BMW 525i Highline (2008/11/9) |
今や世の中の多くのクルマが採用する吊り目スタイルの本家本元。やはり本家は違う。 |
クルマ好きのみならず、単なるブランド好きも含めて一番人気の輸入車といって思い浮かぶのは、何といってもBMWだろう。そのBMWの中でも庶民の憧れは3シリーズだし、これは輸入車のベストセラーでもある
し、3シリーズこそがBMWを代表する車種であることは間違いないし、この分野では天下のメルセデスも全く勝ち目が無い。確かに3シリーズは良く出来たクルマだし、現行のE90となってからは大きさも以前の5シリーズ並となっているから、これ一台でどんな用途にも使える正に万能車であり、ファミリーカーの王道だ。しかし、国産のクラウンクラス、欧州で言うところのEセグメントと比べると大きさは元より、高級感やステータスという面では物足りないと思うユーザーもいるだろう。そんな時に脳裏に浮かぶのが5シリーズで、これなら車格でもクラウンに負ける事は無いから、中小企業の社長が社用車として乗っても様になる。そういえば、3シリーズ
に乗っている社長というのは見た事が無いから、やっぱり3シリーズというのはサラリーマン(勿論、高給取りが多いが)のファミリーカーなのだろう。
そのEセグメントの代表車種のスペックを比較してみると、寸法的には5シリーズの幅が一番広く、クラウンが一番幅が狭い。クラウンの場合は公用車として日本の津々浦々を走ることも考えて極力幅を狭くしているのは理解できる。これに対して、フーガは全高が一番高いのは見た目のとおりで、確かに実用的には有利だが、幾らなんでもカッコが悪いと不評の原因にもなっているのは商売としてどうなのだろうか。
しかも、国内専用のクラウンに対して北米インフィニティMに2.5ℓを載せて国内用に転用したフーガは、ある面での妥協があること
も否定できない。
表1
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BMW 525i |
BMW 525i |
Merceds Benz
E250 |
Toyota
Crown
2.5 ロイヤルサルーン |
Nissan
FUGA |
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High Line
前期型 |
High Line
後期型 |
AVANTGARDE |
ナビパッケージ |
250GT タイプP |
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寸法・重量・乗車定員 |
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全長(m) |
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4.855 |
← |
4.850 |
4.870 |
4.930 |
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全幅(m) |
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1.845 |
← |
1.820 |
1.795 |
1.805 |
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全高(m) |
|
1.470 |
← |
1.465 |
1.470 |
1.510 |
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ホイールベース(m) |
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2.890 |
← |
2.855 |
2.850 |
2.900
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車両重量(kg) |
|
1,600 |
1,620 |
1,660 |
1,600 |
1,690 |
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最小回転半径(m) |
|
5.7 |
← |
5.3 |
5.2 |
5.3 |
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乗車定員(名) |
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5 |
← |
5 |
5 |
5 |
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エンジン・トランスミッション |
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エンジン種類 |
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直6 DOHC |
直6 DOHC |
V6 DOHC |
V6 DOHC |
V6 DOHC |
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総排気量(cm3) |
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2,493 |
2,496 |
2,496 |
2,499 |
2,495 |
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最高出力(ps/rpm) |
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192/6,000 |
218/6,500 |
204/6,100 |
215/6,400 |
223/6,800 |
|
最大トルク(kg・m/rpm) |
25.0/3,500 |
25.5/4,250 |
25.0/5,500 |
26.5/3,800 |
26.8/4,800 |
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トランスミッション |
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6AT |
6AT |
7AT |
6AT |
5AT |
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サスペンション・タイヤ |
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サスペンション方式 |
前 |
ストラット |
← |
ダブルウィシュボーン |
ダブルウィシュボーン |
ダブルウィシュボーン |
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後 |
インテグラルアーム |
← |
マルチリンク |
マルチリンク |
マルチリンク |
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タイヤ寸法 |
前 |
225/55R16 |
225/50R17 |
205/60R16 |
215/55R17 |
225/50R17 |
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|
後 |
225/55R16 |
225/50R17 |
205/60R16 |
215/55R17 |
225/50R17 |
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燃費・装備 |
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燃料消費率(10/15モード
km/L) |
8.8 |
8.8 |
9.0 |
12.0 |
11.2 |
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カーナビゲーション |
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DVD |
HDD |
HDD |
HDD |
HDD |
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レザーシート |
● |
● |
− |
− |
○ |
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価格 |
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車両価格(\) |
6,300,000 |
6,780,000
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6,500,000 |
4,260,000 |
4,284,000 |
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備考(ベースグレード価格)(\) |
5,985,000 |
6,450,000 |
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3,680,000 |
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●標準装備 |
○オプション |
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このクラスの欧州車といえばレザーシートが脳裏に浮かぶが、5シリーズの場合はハイラインパッケージ(約30万円)を選択すればお馴染みの分厚い革のレザーシートが付いてくるが、メルセデスの場合はE250にレザーシートのオプションは見当たらなかった。レザーが欲しければE300を選べという事なのだろうか?
