格は、ライバルでごった返すDセグプレミアムというカテゴリーだから、そう簡単にはいかないだろう。そこで、これに関して特別編で詳細に比較をしてみる。

ここから先は例によってオマケだから、言いたい放題が 気き入らない人達は、読まないことをお勧めいたします。今回はボルボS60に対して、 ドイツプレミアム御三家のベンツ・ビーエム・アウディ、それにレクサスを含めたDセグメントセダンを比較してみる。  

特別企画【400万円のブランドサルーン選び】に進む

Topページに戻る