ICCが赤根氏を始めとする被制裁者に現金での援助をしたらどうなる


もしもICCが赤根氏を始めとする被制裁者に現金での援助などをしたらどうなるのだろうか。

結論から言えば、米国の制裁措置が有効な場合、たとえICCが現金での援助を行ったとしても、赤根氏を含む制裁対象者がホテル宿泊、買い物、家賃の支払いなどの基本的なサービスを利用することは、極めて困難になる可能性が高いと考えられる。

これは、米国の制裁が単に「対象者の米国にある資産を凍結する」だけでなく、「世界の金融システムから対象者を排除する」ように設計されているためだ。具体的には、以下の3つの法的な障害が、現金取引であっても阻害する要因となる。

1. 金融システムからの事実上の排除

米国の制裁、特に「特別指定国民・資産凍結対象者リスト(SDNリスト)」への掲載は、対象者が米ドル建ての決済網へアクセスすることを禁じられる。

• 世界中の銀行が取引を拒否:国際的に業務を行う銀行のほぼすべてが、米ドル決済のために米国の金融システムを利用している。制裁対象者と取引を行った銀行は、米国政府から多額の罰金を科されたり、自身が米国の金融システムから排除されたりするリスク(二次制裁リスク)がある。

• 自国の口座も使用不可に:そのため、たとえ日本の銀行であっても、米国からの報復を恐れ、制裁対象者の口座を凍結したり、新規取引を拒否したりする可能性が極めて高い。過去には、制裁対象となったICC関係者の自国にある銀行口座が凍結された例も報じられている。

2. 「二次制裁」による第三者への圧力

これが、ホテル宿泊や家賃の支払いを困難にする決定的な要因だ。
• 二次制裁(Secondary Sanctions)の仕組み:
米国は、米国人以外の第三者(非米国人)が、制裁対象者に対して「物質的な支援、物品、またはサービス」を提供した場合、その第三者自身を制裁対象(SDNリスト)に追加できる権限を持っている。

• ホテルや家主が直面するリスク:
◦ ホテル::制裁対象者に宿泊サービスを提供し、現金を受け取ったホテルは、米国政府から「制裁対象者にサービスを提供した」とみなされ、二次制裁のリスクに直面する。自身の銀行口座が凍結されるリスクを恐れ、ホテルの経営者は宿泊を拒否する可能性が高い。また、現代のホテルは予約や身元確認のためにクレジットカードを必須とすることが多く、カードが止まっている時点で宿泊は困難となる。

◦ 家主:家賃の受け取りも同様で、高額な家賃を毎月現金で受け取る行為は、不自然であり、コンプライアンス(法令遵守)上の懸念を生じさせる。家主は、制裁違反の疑いをかけられるリスクを避けるために、制裁対象者との賃貸契約を拒否、あるいは解除する傾向が強い。

◦ 小売店::日常の買い物についても、米国企業(VISA, Mastercardなど)が提供するクレジットカードは利用できない。現金での購入を許可する店舗であっても、高額商品や、コンプライアンス意識の高い企業は、二次制裁リスクを避けるために取引を躊躇する可能性がある。

3. コンプライアンスと「ライセンス」制度

企業や個人は、意図せず制裁に違反することを防ぐため、制裁対象者との取引を極端に避ける「過剰コンプライアンス(Over-compliance)」の傾向がある。

• 人道的な例外(ライセンス)の難しさ:米国の制裁には、食料、医療、家賃などの「人道的な理由」に基づく支払いを許可する「ライセンス」制度が存在する。しかし、このライセンスを取得するには、個別かつ複雑な手続きが必要であり、米国政府が許可を与えるまでに長い時間がかかります。ICCが現金を援助すれば自動的に支払いが可能になるわけではない。

したがって、ICCが現金を援助したとしても、それを家主やホテル、店舗が受け取ることは、彼ら自身にとって極めて大きな経済的・法的なリスクとなるため、制裁対象者は現金を持っていながらも、サービスを利用できない「生活がなりたたない」という状況に陥る可能性は極めて高いと考えられる。