Project Suncatcheで2027年予定の レーザー光通信実験の仕組みと詳細


Project Suncatcher(プロジェクト・サンキャッチャー)では、2026年に実施される初号機(MVP)による単一衛星テストを経て、2027年に2基の実証衛星を打ち上げて衛星間レーザー光通信(FSO: Free-Space Optical communications)の軌道上実験を行う予定となっている。

宇宙データセンター構想の実現には、複数の太陽光発電衛星を連結して「1つの巨大な分散型スーパーコンピューター」として動作させる必要がある。その心臓部となる2027年の2基構成実験の仕組みと技術的詳細は以下の通り。

1. 衛星間レーザー光通信(FSO)の基本仕組み

FSOは物理的な光ファイバーを使わず、真空の宇宙空間に直接レーザー光を照射して高精度にデータをやり取りする通信技術。

• 大気の影響を受けない理想的な伝送環境:地上の光通信と異なり、宇宙空間には大気(雨・雲・大気ゆらぎ)が存在しないため、減衰や乱反射が極めて少なく、理論上光ファイバーと同等以上の超高速・低遅延通信が可能になる。

• 高密度波長分割多重(DWDM)の導入:1本の光ビームの中に複数の異なる波長の光を合成して同時に伝送する。Googleが地上で実施したベンチマーク試験では、単一のトランシーバーペアで双方向合計1.6 Tbps(片道800 Gbps)の超高速通信を達成しており、将来的にはテラビット級〜10Tbps級のバックボーンを目指す。

2. 2027年実験で検証される4つの主要技術

時速約2万8,000 kmで移動する2基の衛星間で光軸を合わせ、AIの計算データをリアルタイム同期させるため、以下の要素が検証される。

① 超高精度な光軸捕捉・追尾(ATP: Acquisition, Tracking, and Pointing)
数キロ〜数千キロメートル離れた場所から、小指の先ほどの照射口から出る非常に細いレーザービームを互いの受光センサーへ正確に当て続けなければならない。衛星自体の姿勢変動や機体内部の機械的振動(微小振動)を高速にキャンセルし、ミリラジアン(超微小角度)単位で光軸を合わせ続ける精度の制御機構を実証する。

② 近接編隊飛行(Formation Flying)と軌道制御
十分な光強度と通信リンクを維持するため、2基の衛星は互いに衝突しない安全な距離(数キロメートル程度)を保ちながら並走(編隊飛行)する。超小型スラスター(推進器)と軌道予測アルゴリズムを用いて、光リンクの確立と衝突回避を両立させる。

③ 軌道上分散型AI計算(分散ML)の実証
単なるテキストデータや画像の伝送テストにとどまらず、「衛星AのTPUで計算したモデルの重み(Weight)や勾配(Gradient)を、レーザー通信を介してリアルタイムで衛星BのTPUに転送し、共同で推論・学習タスクを処理する」という、軌道上分散コンピューティングの成立性を世界で初めて検証する。

④ リンク遮断・遅延時のソフトウェア耐性
衛星の位置関係や太陽の位置、機体の姿勢制御に伴って光リンクが一時的に途切れたり(瞬断)、ジッター(遅延の揺らぎ)が発生した際に、AIワークロードの計算エラーやハングアップを起こさず動的にタスクをリロード・再ルーティングできるかを試す。

まとめ
2027年の2基実証実験は、ハイパースケール宇宙データセンターを実現するための「物理的に繋がっていないTPU同士を光で繋ぎ、1つの計算機として機能させられるか」という最大のハードルに挑む重要なミッションとなる。