VOLVO S60 特別編
400万円ブランドサルーン選び

特別編へようこそ。何時ものように、このコーナーは言いたい放題の毒舌が好みの読者以外はお勧めいたしません。

今回は400万円のブランドサルーン選びということで、プレミアムブランドといわれているドイツ御三家と、それに対抗する日本のレクサスのラインナップから、S60と同様にDセグメントセダンを比較してみる。ボルボはベンツやビーエムよりも 格下だろう、と言いたい読者も多いだろうが、まあ、ここは抑えて、抑えて。

    @Volvo ABMW BMercedes
Benz
CAudi CLexus
      S60 DRIVe 320i C200 CGI
BlueEFFICIENCY
 
LITE
A4 2.0TFSI HS250
 

車両型式

  CBA-FB8416T LBA-PG20 DBA-204049 DBA-8KCDH DAA-ANF10

寸法重量乗車定員

全長(m)

4.630 4.540 4.585 4.705 4.700

全幅(m)

1.845 1.800 1.770 1.825 1.785

全高(m)

1.485 1.425 1.445 1.440 1.505

ホイールベース(m)

2.775 2.760 2.760 2.810 2.700

駆動方式

FF FR FR FF FF
 

最小回転半径(m)

  5.5 5.3 5.1 5.5 5.6

車両重量(kg)

  1,540 1,500 1,500 1,540 1,640

乗車定員(

  5

エンジン・トランスミッション

エンジン型式

  B4164T N43B20A 271 CDH 2AZ-FXE

エンジン種類

  I4 DOHC Turbo I4 DOHC I4 DOHC Turbo I4 DOHC
(Elc.Morter)

総排気量(cm3)

1,595 1,995 1,798 1,984 2,362
 

最高出力(ps/rpm)

180/5,700 170/6,700 184/5,250 180/4,000
-6,000
150/6,500

最大トルク(kgm/rpm)

24.5/1,600
-5,000
21.4/4,250 27.5/4,600 32.6/1,500
-3,900
19.1/4,400
(27.5)

トランスミッション

  6DCT 6AT 5AT CVT
 

 燃料消費率(km/L)
(10・15/JC08モード走行)

12.6/11.4 15.2/14.2 11.8/NA 12.6/NA -
 

パワーウェイトレシオ(kg/ps)

8.6 8.8 8.1 8.6 -

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ストラット 3リンク 5リンク ストラット

マルチリンク リンク マルチリンク トラベゾイダル ダブルウィシュボーン

ブレーキ方式

前/後 ディスク/ディスク Vディスク/Vディスク Vディスク/ディスク
 

タイヤ寸法

  235/45R17 205/55R16 205/55R16 225/55R17 215/55R17

価格

車両価格

400.0万円 445.0万円 399.0万円 440.0万円 395.0万円

備考

HDD NAVI付価格
ベースは375万円

       

まずは全体を眺めてみる。日本の道路は基本的に狭く、極最近に作られ以外の道路は5ナンバーサイズを基準としていたから、アウターサイズ、取り分け全幅は1,700mm以下が圧倒的に走りやすい。そういう目で全幅に注目すると、先ずはC200の1,770mmというのが目に入る。レクサスHS250hもC200より15mm広い1,785mmで、この僅か15mmの差が、運転してみると意外にも乗り易さに差が出たりする。まあ1,770mmだって日本の道では広すぎる事は間違いないのだが・・・。そして3シリーズの1,800mmやA4の1825mm、更にS60に至っては1,845mmという事になり、これはどう考えてもDセグメントとしては広すぎる。
Cクラスのメリットは幅が狭いだけでなく、小回りが効くというメルセデスの伝統に沿って、スペック上とはいえ最小回転半径が5.1mと他社に比べて明らかに小さい。実際に運転してみても、Cクラスの取り回しの良さはクラスナンバーワンだし、ワンクラス上のEクラスでも、ライバルに比べると圧倒的な回転半径の小ささで、狭い道でも意外と苦にならない。Cクラスを足に使っているセレブの奥様が、偶々知人のティアナを運転したら、横道に入るときに1回で入れずに、何回も切り返しが必要となったという笑い話もある。あまけに、切り返しでバックをするときも、チョッとアクセルを踏んでも発進しないので、少し多めに踏んだらばピョンと飛び出して、もう パニック状態だったという。その後、奥様曰く「わたくし、国産車って怖くて運転出来ないんですの」と言っているそうで、奥様はどうして他の人たちは、こんなに恐ろしいクルマをちゃんと運転できるのだろう、との疑問をもっていたようだ。
C200の場合CGI BlueEFFICIENCY(440万円)と同LITE (399万円)の違いは主として、パーキングアシスト&リアビューカメラ 、SRSサイドバッグ(後席)、自動防眩ルームミラー&ドアミラー(運転席側)、カップホルダー(前席) が無い事くらいで、これらは特に必要とも思えないモノばかりだから、これで41万円も安いというのは正に買いだ!しかも、この価格はS60 DRIeにナビを付けた価格より1万円 も安い!!

