Lexus NX 200t & 300h (2014/10) 中編 | |
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今回は事情により最初にハイブリッド車の300hから試乗した。先ずは運転席に座ってみると、その眺めは当然ながらサルーンに比べて高いが、それでもその昔のクロスカントリータイプの本格オフロードカーに比べればそれ程の違和感はないから、サルーンからの乗り換えユーザーでも少し乗れば慣れるだろう。実際に街中を走る中型以上のSUVでも、運転席を見ると結構オバちゃんが多かったりするし、駐車場ではあの図体のデッカイ車体を上手く取り回して駐車枠に入れている姿を結構見かける。考えれてみれば都会に職場のあるサラリーマンの亭主ならば普段は電車通勤であり、クルマを運転する機会からすれば圧倒的に女房殿の方が多いから、むしろ亭主より運転が上手い、なんていう例が結構多いだろう。 試乗車のグレードはF SPORTであり、シートは専用のレザー表皮を纏ったスポーツシートが標準装着されているが、このシートは固い座面にも関わらず体の凸部はしっかりと沈むことで確実に体がホールドされるタイプで、言ってみれば出来の良いドイツ車的なものだから、最近随分進歩した感のある国産車の中でもピカイチの部類だ。まあ、他社の同クラスに比べて数十〜百万円くらい高いレクサスブランドなのだから当然ではあるが。 システムのONはメータークラスターの左端にある丸いボタンを使用するが、この位置はセンタークラスター側から手を入れて操作することになる。そのボタンはブルーに白でPOWER と書かれているのがHVである証のようなもので、このボタンを押すと正面のメーター類に明かりが灯り、中央の対称に配置された大径メーターの右側はFS 260q/h の速度計で左はHV独特のチャージメーターとなる (写真31) 。えっ? 260q/hのメーターなんて日本では意味がないだろう、って? いやねぇ、別に出る出ないの問題でなく、単なるアクセサリーと思えば良いのだよ。そう言えば、100q/h出すと死にそうな恐怖を味わえる君の中古ワゴンRだって140q/hまで目盛りが付いているだろう。それとおんなじさ。と、上から目線で煽ってみる。 ATセレクターは場所も形状も極々オーソドックスなもので、要するにフロアーコンソール上にある多少のジグザグゲートを持った直線式で、Dレンジから横(右)に押すことでマニュアルモードになるという、いわゆるティプトロタイプだ (写真32) 。そして、パーキングブレーキはトヨタらしく足踏み式のプッシュ/プッシュタイプを想像して左足でペダルを探ってみたが‥‥無い。実はコンソール上のATセレクター右にあるBMWやVWと同じ形をした電気式のスイッチとなっていた (写真33) 。 セレクターをDレンジに入れて、パーキングブレーキスイッチを押して解除しブレーキから足を離せば極々弱いクリープがあるが、そこでアクセルを少し踏み込むとHVらしく音もせずに前進し、駐車場の敷地内を公道の前まで進めている時にはいつの間にかエンジンも回転しているのは何時ものとおりだ。公道の前で一時停止してクルマの流れが切れたのを確認して本線に入り、クルマが真っ直ぐになったところでハーフスロットルで加速をしてみると、これまた低速のトルク特性が強力な電気モーターの特性によるHV独特のトルク感を感じるが、決して強力という程ではない。トヨタのHVはプリウスに代表されるようにエコ志向で、ニッサンや BMW のようにシリーズ最強のハイパワーを狙っているモデルとはコンセプトが違うし、そういう意味ではこのNX300hもプリウス的な動力性能だが、レスサスというプレミアムブランドのSUVということを考えれば、本当はもっとパワフルな方が似つかわしい気がする。 |
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写真31 |
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巡航速度に達してからは流れに乗って走ってみると回転計の指針は‥‥おっと、回転計は付いていなかった。しかし、レクサスのF SPORT というのは今までの経験では走行モードをスポーツに切り替えるとそれまでチャージメーターだった左側が回転計に変身する筈で、それならと早速モードを切り替えることにする。モード切り替えスイッチはコンソール上の回転式スイッチで、これは他のレクサス車と共通だからレクサス車の運転経験があれば違和感なく使える。このスイッチは右に回すとSPORTで左はECO、そしてダイヤル自体の頭部を押すとNORMALに戻るというものだ (写真33) 。 SPORTモードに切り替えると予想通りに左のメーターは回転計となり、アクセルレスポンスも向上したからご利益はあるわけだが、巡航回転数は1,500rpmくらいとSPORT モードという割には低めだった (写真34) 。暫く巡航しているうちに前が空いて、これをチャンスとばかりに30q/hくらいまで速度が落ちた状況からフルスロットルを踏んでみる。この時の加速感はやっぱりイマイチだし、回転が上がってガソリンエンジンのパワーが出てきた頃にはモーターのトルクは下降特性に入っていたりして、低速域以上に加速感は良くない。 |
