Lexus UX 250h (2019/2) 後編 その2


  

さてパーキングも自動解除されて目出度くクルマはユックリと前進するが、その時の静けさは流石のハイブリッド車で、駐車場の端で一旦停車してクルマの流れの切れ目を待つ。やがて本線の流れが切れたところで、軽くアクセルを踏みながらステアリングを左に切って、本線に入ったところで 2/3 程アクセルを踏み込む。その時の加速感というかトルク感は、流石に低域トルクの大きな電気モーターの御利益で結構なトルクを感じる。これはプラットフォームを共有しているとはいえ UX は 2.0L 146ps+109ps モーターでシステム出力は184ps、対する C-HR ハイブリッドは 1.8L 98ps+72ps モーターでシステム出力が122ps と出力では UX の65%程度で、P/W レシオは11.8kg/ps とUX の8.8kg/ps とは数値上でも結構な差が付いているが、実際に運転するとその差は P/W レシオの値以上に感じるのは、中低速で試した為にトルクの差が大きく効いているのだろう。

デフォルトのノーマルモードでも充分な加速とレスポンスを感じたが、今度はスポーツモードに切り替えて見る。あっ、勿論何処ぞの一流ブランドの試乗のようにスポーツモードでの試乗は禁止、何てタコな事は言われないので念の為。UX のモード切り替えは実は始めて見るような位置にある。すなわちメータークラスーターのフードのそのまた上から左に出ている回転式レバーを使用する、と書くと判り辛いが、写真37 を見れば判るだろう。

スポーツモードに切り替えると正面のメーターは中央の大径メーターがチャージメーターから回転計に変身し、ブルー基調からレッド基調となる (写真38) 。成る程、中央のメーターが LED 化されているのは、こういう小細工をする為だったのだ。そしてこういう事は C-HR では出来ないのはやはりヒエラルキーを感じさせる戦略だろうか。

スポーツモードとなった UX はハッキリと判るくらいにレスポンスもトルクも向上する。と言っても実際にトルク自体が増えたのか、レスポンスの向上でそう感じたのかは判らない。この状態でフルスロットルを踏んでみると、想像していたより遥かに活発に走り、マカンターボとは言わないが SUV としては充分な動力性能を発揮する。トヨタの HV はどちらかと言えばエコ思想で、動力性能が控えめ (というかトロイ) タイプが多いが、UX は欧州の HV と同様でより動力性能をアップするためのハイブリッドという傾向がある。

写真36
UX250hのエンジンは直4 1,986cc 146ps/6,000rpm 188N-m/4,400rpm にフロント109ps、リア7psのモーターを使用しシステム出力は184psとなる。

C-HRはでは直4 1,797cc 98ps/5,200rpm 142N-m/3,600rpm に72psのモーターを使用しシステム出力は122psとなる。


写真37
UX のモード切り替えはメータークラスーターのフードのそのまた上から左に出ている回転式レバーを使用する。
C-HRはハイブリッドではエコモードはあるがスポーツモードは見当たらない。


写真38
スポーツモードでは正面のメーターは中央の大径メーターがチャージメーターから回転計に変身し、ブルー基調からレッド基調となる。

動力性能は思いの他良かったが、さて操舵性と旋回性はどうだろうか。操舵力は適度に軽く中心付近の不感帯も少なく、このクラスの欧州製 SUV と比べて特に劣るという事は無い。というか今までのレクサス車の中では最も欧州車的だと感じられる。試乗車のステアリング特性はスポーツモードでも変わる事は無く、これを求めるにはスポーツ系グレードである F Sport を選択する必要があるが、まあこの手の SUV にそれを求めるのも筋違いではある。

UX で最も印象に残ったのはステアリングレスポンスの自然さと、クルマ自体のシッカリした剛性感で、これは正に欧州車的だ。更に乗り心地の良さでは欧州車以上で、突き上げなどを柔らかく吸収するが、かと言ってトヨタ的な緩さやフワフワ感は無く実にシッカリした乗り味で、これもレクサス車としてトップクラスだった。

何度も述べているように UX は C-HR とプラットフォームを共有しているが、その剛性感はマルで異なり、共通と言っても大幅な補強や高剛性ボディーなど、ベースが同じとは言えマルで違うクルマに作り分けているのは、今のトヨタの実力を見せられた思いだ。

旋回性については今回も本気で試せる環境では無かったが、試乗コースの途中にあるコーナーで試した限りではアンダーステアは充分に少なく素直で安定性も充分だ。また扱い易い特性でマルで出来の良い FWD 車のようだが、考えて見れば試乗車は 4WD とはいえリアは僅か 7ps のモーターでの駆動だから、まあ事実上の FWD であり、これを 4WD というのはどんなモノか?

標準タイヤとしては UX の場合 225/50R18 で C-HR も写真の上級グレードでは同じ 225/50R18 で、ホイールのデザインも何となく似ているし質感も似たようなグレードだ (写真39) 。なお C-HR の下位グレードでは 215/60R17 を使用している。

ブレーキは両車共トヨタのハイブリッドの最大の魅力であるフルエレキのシステムで、特に最近のものは極自然なフィーリングとなっていて、両車共適度な踏力で良く効く。なおレクサスのブレーキは BMW と同じ欧州製のパッドを装着しているからホイールは汚れるが、レクサスではこの点を強調していて、要するに欧州車の性能を得るために欧州車と同様にホイールは汚れまっせー、文句を言ったら無知な貧乏人と思われまっせ―、だからクレーム付けないでねぇ、という事だ。


写真39
標準タイヤはC-HRでも上級グレードではUXと同じ 225/50R18 となり、ホイールのデザインや質感も似ている。


写真40
一見すると似たような外観だが、UXではブレーキパッドにBMWと同じ欧州メーカーを採用している。

正直言って個人的にはハイブリッド車は社会のインフラを含めたトータルでみれば決してエコでは無いし、これを地球環境がどうのと言って割高のHV を買うユーザーってのは‥‥まあ騙されているのか偽善者なのか。しかし低域トルクアップによるドライバビリティの向上を目的とする HV なら充分に薦められる。

このように内容的には BMW X2 と比べてもそれ程には引けを取らない UX だが、いざ価格を比べると、今回の試乗車 Lexus 250h verdion C AWD が475万円で、BMW X1 xDrive 20i M Sport が500万円だから、その差は25万円しかない。オマケにレクサスはワンプライスであり、BMW はご存じのように状況によっては結構な値引きもあるから、場合によっては価格的に同じとなってしまう。レクサスが国内展開を始めた当時はドイツ製プレミアム車と同等のクルマがより安く買えるという点をセールスポイントにしていたが、結局それを求めてのドイツ車からの乗り換えは殆ど無く、安ければ良いというモノでも無いのを悟ったようだ。

そんな事もあり、最近は価格的にはドイツ車とあまり変わらない設定になっている。まあそれをやるには内容的に同等とか、ドイツ車には無い魅力があるとかが必要である。そういう面でみれば、今回の UX は何とか合格と言っても良いのではないだろうか。

そうなると BMW X1 との比較がやりたくなってくるが、運悪く X1 は近日マイナーチェンジが実施されるために今比較しても無駄になりそうで、さりとて X2 を急遽試乗して比較する、というのも時間的に間に合わない、という事で取りあえず日記にて UX vs X2 の写真比較というのをやってみたので、興味のある読者は参照されたい。
 ⇒ Lexus UX vs BMW X2 (2019年3月13日日記)

という事で、この勝負は少しお預け‥‥としよう。