欧米による関税障壁(米国100%、EU最大約45%)の強化を受け、中国メーカーは「規制が緩く、EV普及への意欲が高い新興国市場」および「関税の抜け道となる国」へと輸出先を急速にシフトさせている。
中国製EV(PHEVなどの新エネルギー車を含む)の主な輸入国・地域は、大きく分けて以下の4つのエリアにシフトしている。
1.ラテンアメリカ(最大の急成長市場)
現在、中国製EVの輸出先として最も爆発的な伸びを見せているエリアだ。
• ブラジル:中国製EVの最大の単一輸出先に躍り出ている。2026年に入っても前年同期比で3倍(200%超)という驚異的なペースで輸入が増加している。BYDや長城汽車(GWM)などは、輸出だけでなくブラジル国内での現地工場建設・生産にも巨額の投資を行っている。

• メキシコ :北米市場への足がかり、あるいは米国による100%関税の「迂回ルート」として輸入が急増している。メキシコ国内での低価格な中国製EVの需要も非常に高く、一時前年比で2,000%以上の伸びを記録した。
2.アジア・東南アジア(日本車の牙城を崩すエリア)
地理的に近く、政府がEV普及を後押ししている東南アジアは、中国にとって最重要市場の一つとなっいる。
• タイ・インドネシア:これまで日本の自動車メーカーがシェアの約8〜9割を握っていた「日本車の聖域」だったが、中国製EVが急速に浸透している。タイでは中国ブランドのシェアが乗用車市場の2割近くに達し、インドネシアでも現地の優遇策を背景に輸入・現地生産が急増している。
• その他のアジア(韓国・シンガポールなど):韓国でも、中国製EVの輸入が前年比で2倍近くに急増している。
3.中東
購買力が高く、国家戦略として脱石油・ハイテク化を掲げる中東地域も主要なターゲットとなっている。
• アラブ首長国連邦(UAE)・サウジアラビア:UAE向けは年間約19万台規模に達しており、中東における中国製EVの最大のハブとなっている。富裕層向けの高級EVから、一般向けのモデルまで幅広く輸出されている。
4. 欧州の「関税の壁」が低い国・カテゴリー
EUによる追加関税が始まってからも、欧州全体のシェアは完全には落ちていない。
• イギリス(英国):EUを離脱している英国は、EUのような中国製EVに対する高率な独自追加関税を課していないため、欧州における中国メーカーの絶好の「実証実験場(テストグラウンド)」となっている。
• EU市場(プラグインハイブリッドでの迂回):前述の通り、EUの追加関税は「ピュアEV(BEV)」が対象であるため、中国メーカーは関税率が10%のまま据え置かれているプラグインハイブリッド(PHEV)の輸出を急増させ、EU市場への攻勢を維持している。

まとめ:中国EV輸出の構造変化
中国のEV輸出は、以前の「欧州(EU)依存」から、「ブラジル・メキシコ(中南米)」「タイ・インドネシア(東南アジア)」「中東」といった新興国への分散・シフトが完全に定着した。これらの国々は、独自の強力な自動車ブランドを持たないケースが多く、安価で先進的な中国製EVを歓迎する傾向にあるため、中国のダンピング的な輸出の巨大な受け皿となっている。