Mercedes-AMG GLE 43 (2016/6) 中編

  

前編ではメルセデスベンツの SUV ラインナップについて述べたので、今回はいよいよ試乗車である GLE について、先ずはスペックを纏めるところから始める。前編の一覧表でも GLE についてはベースモデルである GLE 350d を取り上げたが今回の試乗車は AMG GLE43 であり、日本で販売されている GLE では中間モデルに相当する。そして上位モデルはといえば AMG GLE63S であり、この3モデルの価格は 350d:858~964万円、AMG 43:1,150万円、AMG 63S:1740万円となっている。すなわちベースモデルと上位モデルの価格差は2倍もある事になる。

今回の試乗車である AMG GLE 43 は、何と言ってもその "AMG" という名前を聞いただけでバカバカしいくらいのハイパワーモデルを想像するが、まあ詳細は徐々に紐解いていくとして、先に結論を言ってしまえば AMG とは言うもののエンジンは AMG のスペシャルメイドではなくメルセデスの V6 エンジンであり、ブレーキだって AMG ロゴのついたブレンボーのオポーズドキャリパーやドリルドディスクではない等、AMG の記号ともいえるこれらの装備が無い訳で、これに "AMG" の名を冠して良いのかぁ? これじゃ公式なんちゃって AMG じゃないのかぁ? そういうのって本来は AMG Sport とかいうんじゃないのかぁ? と、まあ色々言いたくなるようなモデルだ。

結局天下のメルセデスも時代には勝てなかったのか、BMW でいえば M Performance  というか "3桁の M" というか、まあそんなところだ。とは言え GLE 43 の価格は 1,150万円だから決して安いクルマではないどころか、正しい社会生活を営んでいる市民には絶対に買えないエリアのクルマだ、それでもこの 1,150万円という価格はガチンコライバルである BMW X5 xDrive50i や Porsche Cayenne S とほぼ同じだから世の中金持ちが結構いるし、その金持ちでも GLE 43 クラス、要するに「 1,150万円クラスなら買えるけれど、63S の 1,740万円はチョっと無理だなあ」てな状況も結構あるだろう。

この1,100万円代トリオのエンジンパワーを比べると X5 が多少抜き出ているのはグレード名の ”50ï” という事を考えても GLE の ”43” よりも上なのは何となく分かるし、実際に X5 は他の2車が V6 であるのに対して V8 エンジン搭載であり、その面ではお買い得かもしれない。

それでは我らが日本の誇るプレミアムブランドである Lexus はどうかといえば、サイズ的に近い RX は上位モデルの RX450h (ハイブリッド) でもシステム出力は 299ps であり、GLE 43 の367ps と較べて動力性能ではワンクラス下のクルマであり、GLE ならば前編の一覧表に掲げた 350d (258ps、868万円) と同クラスと考えるべきだ。それでも RX450h は一番高い F Sport でも 742.5万円だが、これはまあ国産のレクサスの方が割安というのは当然で、言ってみれば産地直売価格というところだ。なお RX450h F Sport の米国価格はといえば 57,000ドルで、ガソリンではあるが GLE350 というモデルが53,600ドルだから、米国ではレクサス RX はメルセデス GLE とは同価格帯の車であることが判る。

なおレクサスの場合は価格的には国内価格が 1,110万円と上記3車と同等な LX570 というモデルがあるが、これはサイズ的にはメルセデス GLS と同等だから言ってみれば一つ上のFセグメントとなり、やはり同一に比較するのは無理がある。

ところで米国向け国産プレミアムブランドといえば Lexus と共に日産の "Imfinity" が思い浮かぶが、確かに Imfinity も高級 SUV には力を入れているとはいえこれらは日本国内では販売されていない。日産の場合はトヨタの Lexus のように国内でのブランド展開を行っていない事もあるし、日本では殆ど売れない高級大型 SUV を売る気が無いし必要もないというところだろう。なお米国 Imfinity の高級SUV については場所を新たに取り上げたいとは思っているので、この場ではこれまでにしておく。更に米国向け高級車ブランドといえばホンダの Acura もあるが、こちらも別に機会に取り上げることにする。そして一部の特殊な読者はスバル フォレスターを入れろと騒ぐ‥‥ことは、流石に無いだろう。