次に国産車の場合はどうかと調べてみれば、クラウンは2.5にレザーシートのオプションはないから、これもレザーが欲しければ3.0(オプションで21万円)を選ぶ事になる。フーガはというと
、全てのグレードにレザーシートがオプション設定されている。う〜ん、世間で言うところのクラウン≒メルセデス、ニッサン≒BMWという図式は当たっているのかもしれない。
今回の試乗車は525iの08モデルハイラインパッケージ付きだから価格は664.5万円だが、10月のマイナーチェンジ以降に購入すると678万円と少し値上げされている。塗装色はスペースグレーというシルバーとガンメタの中間くらいの色で、5シリーズ(特にハイライン系)には
よく似合っている。5シリーズのデザインは今でこそ世間の標準となってしまったが、デビュー当時は随分先進的だったし賛否両論もあった。まあ、それ以前に7シリーズで皆がアッと驚いたわけだから、それに比べれば5シリーズなんて大人しいものだ。特徴的な鷹のような吊り目は
今やトレンドになってしまったし、サイドまで開くトランクリッドだって国産のベストセラーセダンにも使用されている。
外観上での前/後期の差は僅かで、強いて言えばフロントバンパー下部のエアインテイクの形状が幾分変わったくらいだ(写真5)。
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写真1
国産車を含めてこのクラスの多くのクルマが参考にしたトランクリッド形状など、近代セダンのお手本となったリアスタイル。 |
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写真2
先々代3シリーズ(E36)に端を発した極端に短いフロントオーバーハングも健在なサイドビュー。3シリーズより圧倒的に長いリアオーバーハング。比較写真 |
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写真3
真後ろから見る5シリーズは国産大メーカーの某車に似ている。勿論こちらが本家。 |
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写真4
トランクの奥行きは流石に3シリーズよりたっぷりしている。ただし、凝ったリアサスの影響で幅方向は意外に狭い。 |
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写真5
前/後期の違いはフロントバンパー下部のエアインテイクの形状くらいか。
それも良〜く見ないと判らない。なお、前期型の写真は525iツーリングを使用。
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写真6
前期型は旧型から引き継いだ不滅の名作、シルキー6の決定版でもあるM54型エンジンで192psの最高出力と
25.0kg・mの最大トルクを発生する。後期型ではバルブトロニックのN2エンジンで218psの最高出力と25.5kg・m
の最大トルクにアップされている。
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久しぶりの5シリーズの室内を見れば、ハイラインパッケージということもあって、実に高級感に溢れている。BMW定番の厚くてシボの深いレザーをシートやドア内張りに使ったインテリアは、如何にもドイツ製高級車という感があり、この雰囲気は国産車ではどうにもならない(写真7〜10)。まあ、国産車は別の良さを追求すれば良いのだから、何もドイツ車を真似ることはないのだが。
室内は当然ながら3シリーズよりも広くユッタリとしている。この大きめなシートに座ってみると、表面の1〜2cm程は柔らかい層があって体全体が少し沈むのだが、その位置からはカチッと硬い層に当たって体全体を支えているから、決して疲れることは無い。そして表面の柔らかい部分が体の形にシッカリと変形して、表面から既にカチカチに硬いレカロのようなシートに比べて、よりフィットするメリットもあるようだ。勿論、カチカチのスポーツシートが
良いというユーザーもいるだろうが、これは好みの問題ということで、実は慣れればどちらでも良いような気もする。
この柔らかくてシッカリと芯のあるシートの着座位置は結構高いので、実に健康的だし視界も良いから大柄のボディの割には運転し易いというメリットもある。5シリーズに乗った後に、例えばポルシェ等の生粋のスポーツカーに乗り込むと、その低くて寝っ転がったような着座姿勢に戸惑うし、何より視界の悪さに呆れたりするから、人間の感覚なんて当てにはならないものだ
が、慣れればどうにでもなる適応力も備えているようだ。 |
写真7
これまたファミリーカーである3シリーズとは格の違う後席は、場合によってはお客様を乗せても充分に満足できるから、社有車としても使える。
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写真8
フロントシートもたっぷりとしたサイズで、やはりEセグメントは違うと納得できる。試乗車はハイラインパッケージの為にレザーを基調としてインテリアとなっている。 |
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写真9
今更という程にお馴染みのBMWのレザー表皮。 |
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写真10
これも今や定番のパワーシート調整スイッチとメモリーボタン。国産車の多くがコレに追従している。ただし、オリジナルとしてはメルセデスのほうが先だったような・・・。
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現行5シリーズ(E60)は発売された当初は先代に比べてインテリアの質感が大いにチャチになったと落胆したものだが、今や初期モデルの安っぽさは完全に払拭されている。特にセンタークラスタ下部のコンパクトカー並にプラスチッキーだったメクラ蓋は、今ではウッドパネルに覆われて充分な高級感を醸し出している(写真12)。後期型の大きな特徴である電子式のATセレクターレバーはデザイン・質感共に前期型のタイプよりも好ましく思う(写真13)。
