中東原油および中東からのエネルギー出荷が途絶した場合、欧州各国が受ける影響は「物理的な供給不足」よりも「グローバルな価格暴騰とLNG途絶に伴う第二次エネルギー危機」という形で甚大なダメージとして表れる。
欧州の直接的な中東原油依存度は12〜15%程度とアジア諸国(50〜80%以上)に比べて低いものの、経済・産業構造上の脆弱性から深刻な影響を受ける事になる。
主要な経済・産業への影響
• 石油価格高騰とハイパーインフレの再来

◦ 中東原油の停止によりグローバルな争奪戦が発生し、原油価格は暴騰。欧州はノルウェーや米国など非中東産原油を調達しているものの、高騰した市場価格で購入せざるを得ず、ガソリンやディーゼル燃料の価格が急騰する。
◦ 欧州中央銀行(ECB)などの試算では、インフレ率が1.5〜2%以上押し上げられると見込まれる。
• LNG(液化天然ガス)途絶によるエネルギー再危機

◦ ロシア産ガスからの脱却後、欧州はカタールなど中東からのLNGに代替依存していた。ホルムズ海峡の封鎖はLNGの供給も止めるため、原油のみならずガス・電気料金が急騰し、2022年のエネルギー危機を超える打撃を与える。
• 製造業・重工業へのサプライチェーンショック

◦ 中東は原油だけでなく、ディーゼル燃料やナフサ、石油化学製品、肥料、メタノールなどの巨大な輸出拠点であり、原材料不足とエネルギーコスト増により、化学、鉄鋼、自動車、半導体関連などの製造ラインが停滞する。
・スタグフレーション(景気後退と物価高の同時進行)

◦ 個人消費の縮小と企業の生産コスト増により、ユーロ圏全体のGDPが0.4〜0.6%以上押し下げられ、深刻な景気後退に突入する。
主要各国の個別事情

欧州各国はIEA(国際エネルギー機関)主導による「90日分の戦略石油備蓄(SPR)」の放出や、北海・米国・アフリカからの緊急代替調達に動くが、価格暴騰を抑え込む手段は限られる。結果として、ウクライナ危機後に続く「第二次エネルギーショック」となり、欧州経済全体が長期の低迷と高物価に苦しむことになる。
