マイナカードの重大な不具合など、政府関連ITシステムが極端にレベルが低いのはなぜか





マイナンバーカードと保険証の紐付けが違うケースが約7500件もあり、公金受け取り口座が他人の番号とか、証明書の発行をしたら他人の物が出てきた、投薬や病歴が他人のもだったなど、民間企業なら即倒産、全員失業ものだ。これに限らず、政府関連のITシステムは民間ではあり得ない程の程度の低さが目立つのは何故だろうか。

マイナンバーカードを巡る一連の紐付け誤りやトラブルは、医療情報や個人の財産に関わる重要な部分だけに、ニュースを目にするたびに「なぜこんな基礎的なミスが‥‥」と強い不信感や憤りを感じるのも当然だ。民間企業であれば、信頼失墜による顧客離れや巨額の損害賠償で事業継続が危ぶまれるレベルの事態といえる。

政府や自治体のITシステムにおいて、民間では考えられないようなトラブルや質の低さが目立ってしまう背景には、国家機関特有の構造的な問題がいくつか絡み合っているという。主な要因としては‥‥

🔷仕様決定と発注プロセスの硬直化
民間のIT開発では、状況に応じて仕様を柔軟に変更する「アジャイル開発」や、現場の使いやすさを最優先した設計が主流だが、政府のシステム開発では以下の問題が発生しがちだ。
• 事前のガチガチな仕様決定:法律や予算の枠組みに縛られるため、最初に決めた仕様を途中で変更することが極めて困難となっている。

• 多重下請け構造:大手のITベンダー(元請け)が受注し、そこから何段階もの下請け企業へ発注される構造(ITゼネコン化)になりやすく、現場のエンジニアまで正確な意図や責任感が伝わりにくい仕組みになっている。

🔷「利用者の使いやすさ」より「法制度の網羅」が優先される
民間のサービスは「ユーザーに選ばれ、使ってもらうこと」が目的だが、行政システムは「全国民に漏れなく法律通り適用すること」が目的になる。

• その結果、例外的な手続きや過去の古い特例などもすべてシステムに盛り込もうとするため、コードや仕様が異常に複雑化する。

• また、開発の主導権を握る官僚や公務員の多くはITの専門家ではないため、UI/UX(画面の見やすさや操作性)やエラーを防ぐための現場の運用フローの設計が後回しになりがちだ。

🔷過去の「レガシーシステム」とのツギハギ
日本の行政システムは、中央省庁ごと、あるいは全国約1,700の自治体ごとに、それぞれ異なるベンダー(開発業者)が作った独自のシステム(レガシーシステム)が乱立している。

• 今回のようなマイナンバーの紐付けにおいても、各自治体や健康保険組合、金融機関が持つバラバラの古いデータベースを後から強引に繋ぎ合わせようとしたため、データの表記揺れ(漢字の旧字体、同姓同名、住所の番地表記の違いなど)を自動で判別しきれず、手作業による確認ミスなどのアナログなエラーが多発した。

🔷競争原理と責任追及の不在
民間企業であれば、不祥事を起こせば市場から淘汰されるが、政府のシステムには「競合」が存在しない。
• 倒産しない組織:どれだけ使い勝手が悪くても、国民はそのシステムを使う以外の選択肢がない。

• ベンダーの固定化:巨大すぎる行政システムを扱えるIT企業は国内で限られているため、トラブルを起こした企業が次の入札にも関わり続けるケースが少なくない。

デジタル庁による改革の動き:こうした「省庁ごとの縦割り」「民間との技術格差」を解消するためにデジタル庁が設立され、システムの共通化(ガバメントクラウドへの移行)などが進められていますが、数十年にわたって積み重なった複雑なシステムと組織文化を刷新するには、まだ多くの課題が残されている。

オマケにデジタル庁の担当大臣がITの素人だったりして、返って足を引っ張るような人選もあったりするなど、まあ、何とも困ったものだ。

国を挙げたDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める上での最大のボトルネックは、技術そのものというよりも、行政の組織構造や発注の仕組みそのものにあると言える。