次に、各車の特徴を列記してる。
 

@ VILVO S60 DRIVe
 

400万円のプレミアムサルーンという最激戦区に挑戦したS60だが、果たしてどの程度食い込めるのだろうか。今回乗った結果では決して悪いクルマではないが、S60でなければならない理由もない。でも、強いて挙げれば安全装備が他社を圧倒していることか。ただし、そのためには25万円也のオプション料金を払う必要はあるが。

そして、もう一つ気に掛かるのは、ボルボの衝突回避のための仕組みは、確かに事故を減らすだろうが、逆にあれに頼ってしまい、結果的には事故が減らなかった、とか、最悪の場合はむしろ事故が増えてしまった、とかいうことは無いのだろうか。 考えてみれば、320iと45万円しか違わないDRIVeの買い得感というのは、果たしてあるのだろうか?それどころか、メルセデスC200のベースグレードであるCGI BlueEFFICIENCY LITEと同価格!なのだ。
 

A BMW 320i
 

Dセグメントのプレミアムサルーンの定番といえばBMW3シリーズで、その中でも最も売れているのはベースモデルである320iであろう。 無難という面では320iを選んでおけば間違いは無さそうだ。以前の3シリーズは、そのコンパクトなサイズがイマイチ立派さに欠けていたが、現行のE90系はサイズも結構大きいし、見るからに立派になった。先代E46では黒いボディカラーのクルマは殆ど 目にしなかったが、現行モデルでは結構見かけるようになった。要するに、黒が似合う程に大きなボディとなったということだ。
320iの欠点は数が多過ぎることで、今やチョッと郊外に行ってもまさにウジャウジャと走っていて、希少性の欠片もない。実際にも月平均で約1,000台という販売台数はスカイラインの約600台の倍近い売れ行きだから、街中で遭遇するチャンスが多いのも当然だ。まあ、それだけ人気も実力もある、プレミアムDセグメントの王者であるのは間違い無いし、これを買っておけば先ずは大きな後悔をすることも無いだろう。
 

B Mercedes Benz C200 CGI BlueEFFICIENCY LITE
 

本来、メルセデスといえばSクラスのことで、Eクラスの元となったW123が発売されたときは、コンパクトメルセデスと呼ばれたものだった。Eクラスがコンパクトとは、今のメルセデスでは想像がつかないが、当時はそれ程に高級車に特化したメーカーだった。W123の正常進化であるW124は今でも最高傑作といわれ、「最善か無か」というメルセデスのポリシーそのもののクルマだった。そして、このW124の後期に発売されたのはW124よりも少し小さいW201(190)だった。この190は、次のモデル(W201)からはCクラスと呼ばれるようになった。
こういう経緯からすれば、メルセデスがDセグメントに進出したのはW201(1985年発売)からだから、メルセデスとしては歴史が浅いモデルであり、このクラスでは1975年(初代E21)からのキャリアがあるBMWの3シリーズが強いのも、この歴史の差が物言っている。

歴史的に、どうしても3シリーズの牙城に食い込めないCクラスではあるが、現行W204では徹底的にCクラスの良さを研究して、歴代メルセデスとしては極めてスポーティーな性格となった。また、前述のように価格的にもベースグレードを3シリーズより46万円も安い買い得なグレードを発売するなど、その努力は侮れない。これら近年の努力の結果、昨年(2010年)の売り上げでは3シリーズの75%程度まで迫ったようだ。少し前ならばCクラスの売り上げは3シリーズの半分というのが相場だった。

