ボルボ S40 (2004/05/16)

 




まずは店内に展示してあったS40(セダン)の運転席に座って見る。展示車は最上級グレード(T−5)のため、本皮シートが装備されていた。このシート、皮の表面はシボが付いており、V70のまるで韓国車(ヒュンダイXG)のようなツルツルに比べれば、滑りも大分少ない。  

内装の質感は悪くない。メーターパネルはかなり奥まっていて、計器類が遠くにある。この点、最近チト近くが見づらい傾向にある B_Otaku には有りがたいが、若者だと違和感だけでメリットは無いかもしれない。次に気付くのは、センターコントロールパネルが薄い板状で、その裏側には空間がある。言葉で上手く説明できないが、近代の北欧家具のようで、車の内装としては実にユニークだ。まあ、その内に国産車がパクるだろうけれど。ドアを閉めると、その音は結構重厚ではあるが、Cや3に比べれば遥かに安っぽい。そんな事よりも、今時純正のナビが無い事のほうが気になる。ダッシュボートのどこにも、ナビを装着できそうなスペースはないし、カタログにもナビのナの字もない。

外に出て、外観をよく見れば長さ方向には、かなり寸詰まりに見える。特に、リアのオーバーバングが短く、写真では感じないが、現物は尻が上がってカッコ悪い。少し前のオペルアストラのようだ。トランクはその外観から想像出来ない程に結構奥行きがあり、面積は結構広い。リアシートに座って見れば、やはり前後方向の余裕はミニマムで、狭いと言われる3シリーズよりも更に狭く、ひざと前席シートバックの間に隙間は殆ど無い。頭上方向もミニマムで、殆ど天井に触れる寸前だ。

次にワゴンのV50を見る。Bピラーまではセダンと共通だし、勿論内装も同じ。リアーゲートを開けると、コンパクトワゴンとしては荷室の広さはまあまあか。それより、一面に敷き詰められたカーペットは結構高級感がある。この点では3シリーズツーリングと比べたって見劣りしない。モッとも、信じられない事に価格も318ツーリングより遥かに高いのだから、当たり前とも言えるが。

 試乗車はS40 2.4i(170ps)と V50 2.4(140ps)が用意できるとのことで、以前ワゴンのV70(140ps)に乗った事があるのと、やはりボルボはワゴンということでV50とも思ったが、セールス氏の言うには、140psの廉価版では満足できないだろう、出来ればターボのT−5が有れば良いのだがと言うことで、せめて中間グレードのセダンS40を選んだ。

 乗りこんで最初に感じるのは、ペダルが異様に左にオフセットしていることだ。従って、ドライブ中は常に下半身を左に捩って、身体自体は右に捩るという不自然な形になる。アクセルを踏む右足の膝は、不自然に曲げることになるし、慣れれば何とか成るかもしれないが今時、それも総額400万円を超える車でこれはナイでしょ!

試乗車のオドメーターはたったの25kmを示しており、事実上、マッサラの新車なので、当たりは全く付いていない点は考慮が必要だろう。ATのセレクターは、異様に渋く、まあ、これも新車だからか?それより、助手席側にあるパーキングブレーキレバーがちょっとムカツク。3シリーズだってRHDは右側にあるのに。もっとも、センターパネル全体がドライバー側を向いている3シリーズの場合、共通にしたらRHDは助手席側を向いてしまうから、コンソール自体を2つ用意するしかない事もあるが。

走り出して最初に感じるのは、V70に比べて、遥かに軽快なことだ。 V70に比べ100kg軽いが、図体から見るほどの差はないとも言える。エンジン自体は特に静かでも、スムースでもないが、大きな不満はない。以前乗ったV70は140PS版で、これは低速のトルクはまあまあだが、3000rpmを超えると回転計の針は中々上がらず、4000rpm以上は回らないという、トンでも無い特性だった。まるで日デのディーゼルを積んだサファリのようだ。今回の170ps版は、それよりずっとマシだったが、140ps版との違いは、制御のみ。すなわち、ECUの制御ソフト変えて、同じエンジンなのにわざわざパワーを落として、廉価版としての差別化しているという、なんともインチキな商売をしているのは、どんなもんだろう

