ニッサン FUGA 250GT (2004/10/30)  350XV

 

 

 


旧セド・グロのイメージにティアナやスカイライン
を大きくしたような最近の日産車であることが
人目で判る外観

試乗車は250GTで価格は367.5万円(消費税含む)でクラウンで言えば2.5アスリートに相当する。外観は旧型セド・グロをイメージしたグリルと言うかティアナを始めとした最近の日産車の顔つきというべきか。サイドから見た6ライトのウインドウからしてもティアナの兄貴でることは間違いないが、ティアナが何となくアウディを思い起こすのに比べれば、こちらは結構オリジナリティがある。では、カッコ良いかと言われれば、チョッと返事に困るが・・・・。まあ、デザインは好き好きと言うことにしよう。

乗り込んで目の前に広がるダッシュボードは中央上部にディスプレイを配し、その下に水平に木目トリムを走らせる手法や、ディスプレイの切り替えに大きなダイヤルを使う手法も、マルっきりBMWだ。ただ、エアコン吹き出し口をディスプレイの左右に配置するなど多少のオリジナリティは確保した事で、レジェンドほど露骨にパクッたとうい感じはしない。内装の質感はクラウンに比べるとイマイチだが、逆にクラウンのワザとらしい高級感の演出にインチキ臭さを感じる人には良いかもしれない。
シートに座ってスタートボタンを押すと、エンジンが始動するのと同時に、シートやステアリングが記憶されていた定位置に動き出す。このグレードでも運転席にはパワーシートが付き、DVDナビも標準装備している。シートの材質は座面がクロスでサイドが人工皮革だが、これが如何にも贋物丸出しで、最近流行のアルカンターラに比べると情けないほど安っぽい。

少し高めのシート位置から、微かにボンネットが見えるポジションは、最近のBMWそっくりだ。ブレーキを踏みながらセレクターをDに入れ走り出すと、3日前乗ったレジェンドと違い、走った瞬間に高級車の雰囲気がある。スロットルのチューニングも高級車というものを良く理解しているし、走っている間の走行系のスムースさを感じるのもBMWの雰囲気に近いのものを感じる。2.5ℓのエンジンは普通の走行には何の不満も無いのは、BMW525やクラウン2.5でも同様だから驚くことはないが、フーガもこれ等のライバルに立ち向かうだけの実力はあると言うことになる。
少し慣れたところでスロットルを踏み込んで見ると、5速ATは中々キックダウンしてくれない。更に踏み込むとやっと反応したが、この時のATのレスポンスもチョッと遅い。最近のクルマはスロットルやATの特性がドライバーの運転方法によって学習するタイプも多いので、もしかするとマッサラの新車である試乗車も使っているうちに変わるかもしれないが、AT自体のシフトダウンの遅さは変わらないだろう。ATのダイレクト感とレスポンス、それに痒いところに手が届くような制御は欧州製、特に最近のZF製(BMWとアウディが採用している)は抜群だ。

フーガの場合は2.5ℓ車にもATにシーケンシャルモードが付いている。(クラウンは3.0ℓのみ)信号待ちでシフトレバーをDから右に倒し、青信号でフルスロットルを踏むと、2.5ℓエンジンは必要にして十分な加速を提供するが、4000RPM過ぎてからのエンジン音は音量自体は良く遮断されているが音質が悪く、ワクワクもドキドキもしないし、回転の上昇感も良くない。世間で評判の決して良くないVQエンジンを、世界一滑らかでフィーリングが良いと折り紙付きのBMWのM54エンジンと比べるのは酷だが、もう少し何とかならないのだろうか?


内装の質感は特に良くないが、まあ許せる範囲か。デザインは何やらBMWっぽいが?
シートのサイドサポート部分の人工皮革の質感は、いただけない。

操舵力は特に重くも軽くもなく、特性はクイックとは言えないがトロくもなく、国産車としては良い出来栄えだ。ただし、クラウンアスリートも可也良くなっているので、フーガを絶賛する程ではないが、十分に薦められるレベルにはある。
試乗コースの途中にある中速コーナーを70km/h程度で抜けて見ると、フーガは何のためらいも無くニュートラルな特性でクリアした。また直角に近いコーナーも大したロールもなくアンダーステアもそれ程感じられいという素性の良さを見せた。サス自体は結構硬いが乗り心地は決して悪くなく、直進安定性も良いのも欧州車的だ。なにより好印象なのは最初にも書いたが、BMW的な走行中のスムースさがあることで、これは国産車としては初体験だった。セルシオも国産車としては断トツの走行フィールだか、フーガも別な意味で良いフィーリングだ。
ブレーキは国産車としては珍しく、如何にもミューが高いという感じがあり、ストロークも短い。これも欧州車的で好印象だ。ストロークが短いのはブレーキキャリパーやパッドの剛性のみならず、ボディまで含めたシステムとしての剛性がシッカリしているからで、この面でもフーガは真面目に開発されているのが判る。


高級感に乏しいメーター類

写真はフロント。タイヤは225/55R17

今回の試乗ではかなり良い結果となったフーガだが、勿論イマイチな部分もある。レスポンスの悪いトルコンの改良と共に、現行の5速から今や高級車の標準になりつつある6速化も必要だろう。メーターも高級感に乏しく、内装の質感も今後の課題だし、評判の悪いVQエンジンのガサツさも何とかならないものか。
どこかの雑誌での開発者へのインタビューでは、ターゲットはBMW5シリーズで、フーガは5シリーズを超えたと言っていたが、超えたと言うのは言い過ぎとしても、フーガ開発時の旧5シリーズ(E39)にはかなり近づいたとは言える。

では、このフーガが売れるかと言えばそれは別の問題で、旧型セド・グロ程度は売れるだろうが、クラウンの牙城を崩すことが出来るほどに性能的に優位にあるとも思えない。V35スカイラインが、BMW3シリーズを超えたとか、値段からして318iの2ℓ4気筒と同価格で3.5ℓが買える買い得感があると一部の評論家が言いふらしても、現実に身の回りを見ればV35は滅多に見ないのに、318はウジャウジャ見かける。多くの人がなぜ3シリーズを選ぶのか?400万以上の買い物に、見栄やブランドだけで選ぶと言う説にも無理がある。やはり、乗ってみて、スペックでは表せないフィーリングや安定性を気に入って買う人が多いのだろう。勿論、ブランドも大いに効いている。これらの日本車には無いものを今後どのようにクリアして行くかが課題だ。スカイラインの二の舞で、結局良い車なのに売れないなんて事が無ければよいが・・・・。