ロイター通信が2026年5月12日(現地時間)に報じた内容によると、サウジアラビアが3月下旬、宿敵であるイランに対して秘密裏に直接的な軍事攻撃を行っていたことが明らかになった。

1.攻撃の概要
• 時期:2026年3月下旬
• 実行部隊:サウジアラビア空軍
• 形態:非公表(秘密裏)の複数回にわたる空爆
• 史上初:サウジアラビアがイラン領土内で直接軍事行動を確認されたのは、今回が初めての事例とされている。
2.攻撃の背景と目的
• 報復措置:2月末に勃発した広域的な中東紛争の中で、イランはサウジアラビアを含む湾岸協力会議(GCC)加盟国に対し、ドローンやミサイルによる攻撃を繰り返していた。今回のサウジの行動は、これら自国領土への攻撃に対する「目には目を(tit-for-tat)」の報復だった。
• 抑止力の誇示:長年アメリカの「安全保障の傘」に頼ってきたサウジアラビアだが、今回の紛争で防空網を突破されたことを受け、自力で対抗する強硬な姿勢を示した形となった。
3.攻撃後の外交的動き
• 直接通告:攻撃後、サウジアラビアはイラン側に対して攻撃の事実を通告した。
• 沈静化への合意:攻撃と同時に「これ以上のエスカレーションは望まない」という外交メッセージも送られ、その後の集中的な外交交渉を通じて、両国間で事態を沈静化させるための非公式な合意に至ったと報じられている。
• 効果:実際に3月末には週に100件以上あったサウジへの攻撃が、4月初旬には25件程度まで激減し、4月7日の停戦合意への道筋となった。
4.地域情勢への影響
• 周辺国の動向:同様の報復攻撃はアラブ首長国連邦(UAE)も4月上旬に行っていたと報じられており(ウォール・ストリート・ジャーナルによる)、 湾岸諸国がイランに対して直接反撃に転じるという、戦略の大きな転換点が浮き彫りになった。
• サウジの二段構え:サウジは軍事的な報復を行いながらも、リヤドの駐サウジ・イラン大使らを通じて対話の窓口を維持しており、UAEの強硬路線とは異なる「軍事と外交の併用」という独自の戦略をとったと分析されている。
この報道は、これまで「代理戦争」の形をとっていた両国の対立が、直接的な衝突の段階に入っていたこと、そして同時に破滅的な全面戦争を避けるための極めて現実的な「裏の対話」が行われていたことを示唆している。
このサウジアラビアによる攻撃の具体的な「標的」や「破壊規模」については、機密性が極めて高いため、完全には特定・公表されていない。
しかし、西側諸国とイラン双方の当局者への取材から、以下の点までは判明している。
1.判明している攻撃の内容
• 実行部隊:サウジアラビア空軍(RSAF)による空爆。
• 攻撃の頻度:単発ではなく「複数回(Numerous strikes)」行われたとされている。
• 規模の概念:当局者はこれを「Tit-for-tat(目には目を)」の報復と表現している。つまり、サウジアラビアが受けた被害(石油施設や軍事拠点へのドローン・ミサイル攻撃)と同程度の報復をイラン領内に対して行ったことを示唆している。
2.特定されていない詳細
• 具体的な地点:どの都市やどの軍事基地が狙われたかは、ロイターも「確認できなかった(unable to confirm)」としている。
• 被害状況:イラン政府は自国の脆弱性を露呈させないため、サウジからの直接攻撃による被害を公に認めておらず、詳細な損害状況は伏せられている。
3.なぜ詳細は「判らない」のか
これには戦略的な理由があると分析されている。
• 秘密裏の合意:サウジは攻撃後、イランに対して直接「これは報復である」と通告したが、同時に「これ以上の拡大は望まない」とも伝えている。
• メンツの保護:イラン側もサウジからの直接攻撃を公表すると「報復の連鎖」を止められなくなる(国内向けに反撃せざるを得なくなる)ため、沈黙を守ることで事態の沈静化を図ったと考えられている。
補足:周辺国の動きとの比較
同時期にアラブ首長国連邦(UAE)もイランを攻撃したと報じられているが、ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、UAEはイランの「海水淡水化プラント」や「石油精製所」を標的にしたとされており、サウジアラビアよりも強硬な姿勢をとっていた可能性がある。
これに対し、サウジアラビアは「軍事的な反撃」と「外交的な対話」をセットで行うことで、最終的に4月上旬の停戦へと繋げる戦略をとっていたため、攻撃内容も「政治的なメッセージ」としての側面が強かったと推測される。