トランプ大統領が発表した「イランの凍結資産解除に関する制限」は、2026年6月中旬に米イ間で署名された覚書(MOU)を巡る、米国側とイラン側の激しい主張の食い違い(政治的駆け引き)を指している。
この発表の背景と、双方の言い分の要点は以下の通り。
🔷トランプ氏の主張(米国側の言い分)
トランプ大統領やベセント財務長官らは、メディアやSNS(Truth Social)を通じて以下のように主張している。
• 完全な米国管理(エスクロー勘定): 解除される資産はイランに直接渡るのではなく、米国の管理下にある「エスクロー勘定(第三者預託口座)」に置かれる。
• 用途は人道物資のみ、かつ米国産に限定: イランはこの資金を、トウモロコシ、大豆、小麦といった米国産の農産物や医薬品・医療用品の購入にしか使えない(「米国の農家や牧場主を豊かにするために使われる」とアピール)。
• 国内の批判かわしと支持層へのアピール: 米議会(特に上院)や共和党内のタカ派から「イランへの譲歩だ」「解除した資金が軍備やテロ支援に流用される」との批判が出ているため、「資金移動を100%厳格に監視し、自国の農業益にも繋げる」と弁明する狙いがある。

イランは米国に対し、問題のある偽ニュース報道とは裏腹に、「ホルムズ海峡を航行する船舶に対して、イランは通行料、保険料、その他いかなる種類の料金も請求または受領していない」と伝えた。これが虚偽の情報であれば、交渉は直ちに終了するだろう。さらに、米国はイランに資金を提供したり、イランの資金からイランに資金を放出したりしていない。我々は、完全に我々が管理するイランの資金の一部を、トウモロコシ、小麦、大豆などの購入のために、米国の農家や牧場主に放出する予定である。イランでは食料が切実に必要とされており、我々は米国からのみイランのために食料を購入する予定である。この件にご関心をお寄せいただき、ありがとうございます。
🔷イラン側の猛反発と主張
一方で、イラン側(中央銀行総裁や外務省報道官ら)は、このトランプ氏の発表を「事実ではない」と真っ向から否定している。
• 使途の自由を主張: 「署名された覚書に基づき、米国から農産物を購入する義務など一切ない」「解除された資産は、イランが自国の利益になる方法で自由に決定して使用する」と主張。
• 国内強硬派への配慮: イラン国内でも「米国の軍事的圧迫に屈したのではないか」というハードライナー(強硬派)からの突き上げがあるため、「主権を維持したまま資産を取り戻した」と言い張る必要がある。
この凍結資金が解除されたら、イランとしては真っ先にヒズボラなどのテロ組織への援助に使いたいのは目に見えている。
まとめ:何が起きているのか?
実態としては、「人道目的に限定した厳格な管理体制(過去のQTR口座などの仕組みに近いもの)」を適用したい米国と、経済制裁の完全な打破と自由な資金奪還をアピールしたいイランの間で、合意文書の解釈や国内向けのアナウンスが完全に乖離している状態だ。
トランプ氏は「イラン側は裏では完全に同意している(従わなければ即座に協議を打ち切る)」と強気な姿勢を崩しておらず、今後の具体的な資金執行のフェーズで、実際にどのような監視・運用ルートが敷かれるかが焦点となっている。