UAEの軍事力は、中東地域において「リトル・スパルタ(小さなスパルタ)」と称されるほど、規模は小さいながらも極めて近代化され、高い練度を誇っている。
特にイランからの攻撃に対する「迎撃システム」に関しては、世界でも類を見ない多層的な防衛網を構築しており、2026年3月の事態でもその実力を証明している。
1.UAEの防衛思想:多層防御(レイヤード・ディフェンス)
UAEはイランとの距離が非常に近いため、弾道ミサイル、巡航ミサイル、ドローンという性質の異なる脅威に対して、複数の迎撃システムを組み合わせて「網」を張っている。
• 上層(大気圏外〜高高度):THAAD(サード)
◦ 米国製の高高度迎撃システム。弾道ミサイルを高い高度で叩き落とる。UAEは米国以外で最初にこのシステムを導入・運用した国の一つだ。
• 中層:パトリオット(PAC-3)および KM-SAM
◦ 中距離ミサイルや航空機に対応する。米国製のパトリオットに加え、韓国製の「天弓II(KM-SAM)」も大量導入しており、迎撃の「厚み」を増している。

• 低層・近接: パンツィーリS1 および バラク8
◦ ロシア製のパンツィーリ(機関砲とミサイルの複合)や、イスラエル製のバラク8、自国製のスカイナイトなどを使用し、ドローンや低空を飛ぶ巡航ミサイルを至近距離で迎撃する。


2.2026年の実戦データ(報告ベース)
直近の情勢(2026年3月〜4月)における防衛実績として、以下のようなデータが報じられている。
• 迎撃率:全体の約90%〜96%という非常に高い成功率を維持しているとされる。
• 脅威の内訳:イラン側からは累計で300発以上の弾道ミサイル、1,700機以上のドローンが放たれたが、最新のネットワーク化された防空システムにより、主要なインフラ(石油施設や空港)への壊滅的な被害は免れている。
3.UAE軍事力の特筆すべき点
UAEの強さは単なる「兵器の保有数」ではなく、以下の点にある。
• 兵器の多様化(マルチベンダー):米国一国に依存せず、イスラエル、韓国、ロシア、さらには自国製システムを統合して運用している。これにより、特定の国からの制裁や供給停止(ドルの問題など)があっても、防衛力を維持できる仕組みを整えている。
• 実戦経験の豊富さ:イエメン内戦への介入などを通じ、実際にドローンやミサイルを迎撃する経験を積んでおり、オペレーターの熟練度が他の中東諸国よりも高いと評価されている。
結論としての軍事力評価
UAEは、イランからの攻撃を完全に「無効化」することはできずとも、「経済活動(石油生産や輸送)を継続できるレベルにまで被害を抑え込む」能力は十分に持っている。
サウジやUAEがパイプラインで石油輸送を維持できているのは、この強力な「盾(迎撃システム)」が背後で機能しており、インフラへの致命的な着弾を阻止しているからこそ可能になっていると言える。