中東産の原油を別のタンカーに移し替えてから日本へ運ぶ「洋上転送」とは


中東アブダビ産の原油がインド西海岸のムンバイ沖で超大型原油タンカー(VLCC)へ別の船から積み替えられた後、日本へ向かっていることが分かった、とブルームバーグが伝えている。

中東産の原油を洋上で移し替える「洋上転送」は、専門用語で STS(Ship-to-Ship Transfer) と呼ばれる高度なオペレーションだ。

現在、ホルムズ海峡の緊張を受け、リスクのある海域を避けるためや、大型タンカーが入れない港へ運ぶための手段として注目されている。その具体的な手順と仕組みを整理する。

1.転送が行われる場所
波が穏やかで、水深が十分にあり、かつ国際情勢の影響を受けにくい安全な海域が選ばれる。

• 主な候補地:マレーシア沖(リンギ海域など)、シンガポール沖、ドバイ沖などが一般的だ。

• 選定基準:他の船舶の航路を妨げず、万が一の漏洩時に迅速に対処できる環境であること。

2.オペレーションの手順
基本的には、原油を積んだ「供給船」と、それを受け取る「受取船」が並走、または係留して行われる。

① 接舷(アプローチ)
2隻の巨大なタンカーが接触して損傷しないよう、**「フェンダー」**と呼ばれる巨大な空気入りの緩衝材(ゴム製のクッション)を船体の間に数個配置する。熟練のパイロット(水先案内人)が指揮を執り、慎重に2隻を並べる。

② 係留
ロープで2隻の船体をしっかりと固定する。これにより、波や潮流で船が離れたり、ホースに負荷がかかったりするのを防ぐ。

③ ホースの接続
供給船のクレーンを使って、太い原油転送用ホース(カーゴホース)を持ち上げ、受取船の配管(マニホールド)に接続する。

④ 転送(ポンピング)
接続が完了し、気密テストなど安全確認が終わると、供給船側のポンプを作動させて原油を送り込む。
• 時間:送る量にもよるが、VLCC(超大型タンカー)同士の場合、24時間から48時間ほどぶっ続けで作業が行われる。

⑤ 解除
転送完了後、ホース内に残った原油を回収し、ホースを切り離して係留を解く。

3.なぜ今「洋上転送」が必要なのか
通常、中東から日本へは1隻の大型タンカーが直行するのが最も効率的だが、現在の危機下では以下の理由で活用されている。

• 「仕向地(行き先)」の偽装・変更:ホルムズ海峡付近で「日本行き」と特定されるリスクを避けるため、一旦別の場所(マレーシアなど)へ運び、そこで別の船に積み替えて「第三国からの輸送」のように見せる、あるいは行き先を柔軟に変更するために行われる。

• 船主の拒否対応:日本の船会社がホルムズ海峡への入域を拒否した場合、イランに近い海域は現地の小型タンカーで運び、安全圏で日本の大型タンカーに積み替えるという手法が取られる。

• 保険上の制約:戦争保険の対象外となる海域がある場合、その境界線ギリギリの安全な場所で積み替えを行う。

4.リスクと注意点
• 油濁事故:接続部からの漏洩や、船体同士の接触事故が最大のリスクで、そのため、高い技術を持つ専門チームの立ち会いが不可欠となる。

• コスト:2隻の船の手配、フェンダーのリース料、専門家の派遣などで、直行便に比べて数百万円〜数千万円単位の追加コストがかかる。

まさに「エネルギーの綱渡り」とも言える、緊急避難的な輸送手段と言える。

とはいえ、こういう裏技があったのか。

このタンカー以外にも、恐らく多くが日本向けの洋上転送を行っているのではないか。