多くの大学の工学系学部では、個人所有のノートPCでCADや3Dモデリング 実習をする


現在、多くの大学の建築・理工・デザイン・映像系学部では、個人所有のノートPCでこれらの作業を行う体制(BYOD:Bring Your Own Device)が標準化しているという。

具体的に以下のような公式情報や背景がある。

1. 公式なエビデンス(大学の推奨スペック・要件公表例)

大学が公式ウェブサイトや新入生案内で出している基準を見ると、個人PCでCADや3DCG、動画編集を行う前提のスペックが指定されている。

• 日本大学 理工学部 建築学科
公式案内に「授業・演習でCAD・3DCGソフトを使用する」ことが明記されており、グラフィックボード(NVIDIA GeForce RTX 3060 / 4050 / 5050 以上など)を搭載したノートPCの購入を求めている。

• 早稲田大学 創造理工学部(総合機械工学科)
全学的な推奨スペック(Core i5・メモリ16GB)とは別に、学科専用の要件として「Core i7以上」「QHD高解像度ディスプレイ」など、より高度なCADや解析ソフトを個人PCで動かすための仕様を指定している。

• 美術・デザイン・映像系大学(武蔵野美術大学、多摩美術大学、デジタルハリウッド大学等)
年次の講義から個人のノートPC(MacBook Proや高性能Windowsノート)を持参させ、Adobe Creative Cloud(Premiere Pro、After Effects)による動画編集や、Blender・Mayaなどの3DCGソフトを使った制作を課している。

2.なぜ個人の「ノートPC」で可能なのか?(技術的理由)

かつてはデスクトップPCが必須だったが、現在は以下の環境変化によってノートPCでの運用が可能になった。

・ノートPC用プロセッサ・GPUの大幅な性能向上
現在のノートPC(Apple Mシリーズチップや、NVIDIA GeForce RTXシリーズ搭載ノート)は、数年前のデスクトップPCを凌ぐ処理能力を持っている。学生が課題レベルで行う3DモデリングやFHD〜4Kの動画編集であれば、持ち運び可能な1.5〜2kg前後のノートPCで十分に動作する。

・ソフトウェアライセンスの体系変化
Autodesk社(AutoCAD、Revit、Fusion 360など)が学生向けに「教育機関用無料ライセンス」を提供しているほか、大学側がAdobe Creative Cloudの全学ライセンスを契約し、学生の個人端末に無料でインストールできる環境を整えている。

3.なぜ大学の「PC教室」ではなく個人PCでやらせるのか?(運用的理由)

最大の理由は「課題にかかる時間」がある。

建築の製図(CAD)や3Dレンダリング、動画のカット編集・エフェクト付与といった課題は、完成までに数十時間かかる。大学の端末室(PC教室)は利用時間や座席数に限界があるため、「学内のカフェや図書館、自宅・下宿先でも作業を継続できる環境」がないと提出に間に合わないのが実態だ。

補足:極端に重い処理はどうしているか?

卒業研究などで扱うような「超大規模な建築アセンブリモデル」や「数時間がかりの高精細3Dレンダリング」といった極端に負荷の高い作業については、大学の演習室やメディアセンターに設置された高性能ワークステーション(デスクトップPC)を一時的に使用する。

しかし、日常の講義・演習・課題制作の8割以上は、学生が各自で買ったノートPC上で行われているのが現在の大学教育の実状となっている。

私立の場合、理系学部の授業料は年額百数十万円を軽く超え、最近では170~180万円の例もあるようで、加えてグラボ内蔵の高性能ノートPCまで買うとなれば、親の負担も大変だろう。