イタリア政府が約40年にわたる「脱原発」路線を転換し、国内での原子力発電再導入に向けた法整備を進めている動きについて、経緯・背景・今後のロードマップを整理する。
1. 今回決定した法整備(2026年9月)

2026年9月23日、イタリア上院において原子力発電の再導入に向けた政令整備の権限を政府に委ねる「委任法案」が賛成多数で可決・成立した(下院は同年6月に可決済)。
• 政府に与えられた権限:今後12か月以内に、独立した原子力規制機関の設立、安全規制基準の設定、原発を受け入れる地方自治体への交付金制度などの詳細な法令・計画を策定する。
• 目指す姿:近隣国からの電力輸入依存から脱却し、エネルギー自給率と安全保障を高める。
2. 脱原発から「原発回帰」へ至る歴史

1986〜1987年:チェルノブイリ原発事故を受け、1987年の国民投票で原発廃止を決定。1990年までに国内の商業用原発が全廃された。
2011年:ベルルスコーニ政権下で再開を目指すも、東京電力福島第一原発事故が発生。同年の国民投票で9割超の反対を受け断念。
2023〜2026年:メローニ政権がエネルギー危機と気候変動対策を背景に原発再導入の検討を本格化。2026年9月に法案成立。
3. 方針転換の主な理由

・エネルギー安全保障と電気代の高騰
◦ 2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、天然ガス輸入への依 ◦ これまでフランスなどの近隣国から原子力で発電された電力を輸入して補っていたが、自国で安定電源を持つ必要性が強く認識された。
・脱炭素(気候変動対策)の要求
◦ 2050年の温室効果ガス排出実質ゼロ(ネットゼロ)の目標達成に向け、再エネ拡大を補強するベースロード電源として原子力を位置づけた。
・世論の変化
◦ エネルギー危機による経済的打撃を経て世論が変化し、2026年夏の調査では約57%が原発再導入に賛成に転じた。
4. 再導入する技術とロードマップ

従来の大型原子炉を再建てするのではなく、安全性が高く初期投資や建設期間を抑えられる「次世代型原子炉」が中心となる。
・主役となる技術:小型モジュール炉(SMR) や第4世代の先進的モジュール炉(AMR)。
・主要企業・協力構造:国営電力大手エネル(Enel)やアンサルド・ヌクレアーレなどが技術評価やパートナーシップを進めている。
【スケジュール想定】
2026年9月 :政府委任法が成立(法整備の枠組み決定)
2026〜2027年:原子力規制機関の創設、安全基準・法令の整備
2030年代初頭:SMR等の建設着工・量産体制整備
2034〜2035年:SMRの稼働開始(商業運転)を目指す
5. 課題と今後の見通し

・反対派、地方の反発:メローニ首相は「勇気と良識のある選択」と歓迎しているが、野党や環境団体の一部には慎重・反対論も残っており、建設候補地の選定や立地自治体の合意形成が課題となる。
・欧州における原発回帰:フランス、イギリス、東欧諸国に続き、G7で唯一「原発ゼロ」だったイタリアが方針転換したことで、欧州全体における脱炭素戦略・原子力活用のアプローチに大きな影響を与えることになる。
ところで、メローニ首相といえば、最近トランプ大統領との関係がかなりギクシャクしているようだが、まあ、そのうちまた戻るだろう。トランプ氏は美人に弱いから‥‥。
