イギリス政府(特に国家サイバーセキュリティセンター「NCSC」や諜報機関)が、国内の重要インフラ(電力、水道、通信、金融、医療など)に対するサイバー攻撃の主な脅威・想定相手国として名指し、または強く警戒しているのは、主に以下の4カ国だ。

1. ロシア(Russia)— 最も差し迫った破壊的脅威
• 位置づけ:ウクライナ侵攻以降、イギリスを含む支援国に対する「最大のサイバー脅威」とみなされている。
• 特徴・狙い:単なる情報収集にとどまらず、重要インフラ(電力網、通信網、政府機関など)を物理的・機能的に停止させる「破壊工作」や「身代金型ウイルス(ランサムウェア)」を用いた攻撃が警戒されている。また、ロシア政府とのつながりが疑われる「ハクティビスト(政治的動機を持つハッカー)」や犯罪集団による、重要インフラへの妨害工作も活発化している。
2. 中国(China)— 巨大で長期的なシステム侵入の脅威
• 位置づけ:極めて高度で、長期的かつ大規模なスパイ活動・インフラ侵入を行う国家と警戒されている。
• 特徴・狙い:金融、通信、主要企業、先端技術分野からの知的財産や機密情報の窃取に加え、有事の際にイギリス社会を麻痺させられるよう、重要インフラのシステムに「あらかじめバックドア(侵入経路)を仕掛ける」といった隠密な動きが懸念されている。
3. イラン(Iran)— 攻撃的で破壊もいとわない脅威
• 位置づけ:中東情勢や対西方関係の緊張を背景に、攻撃的で破壊・攪乱目的のサイバー能力を高めている国とされている。
• 特徴・狙い:政府機関やインフラ、重要産業を狙ったサイバー攻撃(データの消去や一時的なサービス停止など)を実行する傾向があり、他国での重要インフラや政府システムへの攻撃実績から、イギリス国内でも警戒が強まっている。
4. 北朝鮮(North Korea)— 外貨獲得と攪乱の脅威
• 位置づけ:主に金融システムや暗号資産(仮想通貨)を狙った窃盗行為、ならびに混乱を引き起こす攻撃を行うアクターとしてマークされている。
• 特徴・狙い:経済制裁下にある体制の資金源確保(外貨獲得)を目的とした金融機関・取引所へのサイバー強盗が活発なほか、過去にはイギリスの国民保健サービス(NHS)にも大打撃を与えた「WannaCry」のような大規模ランサムウェア攻撃など、社会インフラを巻き込む攪乱(かくらん)が警戒されている。
背景にある「ハイブリッド戦」への危機感
イギリス政府は、これらの国々が「平時と有事の境界(グレーゾーン)」において、軍事力を使わずに社会を混乱させる「ハイブリッド戦」の一環としてサイバー攻撃を多用していると指摘している。
こうした国々の支援を受けたサイバー攻撃により、「もし明日、数日間にわたって電気が消え、水道が止まり、ATMや電子決済が使えなくなったらどうするか」という現実的なリスクがあるからこそ、政府は国民に対し「最低3日分の自活(水、食料、現金、ラジオ等の備え)」を強く呼びかけるに至っている。