米国のイラン発電所攻撃のターゲットは火力発電所か?





トランプ氏はイランが米国との停戦交渉に応じない場合、発電所を攻撃するとの演説があったが、この場合の発電所とは具体的にどこを指すのだろうか。一番インパクトの多いのは原発だが、発電量はイランの電力全体の10%であり、危険性と共に影響が少ない事から、多くの火力発電所をターゲットとするのではないだろうか。

それは、イランの電源構成の約80〜90%は天然ガスを中心とした火力発電が占めており、ここを叩くことが国家機能を麻痺させる最短ルートだからだ。

そこで、具体的に想定されるターゲットと、その戦略的背景を整理した。

1.ターゲットとなる具体的な発電所(推測)
トランプ氏が「最大のものから順に(Starting with the biggest one first)」と警告していることから、以下の巨大火力発電所がリストの上位にあると推測される。

• ダマーヴァンド火力発電所 (Damavand Power Plant):テヘラン近郊にあり、イラン最大級の発電容量(約2,800MW)を誇る。首都の電力を支えており、ここへの攻撃は政治的・心理的インパクトが最大となる。

• シャヒード・ラジャーイー発電所 (Shahid Rajaee Power Plant):ガズヴィーン州に位置し、テヘラン周辺の工業地帯に電力を供給している。

• ネカ発電所 (Neka Power Plant):カスピ海沿岸にあり、北部の電力を支える重要拠点である


2.なぜ原発(ブシェール)ではなく火力なのか
ブシェール原子力発電所は全発電量の数%程度に過ぎず、軍事的な「電力遮断」の効果としては限定的であり、加えて、以下のリスクが攻撃を躊躇させる要因となる。

• 放射能汚染のリスク:原発への直接攻撃は国際社会(特に近隣の湾岸諸国)からの猛烈な反発を招き、トランプ政権が掲げる「同盟国との協力」にヒビが入る可能性がある。

• 人道的・法的批判:2026年3月末にはアムネスティなどの国際団体が「発電所への攻撃は戦争犯罪に該当する可能性がある」と警告しており、原発攻撃はその非難を決定的なものにしてしまう。

3.火力発電所を狙う「多重のインパクト」
米軍が火力発電所を優先する理由は、単なる停電以上の「ドミノ倒し」を狙っているためだ。

• 天然ガスインフラとの連動:イランの発電所はガスパイプラインと直結している。発電所を叩くことは、ガス供給システム全体の圧力バランスを崩し、産業全般を停止させることにつながる。

• 水供給の停止:イランの多くの地域では電動ポンプで水を汲み上げており、大都市では海水淡水化プラントも稼働している。停電は即座に断水を意味し、政権に対する国民の不満を爆発させる狙いがある。

• サイバー攻撃との併用:物理的な爆撃だけでなく、制御システム(ICS)へのサイバー攻撃によって、復旧が困難なレベルでタービンなどの基幹設備を破壊する「静かな攻撃」も並行して検討されていると見られる。

結論としての見通し
トランプ大統領は演説で「イランを石器時代に戻す(Bring them back to the stone ages)」という過激な表現を使った。これは、ピンポイントで核施設を狙う「外科手術的攻撃」ではなく、社会インフラを網羅的に破壊する「全面的な経済・機能封鎖」への移行を示唆している。

したがって、物理的な破壊目標は、「復旧が難しく、かつ国民生活に直結する大規模な天然ガス火力発電所と、それに付随する変電ネットワーク」に集中する可能性が高いと言える。