株式会社全東信(ぜんとうしん)は、大阪市中央区に本社を置いていたクレジットカードの決済代行会社(ECサイトや店舗などの事業者と、カード会社などの決済機関の間に入り、導入手続きやシステム構築、売上金の管理などを一括で引き受ける専門会社)で、2026年7月に大阪地裁から破産手続きの開始決定を受けた。負債総額は1,150億円を超え、2026年で最大規模の大型倒産として大きなニュースになっている。
では、全東信とはどのような会社で、破綻に至ったのだろうか。
1.全東信とはどんな会社だったのか?

主な顧客は、全国の飲食店や小売店など約2万店の加盟店で、特に以下のような強みを持ち、特定の業界では非常に有名なインフラ企業だった。
水商売・夜の街に強かった:一般的なカード会社や決済大手の審査には通りにくい、バーやラウンジ、キャバクラといった「風営法1号業態」や、オープン直後で実績のない店でも、比較的緩い審査でカード決済を導入させていた。
独自の「早期立て替え」システム:通常、カードの売り上げが店に入金されるまでには数週間かかる。しかし全東信は、手数料をもらう代わりに月6回などのハイペースで店に売上金を先払い(立て替え)していた。日々の現金(キャッシュ)が必要な個人経営の店にとって、非常に重宝される存在だった
2.破産の原因:なぜ突然倒産したのか?

表面上は2万もの店舗を支える巨大な決済代行会社だったたが、その裏側は壮絶な「自転車操業」で、破産に至った主な理由は以下の3つだ。
① 少なくとも20年前から続いていた「巨額の粉飾決算」
破産に際して提出された申立書により、20年以上前から累計約630億円にのぼる決算の粉飾(嘘の利益計上)を行っていたことが発覚した。実態はとっくに大赤字の「債務超過」であり、まともな経営状態ではなかったのだった。
② 焦げ付きと資金の流出による慢性的な資金難
他社が断るような店舗も受け入れていたため、カード利用者からの代金回収が滞る(焦げ付く)リスクを抱えていた。さらに、加盟店に支払うべき原資を別の新規事業などに投資してしまい、自己資金がショート。足りない分を隠すために粉飾決算を行い、全国60以上の地方銀行や信用金庫などから雪だるま式に借入を増やして穴埋めしていた。
③ 決定打となった「幹部の逮捕とコンプライアンス違反」
不正な自転車操業のトドメとなったのが、2024年の不祥事で、東京支店の幹部らが、本来なら審査に通らない悪質な「ぼったくり店」に対して他人名義でカード決済の契約を結んでいたとして逮捕された(組織犯罪処罰法違反の疑い)。
これにより「反社会的勢力や不正な店の手助けをしていた」とみなされ、金融機関からの信用が完全に失墜。新規の融資が一切受けられなくなり、資金繰りが完全に破綻した。
3.現在起きている問題

全東信の破綻は、カード決済という「お店の命綱」を直撃したため、大きな混乱を招いている。
飲食店の売上金が未入金に:全東信が店に支払うはずだった売上金(計約53億円)がストップし、資金力の弱い個人店が連鎖倒産する危機に瀕している。
カード決済が使えない:数万の店舗で突然カード端末が使えなくなり、現金払いに戻さざるを得ないなど、営業に支障が出ている。他社の審査に通りにくい業態が多かったため、乗り換えも一筋縄ではいかないのが現状だ。
金融機関の巨額の貸し倒れ:全東信に融資をしていた全国63の地銀や信組なども、計1,000億円以上の貸出金が回収不能(焦げ付き)になる大きな被害を受けている。