中国では厳格な為替管理制度(国家外匯管理局:SAFEによる規制)が敷かれており、個人や民間企業が合法的に国外へ持ち出せる外貨の金額には強い制限がかけられている筈だ。
しかし、この規制をかいくぐり、巨額の資金を国外へ逃避(キャピタル・フライト)させる主要な手法が「貿易偽装による資金流出(Trade Misinvoicing / Trade-Based Money Laundering)」だ。
1. 輸入の水増し申告(Over-invoicing Imports)

実際の商品価値や取引価格よりも高額な請求書(インボイス)を作成し、正規の輸入代金決済を装って過剰な外貨を国外へ送金する手法。
【中国本土の企業】 ──(代金 500万ドル送金)──> 【海外のペーパーカンパニー】
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(実際の輸入商品: 100万ドル相当) (差額 400万ドルを海外口座に留保)
具体的な流れと仕組み
① 結託と準備:中国本土の企業(送金側)が、香港やタックスヘイブン(英領ヴァージン諸島など)に自社で所有するペーパーカンパニーや協力関係にある海外業者を用意する。
② 価格の偽装:実際には100万ドルの価値しかない商品に対し、インボイス上に「500万ドル」と虚偽の記載を行う。
③ 送金と留保:中国の銀行に対し「輸入代金の決済」として500万ドルを送金する。銀行や税関は貿易書類(インボイスや船荷証券など)を確認して送金を許可するため、見た目上は合法的な取引として処理さる。
④ 差額のプール:海外のペーパーカンパニーが500万ドルを受け取った後、本来の取引額(100万ドル)を除いた差額400万ドルが海外の非公開口座やオフショア口座にそのまま留保される。
使われやすい商品・手法
• 適正価格の判定が難しい商品:精密機械、半導体、骨董品、アート作品など、市場価値の判断が難しい物品が用いられる。
• 無形資産の活用:ソフトウェアのライセンス料、デザイン料、コンサルティング費用など、実体のないサービス費として請求額を吊り上げる。
• 三角貿易(仲介貿易):欧米などの本来のメーカーから100万ドルで購入した商品を、自社の香港ペーパーカンパニーを経由させることで500万ドルに再請求(Re-invoicing)させ、中国本土の自社へ売りつける形式をとる。
2. 輸出の過少申告(Under-invoicing Exports)

実際の商品価値よりも低い価格でインボイスを作成・申告して輸出し、回収すべき外貨の一部を海外に放置する手法だ。
【中国本土の企業】 ──(商品 500万ドル相当を輸出)──> 【海外のペーパーカンパニー】
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(代金 100万ドルのみ回金) (最終顧客へ 500万ドルで転売し、
差額 400万ドルを海外口座に留保)
具体的な流れと仕組み
① 低価格での申告:中国本土から実際には500万ドルの市場価値がある商品を輸出する際、税関への申告書類やインボイスには「100万ドル」と記載する。
② 代金の受領:中国本土の企業には、申告通りの「100万ドル」だけが海外から代金として送金・回収される。
③ 海外での差額回収:商品を受け取った海外のペーパーカンパニーが、現地または最終顧客に対して適正価格(500万ドル)で販売する。
④ 差額のプール:500万ドルの売上から中国本土へ回金した100万ドルを差し引いた差額400万ドルが、中国本土へ戻ることなく海外口座に留保される。
目的と副次的メリット
• 為替管理の回避:国外で発生した本来の利益を中国本土に送金(還流)させずに、海外の金融口座に留置できる。
• 節税効果:中国国内における売上高・利益が意図的に低く抑えられるため、国内の法人税などの税負担を軽減(逃税)する効果も生じる。
3. 偽装を容易にする補足的・実務的なテクニック

• 架空・ピストン貿易(Circular Trading)
実際には商品を一切移動させない「架空貿易」や、同じコンテナ(保税地域内の金塊やハイテク部品など)を香港と中国本土の間で何度も往復させ、その都度インボイスを発行して決済送金を行う手法だ。
• 香港(Hong Kong)の活用
香港は中国本土に隣接し、資金移動の自由度が高くタックスヘイブンでもあるため、本土企業が「海外ペーパーカンパニー」を設立して三角貿易の中継地点(ハブ)として利用する標準的なルートとなっている。
まとめ
• 輸入の水増し(Over-invoicing):「高い代金を支払う」名目で、中国本土から多額の外貨を国外へ押し出す。
• 輸出の過少申告(Under-invoicing):「低い代金しか回収しない」名目で、国外で得た外貨をそのまま現地に留める。
いずれの手法も、税関や銀行などの検査体制において「現物商品の実際の価値」と「書類上の記載金額」のズレを完璧に把握することが難しいため、規制回避の代表的な手段として使われている。
結局、いくら中共が締め付けても、資金は海外に流れていくのだった。