BMW Z4 2.5 (2006/7/2)
※この試乗記は2006年7月現在の内容です。現在この車種は新車販売が終了しています。





FAIRLADY Z


FAIRLADY Z RoadStar



BMW Z4 3.0
 


PORSCHE BOXSTER

 


外観上ではMC前との大きな差は見つからない。

今回はマイナーチェンジを機にエンジンを改装されたBMW Z4 2.5iに試乗した。Z4の歴史と詳細に関してはMC前の前期型Z4 3.0試乗記で解説しているので、そちらを参照願いたい。
BMW3シリーズと基本コンポーネントを共有するオープン2シーターであるZ4は発売以来3年を経て、今回エンジンを改装するなどの大きな変更があった。BMWの6気筒エンジンの主流は、現行3シリーズであるE90の発売と同時に、マグネシュウムブロックとバルブトロニックを装備するN52へと移っていたが、Z4に関しては旧型のM54型が搭載されたままだった。今回のエンジン改装にともなって、以前の2.2、2.5、3.0というラインナップから2.2が消えて、2.5と3.0のみとなった。更に2.5に関しては323 iに搭載されているデチューンされた177ps版が採用されている。これによって2.5とは言う物の、性能的には旧2.2と同等となるし、価格的にも439万円と旧2.2の423万円に近い。 しかも2.2にはオプションだった電動ルーフが標準となったから実質価格据置というところか。
外観上で特に大きく変わった点はないようだ。今時貴重な直列6気筒エンジンを3シリーズの場合は目一杯後ろに押し込んだので、ボンネットを開けてもエンジンの半分以上は隠れているが、 Z4の場合は此れでもかというくらいに長いボンネットなので、余裕でエンジンが搭載されている感じがする。サイドから見たZ4は長いボンネットと短いテール、ドライバーはサルーンで言えば後席に近い位置に座るという独特のプロポーションは、旧来からのスポーツカーの定番スタイルをしている。

このZ4、実は米国で生産されている。この手のクルマは最大の消費地が米国だから、現地で作るのが一番手っ取り早く安上がりという発想だ。これはトヨタカムリやホンダアコードなども同じ。
さて、それではZ4は米国での売り上げはと言えば、以下のようになる。

米国のスポーツカー販売台数
車種名          (販売価格)      2005年   2004年
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BMW Z4       ($35,600 - 42,100)  10.0千台  13.7千台
BMW Z8       ($   -  )         17台    110台
Mercedes-Benz SLK ($42,900 - 61,500)  12.9千台   7.4千台
Mercedes-Benz SL  ($94,800 - 186,000)  10.1千台  12.9千台
Porsche Boxster  ($45,000 - 54,700)   7.9千台   3.5千台
Porsche Carrera  ($71,300 - 91,400)   8.9千台   4.9千台
NISSAN 350Z    ($27,650 - 40,000)  27.3千台  30.7千台
Lexus SC430    ($65,355)        8.4千台   9.7千台
ACURA NSX     ($   -  )       0.2千台   0.2千台
HONDA S2000    ($34,050)       7.8千台   7.3千台
Dodge Viper    ($81,895 - 83,145)   1.7千台   1.8千台
Chevrolet Corvette ($43,690 - 64,890)   32.5千台  35.3千台
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Mercedes-Benz SLR ($450,000)        200台    45台
Porsche CarreraGT ($   -  )        340台    190台
FERRARI      ($168,000 -   )    1.4千台   1.3千台
LANBORGHINI    ($175,000 -   )    0.7千台   0.7千台
MASERATI      ($79,900 - 115,900)  0.2千台   0.1千台
Aston Martin    ($110,000 -   )    0.5千台   0.6千台
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TOYOTA MR-2 Spyder ($   -  )       0.8千台   2.6千台
MAZDA MX-5 Miata  ($20,435 - 26,700)   9.8千台   9.4千台
MAZDA RX-8     ($26,435)       14.7千台  23.7千台
HYUNDAI Tiburon  ($16,095 - 20,955)  20.6千台  20.1千台
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さて、どんな物だろうか?それにしても、米国人はスポーツカーが好きだし、逆に世界のスポーツカーは米国で成り立っている訳だから、フェラーリでさえも米国人好み の仕様になってしまうのもうなずける。
本題のZ4の価格は3.0のデチューン版(Z4 3.0i)215psが$35,600で255ps版(Z4 3.0si)が$42,100となる。日本国内で589万円の3.0iは265psなので、米国の3.0siに近い仕様のようだ。米国ではZ4に2.5の設定は無い。国内のZ4が高いか、安いかについては、各自の判断に任せることに しよう。