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ということで、今となっては少し時代遅れ的な2.5L エンジンのハイブリッドには見切りを付けて、トヨタ初のダウンサイジングエンジンである4気筒 2.0L ターボエンジンを搭載したNX200t に期待することにしよう。 まず始めに、トヨタの新型エンジンと同クラスの欧州プレミアムブランドのエンジンのスペックを比べてみると、最高出力こそ多少の違いはあるもののトルクについては全て350N・mであり、トヨタのエンジンもスペック的には全く同等ということだ。まあ、今のトヨタの実力からすればスペックとしてはドイツ御三家と同等のエンジンを量産することは特に難しい事でもないだろう。なお今回比較したドイツの3車種のエンジンは何れも最もハイチューニングなモデルであり、実用モデルは基本的には同じエンジンながら過給圧を下げるなどでパワーもトルクも抑えている。トヨタも恐らくバリエーションとしてはもっとパワーを抑えたものも用意するであろうが、NXはSUVだから車両重量が大きいこともあり、最もハイチューンなクラスのエンジンを積んだのだろう。 今回、期待のNX200t 試乗車のグレードは300hと同じくF SPORT で、運転席に座った時の眺めやフィーリングは全くと言って良い程変わらない。エンジンの始動は300hと同じ位置にある丸型のプッシュボタンを使用するが、300hのブルーに対してこちらはブラックで、表示もHVの "POWER" ではなく "START/STOP ENGINE" という違いは当然ある (写真35) 。 エンジンを始動して正面のメーター類が点灯すると、同じF SORT でもこちらはチャージメーターが不要なガソリンエンジン車であることから、最初から左側のメーターは回転計として表示されるが、メーターユニット自体は300hと同じものだろう (写真37) 。そしてコンソール上のATセレクターを始めとする各種スイッチ類なども300hと殆ど同じで、強いて言えば HV なら EV モード切り替えスイッチがある代わりにアイドリングストップキャンセルがある等の違いはある (写真36) 。従って走り出すまでの手順は300hと全く変わらない。 走り出した第一印象はハイブリッドの300hに比べて低速時のトルクが少ないことで、まあこれは静止から最大トルクを発生する電気モーターを使用しているハイブリッド車に比べて不利なのは当然であり、しかも最近は随分改善されたとはいえ排気圧を使ってタービンを回すターボチャージャーでは絶対に遅れが生じる訳で、これも原理的に充分説明がつく。それでもある程度の速度に乗ってしまえば一般道の流れに乗った巡航では全く問題なく、言ってみれば平均的実用車というところだ。 実はこの時のSPORT のマイルドだった原因としては、どうも学習機能が一番穏やかなモードとなっていたらしく、やっぱりレクサスオーナーの運転は大人しく、フルスロットルを踏むユーザーなんていないのかもしれない。 結局、NX300hにしても、NX200t にしても大した動力性能ではないが実用的には充分だろう。それにしても BMW328i やメルセデス C250 どの2.0L ターボとしては高出力で高性能なエンジンと同等のものを搭載している割にはNX200t の動力性能はどうもイマイチと感じたのは何故だろうか? もしかしたらNX200t の重量が重すぎるのかとも考えて調べてみたらば NX200t の車両重量は 1,710sで、これはBMW328i の 1,560sよりも150sも重く、やはり同じクラスのメルセデス製エンジンを積んだスカイライン200GT‐t の1,650sと比べても60s重いから、まあそんなものとも感じるが、それでも60sしか違わないスカイラインと比べると、やっぱり加速感に乏しいのだが? 本当にスペック通りのパワーが出ているんだろうか?? |
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写真39 |
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動力性能重視とは縁遠い筈のSUV と考えれば、まあ特に不満はでない程度の動力性能ではあるが、プレミアムクラスのSUV と考えればもう少しハイパワーモデルを追加しても良いような気はするが、こんな気持にさせるのはポルシェ カイエン ターボみたいなモノがこの世に存在したことで、我々の感覚が狂ってしまったのかもしれない。 |