韓国における男女対立の激化と恋愛・結婚離れ(非婚化)は、単一の原因ではなく、「過酷な経済競争」「徴兵制とジェンダー観の摩擦」「ネット社会での過激化」「政治的利用」が複雑に絡み合った構造的な問題だ。
主な背景要因は以下の5点に集約される。
1. 熾烈な競争社会と経済的将来不安(「N放棄世代」)

ソウルへの一極集中、深刻な若者内定難、不動産価格の高騰により、多くの若者が自身の生活を維持するだけで精一杯な状況に置かれている。かつては恋愛・結婚・出産を諦める「三放棄世代」と呼ばれたが、現在はマイホームや人間関係など人生の多くの選択肢を諦める「N放棄世代」へと拡大した。恋愛や結婚は「楽しむもの」ではなく「高いコストとリスクを伴う負担」と捉えられている。
2. 徴兵制と若手男性の「逆差別感」(イデナム現象)

韓国の成人男性には約1.5〜2年間の兵役義務があり、キャリアの中断や機会損失を強いられる。現在の20代男性(いわゆる「イデナム」)は、上の世代のような男尊女卑の恩恵を受けていないと感じている一方で、女性割当制や各種女性支援策に対して「義務(兵役)を負わない女性だけが優遇されている」という強い不公平感(逆差別感)を抱いている。
3. 伝統的家父長制の残弊と女性の意識変化(4B運動)

女性の高学歴化や社会進出が進んだ一方、職場でのジェンダーギャップや家庭内での家事・育児負担の偏り、盗撮や性犯罪への不安は根強く残っている。これに対し、女性の間でフェミニズム(Me Too運動など)が急速に拡大し、「非婚・非出産・非恋愛・非性関係」を掲げる「4B運動」や、過度な容姿規範からの脱却を目指す「脱コルセット運動」など、従来の役割を拒絶する動きが強った。
4. ネットコミュニティの過激化とエコーチェンバー

男女それぞれの過激なインターネット掲示板において、ミソジニー(女性嫌悪)とミサンドリー(男性嫌悪)がエスカレートした。互いの極端な意見を取り上げて攻撃し合う対立構造がネット上で常態化し、異性全体に対する不信感や過剰な警戒心が醸成されている。
5. 政治による分断の利用

近年、国政選挙において若い世代の票を獲得するため、政治家がジェンダー対立を煽り、政策的な争点(例:女性家族部の廃止議論など)として利用した側面がある。本来歩み寄るべき社会課題が政治的ポピュリズムの標的となったことで、世代・性別間の溝が決定的なものとなった。
現在の韓国では、「他者(異性)と良好な関係を構築・維持するリスクやコスト」が「得られるメリット」を大幅に上回ってしまっていることが、男女対立の激化と深刻な恋愛離れを同時に引き起こしている。