昨年8月オーストラリア国防省は海上自衛隊もがみ型護衛艦の能力向上型である「新型FFM」を採用すると発表した。
これに対して2026年4月18日、オーストラリアのメルボルンにて、日本の小泉進次郎防衛大臣とオーストラリアのリチャード・マールズ国防大臣が出席し、歴史的な契約締結と記念式典が行われた。
1.契約の概要
オーストラリア政府は、日本の三菱重工業(MHI)および三菱電機と正式に契約を締結した。
• 調達隻数:最初の3隻分(プログラム全体では11隻を計画)
• 契約相手:三菱重工業(艦艇の共同開発・生産)、三菱電機(搭載システムの供給)
• 納入時期:1番艦の納入は2029年12月を予定
• 建造場所:最初の3隻は日本の三菱重工長崎造船所で建造。それ以降の艦については、オーストラリア国内(西オーストラリア州)での建造へ移行する計画となっている。

因みに、中国のフリゲート艦は

2.採用された「新型FFM」のスペック
提案されたのは、海上自衛隊が令和6年度から導入する「新型FFM(4,800トン型)」をベースにしたオーストラリア向け特別仕様で内容は‥‥
ベースモデル:もがみ型護衛艦の能力向上型(新型FFM)
排水量:約4,800トン(基準)
兵装:32セルのVLS(垂直発射システム)、対艦ミサイル、対空ミサイル
航続距離:最大約10,000海里(広大な太平洋での運用に対応)
運用人数:約92名(高度な自動化による省人化)
艦載機:MH-60R シーホーク哨戒ヘリコプターの運用が可能
兵装のカスタマイズ:オーストラリア仕様では、米海軍との相互運用性を重視し、米国製や欧州製の武器システムが統合される予定だ。

3.「もがみメモランダム」の署名
今回の契約に合わせ、両国は「もがみメモランダム(Mogami Memorandum)」と呼ばれる協力覚書に署名した。これは単なる機材の売買にとどまらず、以下の点において日豪の防衛協力が深化することを象徴している。
• 技術・産業協:日豪の防衛産業基盤を一体化させ、維持整備(サステインメント)の協力も進める。
• 戦略的パートナーシップ:「自由で開かれたインド太平洋」の維持に向け、日豪・日米豪の連携を強化。
• 運用の共通化:海上自衛隊とオーストラリア海軍が同型の艦艇を運用することで、共同訓練や兵站支援がより円滑になる。
4.なぜ日本が選ばれたのか?
ドイツ、韓国、スペインといった競合を抑えて日本が選ばれた主な要因は、以下の3点に集約される。
① 即応性と信頼性:海上自衛隊向けに「もがみ型」を量産している実績があり、2020年代末という短期間での納入が確実視されたこと。
② 高度な自動化:乗員不足に悩むオーストラリア海軍にとって、少ない人数で運用できる日本の省人化技術は極めて魅力的であったこと。
③ 対潜能力の高さ:日本の潜水艦探知技術と、それに付随する静粛性能が世界トップクラスであること。
今回の決定は、日本の防衛装備移転(輸出)において過去最大規模の成功例であり、日豪同盟が「準同盟」からさらに一歩踏み込んだ実務的な段階に入ったことを示している。
しか~しっ。
オーストラリアは左翼政権であり、中国とも融和政策を薦めているという問題があり、日本の最新鋭護衛艦の情報が中国に渡る危険などが懸念される。
この事実は、日本の防衛産業や安全保障に関心を持つ人々にとって非常に重要な論点となっている。特に「機密情報の流出」は、装備移転における最大の懸念事項と言える。
1.豪政府の対中姿勢:融和か、警戒か
現在のアルバニージー政権(労働党)は、前政権時代に冷え切った中国との経済関係を「安定化」させる方針をとっているが、安全保障に関しては極めて強硬な姿勢を維持している。
• AUKUS(オーカス)の推進:米英豪の安全保障枠組み「AUKUS」を通じて、中国を念頭に置いた原子力潜水艦の導入を決定しており、防衛面では完全に日米欧と同じ陣営に立っている。
• 中国の軍事拡大への警戒:豪政府は、中国による南太平洋への進出を安全保障上の最大の脅威と位置づけており、新型護衛艦の導入もその抑止力強化が主目的となる。
• 「融和」は経済、「防衛」は別:経済的な対立は緩和しつつも、軍事・諜報分野では中国を明確な「競争相手」と見なしており、情報流出への警戒心はむしろ高まっている。
2.情報流出を防ぐ「3つの防壁」
日本の最新鋭技術が中国に渡らないよう、多層的なセキュリティ対策が講じられている。
① 情報保護協定(GSOMIA)
日本とオーストラリアは、防衛秘密を共有するための「情報保護協定(GSOMIA)」を締結している。これは、提供した情報を受領国が厳格に管理し、第三国(中国など)に漏らさないことを義務付ける法的拘束力のある国際約束だ。
② ブラックボックス化と輸出仕様
全ての情報が開示されるわけではない。
• ブラックボックス化:艦艇の心臓部(レーダーのアルゴリズムや電子戦システムのソースコードなど)は、オーストラリア側でも分解・解析できない「ブラックボックス」として提供される。
• カスタマイズ:オーストラリア向け新型FFMには、米国製や欧州製のシステムが統合される。日本の独自機密に関わる部分は、必要最小限のインターフェース公開に留められる。
③ セキュリティ・クリアランス制度
オーストラリアには、防衛機密に触れる人物を厳格に審査する「セキュリティ・クリアランス」制度が確立されている。家族構成や過去の渡航歴、外国政府との繋がりなどが徹底的に調査され、適格と認められた者しか機密情報にアクセスできない。
3.日本側のメリットとリスク管理
今回の契約締結にあたり、小泉進次郎防衛大臣とリチャード・マールズ国防大臣が署名した「もがみメモランダム」には、共同開発を通じた機密保持の徹底が含まれている。
リスクよりも戦略的利益:日本にとっての情報流出リスクはゼロではないが、オーストラリアが「日本と同じ艦艇」を持つことで、有事の際に日本で建造した艦が豪州を支援し、豪州の基地で日本の艦を修理できる「運用の共通化(インターオパラビリティ)」のメリットが勝ると判断された。
結論として、オーストラリア政府は「経済的な対中関係」と「軍事的な対中抑止」を明確に切り分けており、米英との強固な協力体制(AUKUS)がある以上、日本の機密が容易に流出する土壌とは考えにくいのが現状だ。