深センAPECに合わせた米中露3カ国首脳会談の動きに対し、ウクライナ、欧州(EU)、日本の3者は「当事国や同盟国を排除したまま、大国の論理(力による現状変更の追認)で国際秩序が書き換えられること」に強い危機感を抱いている。
10月21日には、プーチン大統領が米国のウィットコフ特使との会談で「深センAPEC直前の11月10日〜19日に、米・露・ウクライナの3者協議を再開する意向」を表明するなど、APEC本番に向けた外交戦が急加速している。
なお簡略版は⇒【簡略版】米中露3カ国首脳会談にウクライナ、欧州、日本の懸念と対応
各国の懸念と具体的な対応は以下の通り。
1. ウクライナ:「頭越しの和平」と「ゼレンスキー外し」への強い警戒

ウクライナにとって最大の悪夢は、自国が参加しない深センの米中露会談で停戦条件や領土の扱いが事実上決定されることだ。
• 主な懸念:
◦ 領土割譲と中立化の強要: ロシアが現在占領している地域の事実上の放棄や、NATO非加盟を含む「紛争終結後の安全保障体制」が米露中の合意として突きつけられるリスク。
◦ トランプ政権による政権交代圧力: トランプ氏が10月19日に「ゼレンスキー氏ではなく別の人物が交渉を担うべきだ」と発言したことで、ウクライナ現政権の正統性が揺さぶられている。
• 具体的な対応:
◦ 「ウクライナ抜き」の阻止と事前協議への関与: ゼレンスキー政権とシビハ外相は「ウクライナ抜きの決定は無効」と国際社会に訴える一方、11月中旬に浮上した「米・露・ウクライナ3者協議(2月以来の再開)」の枠組みを利用し、深センでの米中露会談の前にウクライナ側の要求(確実な安全の保証)を米国に飲ませようと動いている。
2. 欧州(EU・NATO諸国):「第2のヤルタ会談」化と欧州安保の空洞化

欧州諸国は、米中露の3大国が勢力圏を分け合う「第2のヤルタ会談」の再来を最も警戒している。
• 主な懸念:
◦ 欧州頭越しの安保再編: 欧州の安全保障に直結するウクライナ問題や対露制裁の解除が、EU不在のアジア(深セン)の舞台でトランプ氏とプーチン氏のトップディールによって決められてしまうこと。
◦ ロシアの再軍備リスク: 十分な抑止力や安全の保証がないまま中途半端な停戦・制裁緩和が行われれば、ロシアが国力を回復し、将来的にバルト三国や東欧への脅威が再燃すると懸念している。
• 具体的な対応:
◦ 対ウクライナ支援の自律化と発言権の確保: トランプ政権が支援縮小や早期妥結に傾く中、EUおよび英国・フランス・ドイツなどの有志国は、独自の軍事・財政支援の枠組みを強化している。「欧州の同意なしに恒久的な対露制裁解除や戦後復興は成り立たない」という経済的レバレッジを盾に、交渉プロセスへの関与を米国に求めている。
3. 日本:「ウクライナの今日」が「東アジアの明日」になる連鎖への危機感

日本政府(高市政権)にとって、米中露3カ国の接近とディールは、インド太平洋地域の抑止力に直結する極めて重大な問題だ。
• 主な懸念:
◦ 「力による現状変更」の悪しき前例: ウクライナでロシアの領土占領が事実上追認されれば、中国に対して「既成事実を作れば米国と取引できる」という誤ったメッセージを与え、台湾海峡や東シナ海・南シナ海での威圧行動を誘発しかねない。
◦ 米国の「同盟国軽視」と中国の地位向上: トランプ氏が中国(習近平氏)に仲介役の花を持たせる見返りに、台湾問題や先端技術規制、あるいは在日米軍を含むインド太平洋の安全保障で中国に譲歩する「米中グランド・バーゲン(大取引)」への警戒感がある。また、核軍縮交渉で米露の戦略核のみが削減対象となれば、中国の中距離核戦力や北朝鮮の核・ミサイル脅威に直面する日本の「拡大抑止(核の傘)」が弱まりかねない。
• 具体的な対応:
◦ 深センAPEC現場での直接牽制と同盟連携: 日本もAPEC参加国として深セン首脳会議に出席する立場にある。日本政府は「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の原則を掲げ、オーストラリアや韓国、太平洋島嶼国・ASEAN諸国との連携を固めつつ、深センの現地でも日米首脳会談などを通じてトランプ大統領に対し「欧州とインド太平洋の安全保障は不可分である」と直接クギを刺す外交調整を進めている。