ところが多くの前期型E90ユーザーは後期型のレバーを嫌う傾向にある。しかし、新型レバーの基本はM5からの天下りなのだが(写真23)。この新型セレクター
については後程詳しく説明する。ATセレクターの構造とデザインの変更に伴って、手前にあるiDRIVEのコントロールダイヤルの形状も変更されて
いる。
正面にあるメーターは基本的な変更はないが、良く見ると初期のモデルとはエンジンが異なることから、回転計のレッドゾーンが違う(写真14)し、更に細かく見れば各メーターの下部に仕込まれた燃料計と瞬間燃費計の
目盛りが後期型の方が細かい。まあ、これはどうでも良いことではあるが。
他に前/後期5シリーズの室内で大きく変わっている部分といえば、ドア内張りの取っ手やパワーウィンドウスイッチのデザインと位置だ(写真15)。
前期型が他車に無いユニークなデザインだったのに対して、後期型はオーソドックなモノになってしまった。まあ、これもどちらが良いとは言えないので好みの問題だろう。
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写真11
これまた格の違いを感じさせるフロントインテリアの眺め。5シリーズの人気はMスポーツのようだが、
クルマのキャラクターからすれば、このハイラインで高級感に浸ったほうが合っているような気がする。
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写真12
前期型はオーディオパネルの下(センタークラスタ下部)にあるスペースがプラスチック丸出しだったが、後期型ではウッドパネルが使われて高級感が増している。
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写真13
前/後期型での最大の相違点はATセレクターの方式が変わったことだ。
後期型は完全にスイッチ式となり、見た目も実に新鮮で、個人的には新型が圧倒的に好きだ。 |
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写真14 エンジンが変わったことで回転計のレッドゾーンが違う。
また、燃料計と瞬間燃費計の目盛りが後期型のほうが細かい。
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写真15 ドアの内張りは大きくデザインが変わっている。
前期型はユニークだったが、後期型はオーソドックスで特徴がない。 |
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今回は5シリーズの雰囲気を多くの読者に味わってもらおうと考えて、室内の各所の写真を添付することにした。写真11にフロント全景を、写真12〜15は主に前/後期の違い。そして写真16〜21は各部分のアップとなっている。詳細は写真のキャプションを参照願うとして、一言で言えば高級感の質が国産車とは違うということだ。この雰囲気こそが、高い代金を払ってまで5シリーズを買う理由のひとつだと思うし、これに感動を覚えないとか、国産車の内装の方が豪華じゃないか、なんて思うユーザーは5シリーズを購入しても何のメリットもない。
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写真16
空調は左右で別の温度設定が可能。その下はオーディオの操作部だが、表示が少ないので慣れないと使い難いが、オーナーになれば問題なし。
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写真17
オーディオの下は灰皿とシートヒーターやDSCオフスイッチなどが配置されている。 |
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写真18
カップホルダーも付いているのは日本や北米の要望を入れたものだろう。 |
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写真19
ライトスイッチの左がスターターボタン。インテリジェントキーはステアリングコラムの右端に差し込む。 |
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写真
20
レザーの内張りやスイッチの質感、そして照明など全てが満足感に溢れている。 |
写真21
ハイラインパッケージにはリアにブラインドが標準装備される。サイドは手動で、リアは電動となる。スモークガラスなんて下品なものは使わない。 |
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今までに解説してきた高級感溢れる雰囲気とたっぷりとしたサイズのシートに座って、インテリジェントキーをステアリングコラム右のキー穴に差し込む。えっ?今時キー穴に差し込むの?しかもステアリングコラムのサイド?と、思うもの無理は無いが、恐らくこれは違和感を持たせない為のアイディアなのだろう。その証拠に、エンジンの始動はスタートーボタンを使用する(写真19)
し、実は国産車のように所持するだけでもエンジン始動は出来るが、ここはキーをスロットに差し込んだほうがソレらしい。ブレーキペダルを踏みながらスタートボタンを押すと短いクランキングでエンジンは目覚める。その直後にメーターの針はフルスケールまで振り切れてから・・・・・などという子供じみた演出は当然無く、全ての警告
灯が10秒程度輝いてチェックをするという実用的な動作をする。
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