病院が経営不振の時代に、付属病院の収入が多い医科大学の実態は


病院の経営不振が問題化しているにもかかわらず、大学付属病院の収入の大きさから、収入上位大学の多くが医学部を持っている

しかし大学病院とは言え膨大な経費や設備投資に代わりは無く、収入は多くともキャッシュフローを考えれば決して経営が楽ではないはずだが、これはなにかからくりがあるのだろうか。

大学病院の売上(診療収入)は年間数百億〜1,000億円規模に達し、大学全体の収入ランキングを大きく押し上げる。しかし、高額な医療機器の減価償却費や膨大な人件費、材料費がかかるため、「医療事業としての利益率(本業の儲け)」は数%程度、あるいは慢性的な赤字という大学病院も珍しくないという。

それにもかかわらず、大学経営として成り立ち、医学部保有が収入上位の理由となっている背景には、一般の民間病院にはない5つの構造的な「からくり」が存在する。

① 人件費の特殊な抑制構造(教育・研究枠との切り分け)

通常の民間病院では、収入に対する人件費の割合(人件費率)が50〜60%程度かかっている。しかし、大学病院では以下のような仕組みで人件費負担を相対的に抑えてきた。

• 大学教員・研究者としての雇用:医師は「病院の勤務医」であると同時に「大学の教員(教授・准教授・助教)」や「大学院生・専攻医」という立場を持つ。そのため、給与の一部が教育・研究枠の予算から出たり、診療負担に対する基本給設定が民間病院より低く抑えられたりしてきた。

• 外勤(アルバイト)前提の給与体系:大学病院の給料を低く設定する代わりに、関連病院への外勤(当直や日勤アルバイト)を容認することで、実質的な医師の所得を補填する慣行があった。

• 若いマンパワーの活用:研鑽(研修)という名目で、若手医師が長時間労働や低賃金・無給に近い形で高度な臨床業務を支えてきた歴史があります。

② 保険診療以外の「高利益率キャッシュイン」

通常の保険診療は国が定めた価格(DPC制度など)に縛られるため大きな利益が出にくい構造だが、大学病院には利益率の非常に高い周辺収入が入ってくる。

• 治験・受託研究費:新薬開発における治験の中心となるため、製薬会社から高額な受託研究費や治験事務費が入る。

• 寄付金・研究助成金:医療機器メーカーや製薬会社、卒業生・患者からの寄付金が集まりやすく、これらは高い粗利率をもたらる。

• 差額ベッド代・高度先進医療:ブランド力や「特定機能病院」としての高い格付けを活かし、高額な個室料金(差額ベッド代)や自費診療の高度先進医療を提供できる。

③ 巨額の「日銭(キャッシュ)」がもたらす高い信用力と資金調達力

医療事業は、患者や社会保険・国保から毎月確実に巨額の現金が入ってくる「日銭商売」だ。

たとえ最終的な利益率が薄くても、年間数百億〜千億円単位の現金(キャッシュフロー)が止まらずに回り続ける。この潤沢な手元流動性と規模の大きさは、金融機関からの極めて高い格付け(信用)につながる。 その結果、超低金利での巨額融資の取り付けや「大学債(社債のような債券)」の発行が可能になり、老朽化した病院の建て替えや最新医療機器の導入といった超大型の設備投資を有利な条件で調達・運用できるのだ。

④ 私学助成金・交付金と公的な税制優遇

大学病院を運営する主体は「学校法人」または「国立大学法人」

• 補助金制度:私立大学病院には「私立大学等経常費補助金」(医療・研究加算)、国立大学病院には「運営費交付金」や公的な施設整備補助金が投入される。

• 税制上の優遇:学校法人は法人税率が民間企業より低く設定されているほか、収益事業以外の固定資産税が非課税になるなど、税負担面で大きなメリットがある。

⑤ 学内会計でのコスト分散(教育・研究経費との按分)

大学病院で購入する高額な検査機器やITシステム、研究用設備などは、「病院の単独設備」ではなく「医学部の教育・研究施設」としても位置付けられる。

これにより、減価償却費や維持費の一部を大学本部の教育・研究予算(授業料収入や全体予算)から補填・分散させることが可能になり、病院単体の収支を圧迫しすぎない会計スキームが成立する。

まとめ

大学病院の経営は、「医療の診療報酬だけで大儲けしている」のではなく、「巨額のキャッシュを回すことで大学全体の信用力と資金調達力を高め、補助金・治験・寄付金・人件費の切り分けによって設備投資のコストを相殺している」というのが実態だ。