側面から見れば、ロングノーズ・ショートデッキの特徴がよくわかる。

外観上で3.0と判別する方法がサイドのエンブレムが判りやすい。


トランクスペースは、実用性を問えない2シータースポーツ
としては、こんなものだろう。


フロントシート後方の隙間には小物入れがある。
その上にはスピーカーが。

 

ドアを開けると見える風景はサルーンとは異なるものの明らかにBMW流で、これは好み次第だが、この雰囲気に耐えられないという人はあまりいないだろう。 試乗車にはオプションのオレゴンレザーシートが装着されていた。シートに座った瞬間に感じるのは座面がヤケに柔らかく、一瞬フニャっと感じで驚く。BMWのシートは元々MBやVWのカチッとし たレカロ系の座り心地と異なり、少し柔らかめで座ると尻が多少沈むのだけど、その沈み方が可也弾力のあるウレタンが少し沈む感じがするのが従来までの特徴だったが、このZ4は腰が無くて安物の応接セットのような感覚に違和感を抱く。ただし、少し沈むとその状態ではシッカリするから、一昔前の国産車のフニャフニャシートとは違うし、座った瞬間を除けば走行中は違和感もないし、サポートが悪いという訳でもない。
試乗車の2.5はZ4では廉価版に相当するために、室内の装備は3.0に比べて多少劣る。まず、エアコンがマニアルとなるが、これは慣れれば、それ程不便は無いだろう。ただし、最近のBMWのオートエアコンはかなり良く出来ていて、それこそ普段は何もいじらなくでも快適温度になるから、廉価版とは言っても400万円代の中ほどという価格を考えれば、オートエアコンくらい付けても良いような気がするが・・・・。 ちなみに、2.5にはオートエアコンのオプション設定はないので、マニアルエアコンのみとなる。
正面の メーターは左にフルスケール260km/hの速度計、右に回転計と燃料および水温計となり、BMWサルーンで御馴染みの瞬間燃費計は無い変わりに、最近サルーンでは省略されている水温計がある。速度計はフルスケールで180°強の角度しかなく、しかも260km/hまでリニアに目盛が刻まれているので、精々50〜60km/hの街中では非常に見辛い。 M5の速度計はフルスケールが330km/hまで刻まれているが、スケールの角度が広い事と、0〜120km/hの間がそれ以上に比べて目盛間隔が広くなっていて、120km/hが中央値になっているので、低速部分でも見易い設計になっている。また、ポルシェ各車は目盛の細かいアナログ速度計は概略の速度を視覚的に知るためで、詳細は中央の回転計の下に組み込まれたデジタル表示を使う。Mやポルシェに比べてZ4の速度計はハッタリでは済まされない使い難さがあるし、第一、安全運転上もマズイのではないか?


MC前とは大きく変化の無い室内デザイン。
オプションのナビのディスプレイはダッシュボード中央上部の格納式となるが、試乗車には付いてなかった。


エアコンオ操作パネルの比較。
上が2.5に装着のマニアルエアコン。下が3.0に装着のオートエアコン。2.5にはオプションでのオートエアコン設定はない。

 


標準装備のオーディオの操作パネル。
3.0も標準は同じ。

 


速度計はフルスケールの角度が狭く、目盛も260km/hまで目盛られているので、街中での速度では45km/hと50km/hの違いは判別し難い。

 


BMWでは御馴染みのATセレクター。

 

