カタールから寄贈された暫定機「VC-25B Bridge」を急ピッチで実戦投入するにあたり、米空軍は訓練の実施と運用の安定性を担保するため、民間航空会社から別ルートで複数のボーイング747-8型機を確保している。
なぜ世界に1機しかない暫定機とは別にこれらの機体が必要だったのか、その具体的な詳細と役割とは‥‥
1.確保された訓練機・スペア機の詳細
米空軍は「パイロットの訓練」と「機体の維持」という2つの目的のために、以下の機体を調達している。
① ルフトハンザドイツ航空からの中古機(2機購入)
米空軍は2026年5月、ルフトハンザから中古の旅客型ボーイング747-8(747-8i)を2機購入した(機体番号「25-3200」など)。
• 専属の訓練機としての役割: これまで古いVC-25A(747-200ベース)を飛ばしていたパイロットや運用クルーが、最新の747-8型機のコックピットやシステムに慣れるための専用機として使用される。
• 予備部品の供給源(部品取り): 実はボーイング747シリーズはすでに生産が終了している。そのため、いざという時の専用部品を新品で調達することが極めて困難であり、このルフトハンザ機は、暫定機に不具合が出た際にパーツを融通する「カニバリゼーション(部品取り)」や予備機としての役割も兼ねている。
② アトラス航空からのリース機(1機)
ルフトハンザ機の購入に先立ち、米空軍は2025年10月から2026年2月にかけて、アトラス航空からボーイング747-8F(貨物型)をリースしていた。
• 初期の資格取得用: カタールからの機体が改修されている間に、パイロットたちがいち早く747-8の飛行資格(機種移行訓練)を取得するための「前倒し訓練」として利用された。
③ 機内を再現した「3Dモックアップ」
空を飛ぶ実機だけでなく、2026年1月には機内環境を完全に再現した実物大の「3Dモックアップ(模型)」も空軍に納入されている。
• 警護・サービスのシミュレーション: 大統領を警護するシークレットサービスや客室乗務員が、新しい機内レイアウトでの動き方や緊急時の動線を、地上で安全かつ入念にトレーニングするために活用されている。

2. なぜそこまでして裏方機を用意したのか?
「本番用の貴重な1機を温存し、運用の空白をなくすため」
最大の理由は、カタールから提供された暫定機が「世界にたった1機しか存在しない」からだ。
本来の大統領専用機(VC-25Aや、2028年納入予定の正規のVC-25B)は、常に「2機ペア」で運用するのが鉄則だ。1機が大統領を乗せて飛ぶとき、もう1機がバックアップとして待機するか、先回りして目的地で待機する必要があるからだ。
しかし今回の暫定機は1機しかないため、この機体をパイロットのタッチアンドゴー(離着陸訓練)などの激しい飛行訓練で酷使して消耗させるわけにはいかない。そのため、「操縦に慣れるための訓練」や「壊れたときの部品交換」を引き受ける裏方としての別機体がどうしても不可欠だったというわけだ。