写真21
今や高級 SUV の定番となったBMW X5。


写真22
スポーツカー専業メーカーのポルシェが初めてそれ以外に進出したのが SUV のカイエンで、その後パナメーラで高級サルーンのにまで進出した。


写真23
CLE や X5 のライバルであるレクサス RX は SUV の先駆者であり歴史的には最も古い。


写真24
サイズ的にもワンランク上の F セグメントでメルセデス CLS と同クラスとなる。大型オフローダーのランドクルーザーをベースとしている。

それでは今回の主役である GLE について内外装を見ることにするが、既述のように試乗したのは AMG GLE 43 だが、写真撮影は展示車を使用したので AMG GLE 63Sとなっている。この両車の内装の違いがどのくらいかということだが、試乗車の記憶からしてそれ程大幅な違いは無かったようにも思えるし、63S の価格差の多くが豪華装備というよりもハンドメイドに近い AMG エンジンや、AMG では定番の高性能ブレーキシステムなどの走りの部分に予算の多くを使っているとも思える。とはいえその価格差を見れば内装にも違いがあって当然ではあるが、まあ実際に購入しようなんて言う読者は自らディーラーで試すだろうから問題はない。

なおこれら内外装についてはいつものように既に日記でよりサイズの大きい写真を使用して紹介しているので、そちらも参照願いたい。
 ⇒ Mercedes Benz AMG GLE (2016/6/22 からの日記)


写真25
高級 SUV としては定番のスタイルと結構な大きさは迫力充分だ。


写真26
リアゲードのウィンドウはリアクォーターウィンド−と一体にブラックアウトされているのでDピラーの存在を隠している。

正面から眺めてみると、これはもう誰が何と言っても ”ベンツ” 以外には考えれられないというくらいのアイデンティティの凄まじさだ。ただしこの角度では AMG であることが判らないが、まあ AMG 何ていうのは一部の物好きしか知らない訳で、一般ピープルから見ればどれもみんな "ベンツ” だ。

リアだって小さいながらもベンツマークはハッキリと認識できるから、これに追従したクルマは例えヤンキーでも GLE を煽ったりはしないだろう。ベンツのデッカい SUV=かなり危ないオーナー、というところだ。


写真27
誰が何と言っても ”ベンツ” 以外には考えれられないというくらいのアイデンティティ。


写真28
リアだって小さいながらもベンツマークはハッキリと認識できる。

ヘッドライトは走行状況や天候に応じて5つの機能を自動で選択する "インテリジェントライトシステム” で、勿論フル LED方式だ。最近のヘッドライトはいつの間にかLED 方式が増えてきたが、明るさという面ではキセノンの方が優っているようにも感じるし、何より LED の光はスペクトルがチョッと違うようで、どうも違和感を感じるし視認性も良くないようにも感じる。あっ、これ、あくまで感じだけれど‥‥。と思っていたら最近の報道によると、LED 方式の信号機は色覚障害者がより色を認識し辛い事が原因の事故が増えているという事実があるらしい。

リアゲードを開けると、そこに見えるのは Eセグメント SUV らしく流石に広いラッゲージスペースがある。ゲートの開口部も広いしルーフも高くてしかも後端までほぼ平坦だからその積載能力も充分であり、これなら仕事用の納品車だと税務署に対して言い張れそうだ。リアゲードを閉めるには当然ながらゲート下端のスイッチを押すとゲートは電動式で下がっていき、メルセデスではお馴染の閉まる寸前に一旦停止してスーっと静かに閉まりきる‥‥と思ったらば、BMWなどと同様でバタンっと閉まった。う〜ん、メルセデスも年々普通のクルマに向かっているようだ。


写真29
ヘッドライトはフル LED方式で、しかも走行状況や天候に応じて5つの機能を自動で選択する "インテリジェントライトシステム” を採用している。


写真30
Eセグメント SUV らしく流石に広いラッゲージスペース。

ドアを開けて目に入るのはドイツ車らしいインテリアで、シート形状は結構なスポーツシートという形状をしているが、まあこれは下の写真が GLE 63S という高性能モデルであることも理由だ。既述のように写真の GLE 63S というクルマは 1,740万円という尋常ではない価格だから、インテリアの質感が良いのは当たり前だが、実際に試乗したのは1,150万円のGLE 43 ということで、結果的には何だかイカサマ臭い事になってしまったが‥‥。えっ、元々このサイトはインチキ臭いって?