操舵特性は、FF丸出しというか、放っておくと真っ直ぐ走りたがる車を、強引に曲げる感覚で、少し前のサニーのようだ。最近はFFとは言え、ニューミニのように充分楽しめる車があるし、アベンシスだってもっと自然だった。ただし、反応自体はそれ程ダルくもないし、操舵力も特に重くはない。最初に6m幅の一般道を60km/h程度で走って見ると、ごく普通のクルマという感じだ。次に2車線のバイパスで、前後が空いたのを見計らって80km/h程度で、車線を左右に素早く振って見たが、思いの外安定していた。こういう時のステアリング特性は、適度にクイックだった。と言うと、かなり走りは良さそうに聞こえるが、V70が常識外に酷かったので、それと比べればヤケに良く感じるが、冷静になれば、並の国産中級車程度だ。

乗り心地は、非常に良い。マッサラの新車で、ダンパーなんか相当硬い筈だが、路面からの振動は極めて少ないし、その割に結構安定は良い。乗り心地に関しては、アベンシスあたりより遥かに良い。タイヤは205/55R16で、ピレッリP7を付けていた。新車に標準装着のタイヤといては結構良いし、意外な乗り味の良さは、このタイヤのお陰かもしれない。

ブレーキはテーベスのFNとしては少しストロークが長い。3シリーズのように短いストロークでガシッとしているのとは違い、何となくブレーキ系統全体の剛性が無いような感じだ。とは、言っても効き自体は悪く無い。ブレーキのみでなく、全てのフィーリングが中級車っぽいと言うか、とてもじゃないがベンツやビーエムと同類と見るのは無理がある。

結論を考えよう。今回試乗したS40iのベース価格は388.5万円(消費税込み、以下同様)で、試乗車はさらにレザーシートを含むパッケージオプション36.8万円が付いて、合計425.3万円也。これは318iの402万円、C180の414.8万円を超え、モデル末期の3シリーズなどは、値引きを考えれば320だって買えそうだ。3やCはプレミアムDセグメントで、S40/V50はマツダアクセラとプラットフォームを共有するCセグメントだ。言って見れば、ゴルフやアストラなどと同格だし(と言う事は、カローラ級!!)、百歩譲って、ボルボがプレミアムブランド(自分では、そう言っている)としても、アウディ(欧州じゃ誰もが認めるプレミアムブランド)A3の283万〜に比べても高すぎる。廉価版S40 2.4(ロム・デチューンエンジンと鉄っちんホイール)でも346.5万もするし、ターボ版220psのT−5は430.5万円もする。さらにワゴンは約25万円高い。かと言って、最廉価版でもゼロクラウン2.5ロイヤルエクストラ買ってお釣りが来るなんて無粋な事は言いたく無が・・・・。

ここで、念のためにプラットフォームが共通なマツダ・アクセラとスペックを比べて見たら、WBは2640でピッタリ同じ。トレッドはフロント−5mm、リア−15mmと多少アクセラが小さいが、ほぼ同一だ。それどころか、双方のカタログに出ているフレームの写真は、ボルボとマツダのプラットフォームばかりか、ボディ自体の構造も殆ど同じなのが良く理解できる。内装は、流石にボルボの方が質感が高いが、一言で言えばS40/V50は内装等に金をかけた高級版のアクセラというところだ。そう考えると、2.3ℓが200万程度で買えるアクセラのコストパフォーマンスの良さが光ってくる。

さてこのクルマ、S40を買う層は、クラウンなんか買うような無教養な連中とは違うとし、ベンツやビーエムの2Lより割安で2.4Lが買えるのだから、実に買い得なクルマ選びをしたと悦にいっているタイプに違いない。

クルマ関連の掲示板など見ていると、Cや3に比べて買い得だなんて言っているタコな奴が結構多い。さて、この新型、売れ行きが楽しみだ。

次は、このクルマとプラットフォームを共有するマツダアクセラに是非とも試乗してみるつもりだ。