着座位置はボクスターと比べると かなり高めだ。 と、言っても3シリーズよりは低いが、悪く言えばスポーツカーらしい緊張感が無いと言う事になり、良く解釈すればボンネットが見えるくらいに視界が広く、サルーンの経験しかないドライバーでも違和感無く運転出来る。 更にダッシュボード自体が低めの位置にあるから、更に見通しが良く運転しやすい。
エンジンの始動は最近には珍しくステアリングコラムの右にある鍵穴にキーを挿して、捻ればエンジンが掛かるというオーソドックスな方法だ。 BMWの直列6気筒だけあって、実に静かな、高級サルーンのようなアイドリングをする。ブレーキペダルを踏みながらATのセレクターをDになるまで手前に引くと、 これはもう御馴染みのBMWサルーンそのもののフィーリングだ。 走り出せば、これもまた御馴染みのBMWフィーリングで、同じエンジンを搭載する323iの車両重量1510kgに対してZ4 2.5iは1400kgと100kgも軽い割には、感覚的な動力性能は323iと大きく違わない。要するに、日本の公道で普通に走る分には特に不満はないが、高性能イメージのBMWブランドで、しかも2シータースポーツというイメージで見ると物足りないかもしれない。このエンジンは325iや525i用とは同じ2.5ℓで制御プログラムのみ変更することで215ps/6500rpmに対して177ps/5800rpmにデチューンされている。しかし、この方法は何ともインチキ臭いし、天下のBMWにしてはどうも良心的でないような気がする。そして、このエンジンはスペックのとおりに、4000rpmから上、特に6000〜7000rpmまでのトップエンドの気持ちよさが215ps版に比べてかなり劣る。そういう意味では、旧型のM54エンジンの2.2ℓ、170psの方がトップエンドの滑らかさと気持ちよさは遥かに上だった。
エンジンの吹け上がりが旧型に比べてイマイチなのに対しての救いはATが5速から6速になったことで、まずエンジンを目一杯回すことの無い普通のドライバーにとってはトップエンドのフィーリングよりも6速化によるキメ細かい変速の方がメリットがあるかもしれない。それでは、5速に比べてどのくらいのメリットがあるかと言えば、残念ながらチョッ と乗っただけでの明確なアドバンテージは感じられなかった。
操舵力はBMWとしては可也軽い。初期の1シリーズ辺りと比べると、同じBMWとは思えないほどに操舵力が違うが、実はBMWの操舵力に関しては以前からイヤーモデルによって重かったり、軽かったりと如何考えても迷いがあるのではないかと疑いたくなるような状況を繰り返している。試乗車の軽さは決して悪くはないし、適度にクイックでスポーティな特性はBMWらしく、少し腕に 自信のある程度のドライバーには、実に心地良い。コーナリング速度も適度なテクニックが有れば、まあ、ソコソコの速度で安全に旋回できる。
Z4はオープンカーだから当然ながらフルオープンでの走行に興味が湧くだろう。結論から言えば、サイドウインドウを上げれば、走行中の風の巻き込みは少ないが、フロントスクリーンの上部からの風がコンソール付近を通過して、 それがRHDならばドライバーの左腕に当たる。原因を考えてみたら、試乗車にはボクスターではオプションとは言え装着が常識のウインドデフレクターに相当するものが付いていない。 そういえば今まで試乗した4台のZ4全てに付いていなかった。これはシートバック上部付近のロールゲージ間を繋ぐアクリル板とシートバック裏の穴あきメタルで、風の流れが室内を通るのを押さえるのだが、 Z4のカタログを見れば確かに同じような物がオプションには設定がある。この辺が走ってナンボの体育会系のボクスターと、ファッション主体の同好会系のZ4の違いなのか。


ボンネットの中は323iと同じ2.5ℓのデチューン版177psを搭載する。
 


Z4の運転姿勢は意外と高く、ボンネットが見えるので、サルーンと同じ感覚で運転できる。

 


これは比較としてボクスターの低い運転姿勢。 視界の下1/3は常にメーターが視野に入っている。辛うじて見える右フェンダーの峰で右位置が確認出来る(RHDの場合)。

 

