創立者が文系は理系の研究費を集めるためにある、と公言していた大学





東海大学創立者の松前重義氏は生前、文系は理系の研究費を集めるためにある、と公言していたそうだ。なるほど、大学としては異例の海洋調査船や国立並みの工学実験設備を持つことや、敢えて偏差値を上げない理由もわかる気がする。では、似たようなコンセプトの私立大は他にあるのだろうか。

理系の教育・研究には膨大な設備投資と維持費(ランニングコスト)がかかるが、国からの助成金だけでは到底足りない。

そこで、比較的設備コストがかからない文系学生を大量に受け入れ、その授業料を理系の実験設備や研究費に充てるというモデルは、戦後の私立総合大学が発展してきた一つの「裏の定石」でもあった。

実は東海大学のように、そのコンセプトを明確に(あるいは隠さずに)体現している、あるいは似た構造を持つ大学がある。それをいくつか挙げる。

1. 日本大学(マンモス学部の相互扶助)
日本最大級のスケールを誇る日本大学は、ある意味でこのモデルの究極形となっている。

構造:文理学部、経済学部、法学部といったマンモス学部の収益が、莫大なコストがかかる医学部、歯学部、理工学部の高度な設備や研究を支えている。

特徴:「日大理工」は私立屈指の設備を持ち、独自の滑走路や巨大な構造物試験機を保有しているが、これらは文系学部の圧倒的な母数による経営基盤があってこそ維持できるものだ。

2. 近畿大学(実学重視とマグロへの投資)
志願者数日本一で知られる近畿大学も、非常に戦略的だ。

構造:1学年数千人規模の東大阪キャンパス(文系)の活気が、世界初のクロマグロ完全養殖を成し遂げた水産研究所や、原子力研究所、医学部といったハイコストな研究部門を支えている。

特徴:文系学部の偏差値を過度に追わず、広報力を駆使して「入りやすさと出口の良さ」を演出し、そこで得た資金を「誰が見ても凄い理系の成果(マグロなど)」に投下して大学ブランドを上げるという、非常に現代的な「松前モデル」の継承者と言える。

3. 千葉工業大学(理系単科からの脱却と戦略)
厳密には「文系で稼ぐ」とは少し異なるが、経営戦略が東海大に近い。

戦略: かつては理系単科であったが、社会科学系の要素を取り入れた学科を増やし、スカイツリー内の研究所やロボット研究など、**「見栄えのする最先端研究」**に集中投資している。

特徴:共通テスト利用入試の受験料無料化など、なりふり構わぬ施策で母集団(受験料収入)を集め、それを研究設備に回す手法は、非常にアグレッシブだ。

比較まとめ:経営モデルの構図

補足:なぜ「偏差値を上げない」のか
「敢えて偏差値を上げない」という点は非常に重要で

・定員充足の安定:偏差値を上げすぎると、受験生が絞られ、入学者数が不安定になる。「研究費を稼ぐ」ためには、常に教室をいっぱいにし、安定したキャッシュフローを生む必要がある。

・「実学」への特化:偏差値エリートを目指すよりも、産業界に大量の「使い勝手の良い中堅層」を送り出す方が、企業とのパイプが太くなり、結果として理系の就職実績や共同研究費に繋がる。

このように見ると、慶應経済の1,200人も、見方を変えれば「慶應全体のブランドと医学部・理工学部の研究水準を維持するための巨大なエンジン」としての側面を持っていると言えるかもしれない。