Abarth 124 Spider (2017/2) 前編 その1

  

マツダ ロードスターをベースにしたアバルト 124 の経緯やマツダ ロードスターとのスペックの違については既に ABARTH 124 Spider (2月24日からの日記) にて説明済であり、この試乗記では少し見方を変えて、先ずは米国での ABARTH 124 の商品構成はどうなっているのかを纏めてみる。

実は米国では日本との最大の違いとして ABARTH 124 という単独の車名のクルマは存在せず、FIAT 124 というクルマに3つのグレードがあり、そのスポーツグレードが "ABARTH" である事だ。これは BMW 式に言えば M Sport のようなニュアンスと言えば解りやすい。そしてベースグレードに相当するのが "CLASSICA" であり、ラグジュアリーに相当するのが "LUSSO" (英語で言えば Luxury) となっている。

それではこれら3種類のエンジン、とくに "ABARTH" と "CLASSICA" および "LUSSO" の違いはどうなのだろうか。フィアットブランドとアバルトブランドのイメージの差としては、日本で販売されているフィアット 500 の2気筒0.9L ターボ 85ps に比べて アバルト500 (最近595と名称変更) は4気筒 1.4L ターボ 145ps と大幅なパワーアップが実施されているから、そういうのが日本人のクルマ好きの感覚だろう。ということで調べてみたらば3グレードともに4気筒 1.4L ターボで "ABARTH" が164hp、 "CLASSICA" および "LUSSO" は160hp ‥‥ムムッ?

これってハッキリ言って殆ど変わらないという事だった。確かに販売数量の少ない、しかもマツダからの OEM 供給状態 (エンジン支給とはいえ) では2種類のエンジン設定は無理があるし、マツダにしたってエンジンパワーを押さえたグレードではロードスターと競合してしまう、とかまあ、いろんな事情もあるのだろう。とにかく結論としては米国販売モデルを見る限り動力性能は "ABARTH" でもそれほど変わらないということだった。


写真1
米国向け FIAT124 には上記のように3つのグレードがある。米国では ABARTH は FIAT124 のトップグレードの位置付けで、ABARTH 124 という商品は無い。

次にフィアットの小型オープンスポーツカーとして、以前は日本でもバルケッタというモデルが販売されていたのを覚えているだろうか。そのバルケッタは 1995年に発売され 2005年で生産が終了していて後継車は空白となっている (写真1) 。それで下の表を見ると、バルケッタのサイズやパワーはマツダ ロードスターと殆ど同じだった。初代マツダ ロードスターは1989年であり、これはバルケッタより6年も早く、言ってみればマツダの成功を見て元がとれる!と思って開発したのだろう。しかし結局はマツダに刃が立たずに撤退した‥‥と言うとイタ車ファンが怒るだろうが、まあそういう愛国心の無い人間は幼稚園から教育のし直しだな、勿論「森友幼稚園」で。

ところでフィアットのクルマといえば脳裏に浮かぶのは 500 やパンダのような小型車だろう。しかしフィアットはイタリアでは最大手 (というより他に大きなカーメーカーが無い) の自動車メーカーであり、更に現在は経営不振となった米国大手メーカーであるクライスラーまで傘下に収めているのだから、他にもっと大きな車種も作っているのではないだろうか。ということで調べてみたらば、中々見つからず、やっと最近新型となった TEgea というセダンを見つけた。TEgea のアウターサイズは全長4,500 x 全幅1,780 x 全高1,480mm というから、最近の標準ではCセグメントくらいだろうか。

なーんだ、あるじゃないかと思ったら、何とこのクルマは一部の新興国向けだった。それで次に見つけたのは最近 (といっても2015年だが) 新型に FMC された Tipo で、サイズ的には TEgea より僅かに大きいが寧ろ最近のCセグメントとしては標準的サイズで、しかもセダンのみならず5ドアとステーションワゴンもラインナップされているから、これはフィアットとしては主力車の一つであろう (写真2) 。ということはそれ以上のサイズはフィアットとしてはラインナップされていないのだろうか。尤もフィアットは前述のように米クライスラーを傘下に収めていて、グループを統括する持ち株会社が FCA (Fiat Chrysler Automobiles) というくらいだから、大きなサイズのクルマはクライスラーが担当すればいいだけの話ではあるが‥‥。


写真1
既に生産中止となっているフィアットの小型オープンスポーツカー である Fiat Barchetta。


写真2
フィアットとしては大きな、と言ってもCセグメントの Fiat Tipo Station Wagon。

それでは本題に入って アバルト 124 のエクステリアから眺めてみるが、何時ものように既に2月24日からの日記で写真を紹介しており、こちらの方がサイズは大きいために、ここでは主としてベースとなっているマツダ ロードスターとの比較を行う事にする。

上記の日記でも述べたようにアバルト 124 はボディ外板とエンジンを除くとほぼ共通だが、そこはイタリアンデザインの妙だろうか、一見するとマルで別のクルマに見える。特に写真のアバルトは白いボティーに黒いボンネットでこれが大いに雰囲気を出していたが、ボンネットも白だともう少し雰囲気は違う(写真3~4) 。

そして日記の時はサイドから見た時に 124 の方が低く見えると思ったが、サイドビューを正確に比較すると何やらショルダーラインの下も同じなのかもしれない、と思い始めた (写真5) 。というのは、写真の 124 はサイドのアンダースポイラーがブラックで、これがショルダーラインを低く見せているが、実際には目の錯覚だったように思い始めた。まあそれには他の理由もあるのだが、それは後に説明する。


写真3
一見するとマルで別のクルマに見える両車。


写真4
リアデザインも異なり、こうしてみると成る程それぞれ ABARTH と MAZDA に見える。

写真5
サイドビューで比べると一見124の方がショルダーラインが低く見えるが、これはボディ下端のアンダースポイラーが黒いための錯覚だった。

今度は真正面から比較するが、これも日記の時は 124 が圧倒的にカッコ良く見えたが、今回はロードスターも正確に形状を修正して 124 と極力同じ条件で比較すると、いやいや、どうして、ロードスターだってそんなに悪くは無いじゃないか。とはいえ、やっぱりイタリアンデザインの妙には勝てないし、特にロードスターの細い目 (ヘッドライト) はどうも良い方には向いてないようだ。

それではリヤはといえば、まあこれも両車のデザインは全く異なるが、それでもフロントのように 124 の圧勝という程では無いと感じるが、まあこれは個人の感性の問題だから何とも言えない。


写真6
こうして比べると両車が兄弟関係というのが判る。


写真7
リアも外板以外、すなわちフレームは共通だからサイズ的には同じだ。

大分長くなってきたので、この先はその2にて。

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