中国不要、日本が開発した重希土類を使わない高性能ネオジム焼結磁石とは


中国が100%のシェアを持っている「重希土類」はモーターを製造するのに絶対に必要な磁石材料だったが、中国は日本への輸出を停止した。

ころが、旧日立金属(現:プロテリアル / Proterial)は「重希土類(ジスプロシウム:Dy、テルビウム:Tb)を一切使用しない、あるいは極限まで削減した高性能ネオジム焼結磁石」を開発した。

これは、次世代のEV(電気自動車)用モーターなどに革命をもたらす技術として非常に高く評価されている。

🔷開発の背景:なぜ「重希土類フリー」が必要なのか?
ネオジム磁石は、現時点で世界最強の磁力を持つ実用磁石だが、1点大きな弱点がある。それは「熱に弱い(高温になると磁力が落ちる)」ということだ。

車載用モーターなど、100℃〜200℃の高温環境で使用するためには、耐熱性(保磁力:Hcj​)を高める必要があり、そのためにジスプロシウム(Dy)やテルビウム(Tb)という「重希土類(ヘビー・レアアース)」を添加するのが従来の常識だった。

しかし、これらの重希土類には以下の重大なリスクがある。
• 地政学リスク: 産出・加工の大部分を特定の国(中国)に依存している。

• コストと供給の不安定さ: 埋蔵量が極めて少なく、価格高騰や供給途絶のリスクが常につきまとう。

そのため、「重希土類を使わずに、いかに耐熱性を上げるか」が世界の磁石開発の最重要テーマだった。

🔷 コア技術:「結晶粒微細化」と「粒界制御」
旧日立金属が達成したブレイクスルーは、素材の配合ではなく「組織のナノコントロール(微細化と構造制御)」だ。

通常、重希土類を抜くと保磁力(耐熱性)はガクンと落ちてしまう。同社はこれを、以下の2つのアプローチで克服した。

① 結晶粒の微細化
磁石を構成する「ネオジム・鉄・ホウ素(Nd2​Fe14​B)」の結晶の大きさを、従来の数マイクロメートルから、ナノメートルサイズ(またはそれに近い極小サイズ)へと限界まで微細化した。結晶が小さくなればなるほど、逆方向の磁界がかかったときに磁界が反転しにくくなり、結果として保磁力(耐熱性)が向上する。

② 粒界相の最適制御(粒子を綺麗に包む)
微細化した結晶粒の周りを取り囲む「粒界相(結晶の間を埋める層)」の組成を均一かつ薄くコントロールした。これにより、隣り合う結晶同士の磁気的な干渉を断ち切り、磁石全体の保磁力をさらに底上げすることに成功したのだった。

🔷この技術がもたらす革新とメリット
旧日立金属(プロテリアル)のこの技術は、単に「代替品を作った」というレベルに留まらず、実用化において極めて高い完成度を誇る。
• 180℃環境でも高パフォーマンス: EVの駆動モーターがさらされる180℃前後の高温下でも、従来の重希土類入り磁石と同等以上の性能(高磁力・高保磁力)を発揮する。

• サプライチェーンの安定化: 調達リスクの高いDyやTbを一切使わない(または極微量に抑える)ため、政治情勢に左右されない安定したEV生産が可能になる。

• コスト削減と軽量化: 高価なレアアースを使わないため材料コストが抑えられるだけでなく、磁石自体の性能向上により、モーターそのものを小型・軽量化できる。

まとめ
旧日立金属の「重希土類フリー高性能ネオジム焼結磁石」は、日本の得意とする精密なプロセス技術(プロセス・イノベーション)の結晶と言える。

原材料の「元素そのものの性質」に頼るのではなく、「金属のミクロな組織をコントロールする技術」によって弱点を克服した、ものづくり史上に残る画期的な技術で、現在はプロテialに社名が変わっているが、この技術はこれからのグローバルなEVシフトにおいて、日本の大きな強みであり続けている。

そして何より重要なのは、日本のみならず西側諸国が中国へ依存することなくEV時代に対応できる事だ。