日本の大手銀行など伝統的企業が使用しているメインフレームと専用回線によるシステムの外部からの攻撃耐性は


日本の大手銀行などが使用している「メインフレーム(汎用機)+専用回線(閉域網)」によるシステムは、一般的なWebサーバーやクラウド環境と比較して、外部からのサイバー攻撃に対する物理的・構造的な耐性が極めて高いと言える。

しかし、近年は「絶対に安全」と言い切れない新たなリスクや攻撃の「抜け道」も顕在化している。

メインフレーム+専用回線が攻撃に強い理由(強み)

① インターネットからの直接的な遮断(閉域性)
◦ 専用回線や閉域IP-VPNを使用しているため、外部のインターネットから直接IPアドレスを指定して攻撃(ポートスキャンやDDoS攻撃など)を仕掛けることが物理的にほぼ不可能。

② 独自アーキテクチャとOSによる攻撃の難易度
◦ WindowsやLinuxといった汎用OSと異なり、メインフレームは独自のOS(IBMのz/OSや国産ベンダーの独自OS)やデータ構造で動いている。
◦ 攻撃者が一般的に使用する攻撃ツール(エクスプロイト)やマルウェアがそのまま動作せず、攻撃手法の分析・開発自体に極めて高度かつマイナーな専門知識が必要となる。

③ ハードウェア・OSレベルでの堅牢なセキュリティ機能
◦ メインフレームは数十年間にわたり金融・社会インフラを支える前提で設計されており、RACF(Resource Access Control Facility)に代表される極めて厳格なアクセス制御や、ハードウェアレベルでのリアルタイム暗号化機能が標準で組み込まれている。

現代において存在するリスクと弱点(攻撃の抜け道)

「メインフレーム自体」を直接外から破壊・暗号化することは困難だが、その周辺の環境や運用の隙を突く攻撃に対する脅威が高まっている。
① APIやオープン化に伴う「入り口(接続点)」の増加
◦ インターネットバンキング、スマホアプリ、キャッシュレス決済、他社サービスとのAPI連携などにより、メインフレームの前段にWebサーバーやLinux/Windowsの中継サーバーが配置されている。
◦ 攻撃経路:外部のWebシステムやAPIゲートウェイの脆弱性を突いて侵入し、正規の通信(APIリクエスト等)を装ってメインフレームへアクセスを試みるリスクがある。

② 「境界防御(専用線だから安全)」という過信
◦ 専用回線の内側に一度侵入されると、内部通信が暗号化されていなかったり、同一ネットワーク内のアクセス検証が甘かったりするケース(レガシーな仕様)が残っていることがある。

③ 委託先や拠点端末(エンドポイント)を経由した侵入
◦ 専用回線に接続されている地銀、提携先企業、システム開発委託先、保守用端末などがランサムウェアやマルウェアに感染した場合、その信頼された経路(VPNや専用線)を悪用して内部へ侵入されるリスク(サプライチェーン攻撃)がある。

④ 運用ノウハウのブラックボックス化と人材不足
◦ メインフレームのセキュリティ設定やログ解析は極めて専門的であるため、高度な知識を持つエンジニアの高齢化・不足が進んでいる。設定ミスや不要な高権限アカウントの放置が盲点になることがある。

結論
メインフレームと専用回線の構成は、「強固な金庫」に例えられる。金庫そのものを外から破るのは非常に困難だが、現在増加しているのは「金庫にアクセスできる正規の鍵(APIや関連システムの権限)を別の場所で盗み出し、正規の手順を装って開けさせる」という攻撃だ。

そのため大手銀行等では、メインフレームの堅牢性に頼るだけでなく、周辺のWebシステムや接続端末を含めた全体での「ゼロトラスト(誰も信用しない)」視点での監視やアクセス制限の強化が進められている。