現行CクラスはメルセデスがBMWに及ばなかったスポーティーなフィーリングという分野でも多いに研究したようで、現行モデルでは以前に比べてステアリングレスポンスも大いに向上しているし、動力性能でも1.8Lターボ184psのC200は2.0L自然吸気170psのBMW320iよりも勝っているから、クルマとしてはC200は十分にお勧めできるのだが・・・・・。
そう「クルマとしては」と表現したのは、ディーラーの一部には、Cクラスの客をバカにしている等という、未だ旧体質が未だ残っている場合もあったりするからだが、まあ、最近は大分改善されたとも聞くし、もう一方のディーラー系列も頑張ってきているから、無理してヤ○セで買うことも無く、これらが3シリーズに75%まで迫った理由だろう。
 

C AUDI A4 2.0TFSI
 

S60が、これを選ぶ特徴に欠けるという辛さがあると指摘したが、アウディの場合も400万円代のモデルでは伝家の宝刀であるクワトロでなく、プレミアムブランドに似つかわしくないFFだし、ミッションもCVTという、スペックを見ただけで嬉しくない構成となっている。まあ、FFだろうが、CVTだろうが気にしないユーザーには問題ないだろうが、400万円以上出して所有する喜びを求める場合には、果たしてどんなものだろうか。
実際に試乗した結果は、FFとしては悪くないが、やはり何かが足りないというか、この薄味感覚が好き嫌いの分かれ目だろう。
ただし、A4のベースモデルは前年までは1.8Lの1.8TFSIだったが、現在は2.0TFSIへとパワーアップされていて、価格は殆ど据え置きの440万円だから、32.6kgmという3.2L並みのトルクを考えれば、買い得だし、ライバルに対するセールスポイントにはなっている。
 

D Lexus HS250
 

レクサスのDセグメントサルーンといえばISが思い浮かぶが、ISは言ってみれば廉価版3シリーズで、これでは本家の3シリーズに勝てる訳が無い。 しかし、同じDセグメントとはいえHSはトヨタの独壇場であるハイブリッド専用車だから、これを選ぶ理由も大いにある。
実際の乗り味はといえば、3シリーズやCクラスには敵わないが、これらに無いHVという強みを考えれば、HSを選ぶ理由も充分にある。とはいえ、3やCとHSを比較検討して悩むユーザーというはいないだろうが・・・・。

ころで、HSの販売台数はといえば2010年は月平均約1,200台で、これは3シリーズを上回っている。因みにISはといえば、約300台/月とHSの1/4しか売れていない。ハッキリ言ってISは次期モデルに期待ということだろう。
 

こうして比べてみると、今現在では予想外にもC200の買い得感が光っていた。ただし、メルセデスの場合は値引きが極めて少ないのに対して、BMWは時と場合によっては大幅値引きもありうるから、実質価格では320iとC200が逆転することも有るという点が、話を複雑にしている。

ところで、本題のS60はといえば、実は今回特別編で取り上げた1.8LターボのDRIVe よりも、3.0LターボのT6 SEにメリットがある。なぜかと言えば、T6の519万円という価格は、3LターボのDセグメント車としては、決定的に買い得価格だからで、例えばBMW335iはT6より多少パワーが上とはいえ686万円と、その差は約170万円もあるから、むしろパワー命のユーザーで、コストを重視するのなら充分に選択肢になるかもしれない。因みに国産Dセグメント車の場合でも、レクサスIS350は496万円からと価格的にはT6と同等だが、ISは3.5Lとはいえ自然吸気だから最大トルクではT6の44.9kgmに対して38.7kgmと15%以上も少ない。また、価格的には最も買い得感のあるスカイライン370GT(409万円より)も自然吸気の為に最大トルクでは36.8kgmであり、T6の45kgm級のトルク感を求めると、チョッとばかり物足りたい面もある。

あれっ、スカイラインの場合はレクサスよりも約100万円も安いんだ!と、いうことは、400万円のDセグセダン選びならば、インフィニティG37改め、スカイライン370GTが最もお勧め、なんてことになってしまった。それなら、3.7Lも要らないから250GTでも充分だし、いや待てよ。マークXの2.5Lなら250万円以下からあるし、どうなんだろう?な〜んてことになってしまう。