ホルムズ海峡の封鎖リスク(2026年現在の「ダブル・ブロック」状態)を回避するため、湾岸諸国や国際社会は以前からあった構想を劇的なスピードで具体化・拡大させている。
これらは単なるインフラ整備ではなく、エネルギー安全保障上の「生命線」として機能している。
1.パイプライン網の拡充(陸路での原油輸送)
最も現実的かつ即効性のある対策として、既存路線のフル活用と新路線の建設が進んでいる。
• サウジアラビア「東西パイプライン(ペトロライン)」:
◦ ペルシャ湾側の油田から紅海側のヤンブー港まで、サウジ領内を横断する全長約1,200kmのパイプライン。
◦ 現状:現在日量700万バレルという限界に近い能力でフル稼働しており、ホルムズ海峡を通過できない原油の主要な逃げ道となっている。
• UAE「ハブシャン・フジイラ・パイプライン」:
◦ アブダビの油田から、ホルムズ海峡の外側に位置するフジイラ港へ直接送る路線。
◦ 現状:日量180万〜200万バレルの能力をさらに引き上げる拡張工事が急ピッチで進められている。

• イラク・トルコ・パイプライン(開発ロード):
◦ イラク南部のバスラ周辺からトルコのジェイハン港へ結ぶ新路線の建設構想(通称「ドライ・カナル」)で、これによりペルシャ湾を経由せずに地中海へ原油を出すことが可能になる。

2.運河・バイパス水路構想(「第2のホルムズ」)
物理的に海峡を避けるための大規模な土木事業も再浮上している。
• サウジアラビア・運河構想(サルマン国王運河):
◦ サウジアラビア領内を貫通させ、ペルシャ湾とアラビア海(または紅海)を直接結ぶ巨大運河の構想。
◦ 課題:数千キロに及ぶ掘削と膨大なコスト、高低差などの技術的ハードルが高く、現在はまだ「長期的な検討課題」の域を出ていないが、現在の危機を受けて議論が再燃している。

• UAE・ムサンダム・バイパス:
◦ オマーンの飛び地であるムサンダム半島の一部を掘削、あるいはその周辺に小規模なバイパス水路を作るアイデアだが、環境保護や軍事上の懸念から、現時点ではパイプラインの方が優先されている。

3.陸路運搬用高速道路・鉄道(物流の多角化)
エネルギーだけでなく、一般貨物の停滞を防ぐための「陸の回廊」整備も進んでいる。
• GCC鉄道網・高速道路計画:
◦ UAEのフジイラ港やシャールジャのホール・ファッカーン港(いずれも海峡の外側)を起点とし、サウジアラビア、クウェート、さらにはヨルダンやイスラエルを経て地中海へ至る「ランド・ブリッジ(陸橋)」構想。
◦ 現状:トラック輸送によるコンテナ搬送は既に始まっており、海峡を通れない物資を鉄道や大型トレーラーで内陸輸送するルートが実用化されつつある。

まとめ

これらのインフラは、かつては「コストに見合わない」とされてきたが、2026年の現状では「海峡が閉じても国家を存続させるための保険」として、採算を度外視した投資が行われている。