シート表皮を拡大して見ると中々良さそうな本皮で座面両端のサポートもスポーツシートらしく峰が高い。電動シートのポジション調整は一般的なシート側面ではなく、この場所には殆ど何も無い。

写真31
ドイツ車らしいインテリアで、シート形状は結構なスポーツシートという形状をしている。

 


写真32
シート表皮を拡大すると中々良さそうな本皮で座面両端のサポートもスポーツシートらしく峰が高い。


写真33
ポジションの調整は電動式だが、シート側面にはない。

ドアのインナートリムもレザーにステッチの入った表皮のパッドを多用していて、まあこれも1,740万円のクルマとしての高級感はある。とはいっても同価格帯のアルピナB5のような問答無用の豪華でセンスの良い内装に比べればこちらはどうも田舎臭いが、これはバイエルンという都会に本拠地を持つ BMW とド田舎のシュツットガルトに本拠地を持つメルセデスとのセンスの違いであろう。まあ国産車で言えば、横浜みなとみらいの日産と群馬県太田市の○○○みたいなものだろうか。

シートのポジション調整とメモリーはドアトリム上のドアノブの前方にあり、この配置は最近のメルセデスの傾向でもある。シート調整スイッチにしても、ドアノブにしても、その表面仕上も見るからに高品質という感じだが、それを言ったら 500万円のフーガだってこれに近い質感だったりするが、まあそれは気付かなかった事にしよう。そうかぁ、フーガといえば日産だし、ということはみなとみらいセンスということか。えっ、みなとみらいはグローバル本社で、テクニカルセンターは愛甲石田駅から更にバスという伊勢原の山奥だって?


写真34
ドアのインナートリムもレザーにステッチの入った表皮のパッドを多用していてる。


写真35
シートのポジション調整とメモリーはドアトリム上のドアノブの前方にある。

ダッシュボードのレイアウトはドイツ車としては、というかメルセデスとしてはオーソドックスなものだが、SUV ということもありトップパネルの位置が高いからセンタークラスターの高さには余裕がある。そのセンタークラスターの配置も最近の主流である最上部から飛び出したディスプレイとその下にはオーディオ用、そしてエアコン用コントローラーと続いている。このタイプのディスプレイを始めて見た時には何やら社外品を後付している中古車オーナーみたいでイマイチだなぁ、と思ったが確かに視認性は良いから安全上を考えれば良い方法であり、この方式が増えてきた最近では違和感は全く無くなって、寧ろセンタークラスターの低い位置にディスプレイを配置してあると妙に古臭く感じるくらいだ。

センタークラスター上のオーディオ用のコントロールユニットは入力装置としてメルセデスではお馴染の電話と同じテンキー (数字とアルファベット兼用) が付いている。このテンキーを見るといつも思うのだが世の中のテンキーはパソコンや電卓で使用されている下から 1、2,3‥というタイプと、電話に代表される上から1、2,3‥という全く異なる配置が混在しているから、パソコンや電卓を常時業務で使っていると電話番号を押す時につい間違いてしまうことがあり、これは何とかならないものだろうか。

次にセンターコンソールに視線を移すと、ここにあるのは BMW の iDrive に端を発した入力用デバイスと走行モード切り替えスイッチが見えるが、AT セレクターらしきものは無い。メルセデスのオーナーならば直ぐに判るだろうが、最近のメルセデスはCクラスを始めとして ATセレクター はステアリングコラムから生えたマルでワイパースイッチのようなレバーによって行う。これについては走行編にて詳しく紹介する。

写真36
ダッシュボードのレイアウトはメルセデスとしてはオーソドックスなものだ。


写真37
センタークラスターの配置も最近の主流である最上部から飛び出したディスプレイとその下にはオーディオ用、そしてエアコン用コントローラーと続いている。センターコンソールにはAT セレクターらしきものは無い。

写真38
オーディオ用のコントロールユニットはメルセデスではお馴染の電話と同じテンキー (数字とアルファベット兼用) が付いている。

写真39
コンソールにはBMW の iDrive に端を発した入力用デバイスと走行モード切り替えスイッチが見えるが、AT セレクターらしきものは無い。

コンソール後端はお馴染のリア用エアアウトレットだが、その下にはリア用のエアコン調整スイッチまで付いている。しかもBピラーにはリア用のサイドエアアウトレットまで装備されているから、マルで高級サルーンのようだが、まあ価格から言えば別荘地などのショーファードリブンでの使用でもおかしくはない。

最近はエライさんの乗るショーファードリブンの公用車などもミニバンが多くなってきたが、国によっては公用でも当然のように悪路走破を必要とする状況もあるだろうから、そういう場所ではこの手の SUV の公用車は極自然だろう。そういえば20年前に起こったペルーの日本大使館占拠事件の映像には、大使館の駐車場に公用車らしきランクル (80) が写っていたのをみて、成る程ああいう国ではヘビーデューティー4WD を公用車にしているのだ、と納得したのを思い出した。


写真40
コンソール後端のリア用エアアウトレットの下にはリア用のエアコン調整スイッチまで付いている。
しかもBピラーにはリア用のサイドエアアウトレットまで装備されている。

ということで、一番の興味である走行については後編にて。

⇒後編へ