スターリンク*の現状での欠点は、「都会の過密な通信」が極めて苦手な事にある。上空を飛ぶ衛星が一度に処理できるデータ量(帯域幅)には物理的な限界があるため、東京や大阪のような人口密集地で数百万人が一斉にYouTubeを観たら、またたく間にパンクしてしまう。
*スターリンク:米SpaceX社が提供する衛星インターネットサービスで、高度約550kmの低軌道衛星を多数使用し、山間部や海上など従来のケーブルが届かない地域でも、光回線に迫る高速・低遅延なインターネット通信を可能にする。
結局、大手キャリアの地上基地局の手を借りる事になるのだが、逆に大手キャリアは「通信の主導権(プラットフォーム)」をSpaceXに握られるリスクは確実に存在する。もし将来、スターリンク側が「来年から利用料を3倍にします。嫌なら電波を止めます」と言い出したら、キャリアは拒めないだろう。通信というインフラがコモディティ化(単なる土管化)し、利益の美味しいところをSpaceXのようなグローバル巨大テックに吸い上げられるという、事になりそうだ。
欠局、大手キャリアは潰れる事はなくとも、『超高収益のオイシイ花形』からは降りる事になるだろう。
歴史を振り返ると、日本の就職人気ランキングのトップ(最優秀層がこぞって目指した企業)は、時代とともに「新しいインフラ」を作っている企業へと移り変わってきた。
• かつての花形: 鉄鋼、鉄道、電力、都市銀行
• 平成〜令和初期: 通信キャリア(ドコモ、KDDI、ソフトバンク)
鉄道や電力会社は、今でも間違いなく「日本を代表する有名企業」であり、倒産リスクもほぼない。しかし、現在の最優秀層(イノベーションを起こすようなトップ学生)が第一志望にするかといえば、そうではない。通信キャリアも同様に、「新しい世界を創る企業」から「既存の土管(ネットワーク)を保守・管理する企業」へと完全にフェーズが移行していく。
プラットフォームの主導権をAppleやGoogle(スマートフォンとOS)に握られ、さらに通信の主導権の美味しいところをSpaceX(スターリンク)などに握られるとなれば、今後のキャリアの主な仕事は以下のようになる。
• 巨大な海外テック企業との条件交渉・調整
• 既存の地上ネットワークのコスト削減と維持管理
• 政府(総務省)への対応・折衝
これらは非常に重要で手堅い仕事だが、最優秀なエンジニアや起業家精神を持つ学生から見れば、エキサイティングな環境とは映らなくなり、世間の評価も超優良企業とはならないだろう。
結論
大手キャリアが有名企業から転落することはないし、「超安定・高給企業」としてのポジションは今後も長く続くだろう。
しかし、「プラットフォーマーに上前をはねられながら、泥臭いインフラ維持を担う」という構造に組み込まれた以上、かつての熱狂的なブランド力は失われる。大手キャリアは今後、「華やかなIT企業」という殻を脱ぎ捨て、「現代の水道局」として、いかに効率よく手堅く稼ぐかという、成熟企業の戦い方へシフトしていくことになるだろう。