2.5に標準装着されるタイヤは225/50R15 で最近のBMWサルーンと同じくランフラットタイヤ(RFT)が設定されている。現在のBMWラインナップでRFTを使わないモデルはM5やZ4でもMロードスターなど、本物のMのみとなってしまった。実際に走ってみれば、乗り心地は他社のサルーンに比べても決して見劣りしないし、試乗車の場合は、例えば抜群のコストパフォーマンスに対して硬めの設定が唯一気になったVWパサートV6よりも 乗り心地は良いくらいだし、(自称)高級サルーンのレクサスIS250と比べても勝るとも劣らない。ただし、よーく耳を澄ましていると、フルオープンの宿命である剛性不足から、段差などの強い衝撃を受けるとボディ全体がブルンという感じで振動する。それに、特にフルオープン時は鏡のような道で無い限り、ルームミラーは細かく振動している。これは典型的なスカットルシェイクで、Z4の発売と同時に試乗した時から変わらない。本来オープンボディには不可避なので、特に問題にはならないだろうが、何しろオープンとしては驚異的な剛性のボクスターと比べてしまうと、どうしても 見劣りしていまう。
次にブレーキはと言えば、これはBMW全てに渡って同じコンセプトに統一されているとしか思えないくらいに、サルーンと同じフィーリングだ。非常に軽い踏力でブレーキペダルにチョッと足を載せると、グイッと食いつくように減速する。普段の街中では、それこそつま先だけでコントロールできるので、慣れると非常に心強いし、ひ弱な女性(と男性)でも 自信を持って減速できる安心感は実に良い。ただし、本当にベビーな使い方には軽すぎる踏力は思い通りの減速度を出せないし、フローティングタイプのキュリパーは本当にガンガンと踏みまくるとスライトピンのグリスが心配だし、食いつきの良いパッドはフェードや高速時のμの低下(スピードスプレッドが悪いなんて表現する)が心配だ。 とは言っても、Z4は元々そんな運転を想定してはいないだろうが。


2.5のフロントには7J×16ホイールと225/50R15ランフラットタイヤが装着される。


Z4は前後とも同サイズのタイヤ&ホイールを装着する。
 


フロント キャリパーは320iと同一の鋳鉄製のため上級車のアルミ製よりも剛性感は上回る。

 


リアキャリパーもフロント同様に鋳鉄製を装着する。

 

Z4 2.5が価格的に競合するのはフェアレディZロードスターと言う事になる。Z4の439万円に対してZロードスターはベース価格が 385.4万円(6MT)で5ATの場合はバージョンTとなって422万円と可也近い価格帯になる。 さて、どちらを選ぶかというのは難しい問題だ。そう言えば、この比較は複数の自動車雑誌でも特集していたような気がする。フェアレディZというクルマは、2シータースポーツの雰囲気を味わうクルマだから、実際走りはフーガ辺りと良い勝負どころか、設計の新しいフーガの方がハンドリングが良かったりする。だだし、オープンに拘らないでコストパフォーマンスの良い2シーターで、セダンに無い雰囲気を味わいたいというのなら、フェアレディZのクーペは勧められる。なにしろベース価格が5ATでも338万円で、3.5ℓ、280psの2シータースポーツクーペが買えるのだから、多少重くて鈍かろうが、アンダーが強くて曲がらなかろうが許せてしまう。

それではZ4 2.5はどんなユーザーに勧められるのだろうか?本来BMWというクルマは適度に育ちが良く、まあまあの学歴で庶民よりは高級取りで、少しクルマが好きという程度のドライバー をターゲットにしているような気がする。それでも、可也な走り屋系のマニアでも十分楽しめるのは、それだけ真面目にクルマを作っているからに他ならない。 それでは、そのような典型的BMWユーザーにボクスターを運転させてZ4で60km/hで回れるコーナーを回ったら、まず60km/hでは回れないだろう。 しかし、腕の良いドライバーならボクスターの限界はZ4よりず〜っと高いところにある。この点こそがBMWの目指す物だし、その意味ではコテコテのクルマオタクにとってはBMWというのは何処か物足りなくなって、 一度は買ってみて結構気に入るのだが、長くても数年、早ければ3年以内に手放す場合が多い現実を結構見ている。走りを求めるなら、あと40万円を奮発して同じBMWのホットハッチとも言える130iを狙った方が良いのではないか。
Z4は走りだけを求めるのではなく、オープンの気持ち良さを知ってしまったが、だからと言ってマツダロードスターでは物足りない。もう少し上のランクを狙いたいし、予算だって多少はある。こんなユーザーに向いているかもしれない。

今回試乗したZ4は2.5ℓ版だったので走りという面では物足りない結果となったが、これが3.0となれば話は違うだろう。近々クーペ版も発売されるようだし、そのZ4クーペは2.5の設定は無く3.0のみのようだ。ただし、3.0ロードスターの589万円という価格は、ボクスターが買えてしまうではないか。と思ったあなたは考えが甘い!ボクスターのMTは既に07モデルが売り切れて、今注文しても 来年末からデリバリーされる08モデルしか手に入らない。でも、07モデルって、本来は今年の8月から受付の筈なんだけど・・・・。