このように何となく地に足がつかない走行感とともにステアリングの中心付近の遊びは少ないがこれまたリニア感が無いというか、出来の悪いスポーツモデルによくある特性で、まあハッキリ言ってチューニング不足という感じだから、もう少しセッティングを煮詰めれば改善されるとは思うのだが。
何やら良いこと無しのような操舵感だが、旋回特性自体はSUVであることを考慮すれば決して悪くは無い。見かけの割にはアンダーステアも少なめだし、高い視点の割にはロールも感じないし、それでいて出来の悪いSUVによくある大した速度でもないのに短足で転倒の恐怖を感じる、なんていう事も無い。
という訳で、動力性能も操舵性能もイマイチで試乗したNX 300h F SPORT 2WD (FF) の556万円という価格を考えれば、まあ買いたいと思うならどうぞご勝手に、なあんて言いたいくらいだったが、さて300hよりも60万円以上も安くて、最新の2Lターボエンジン、欧州で流行りのいわゆるダウンサイジングエンジンを搭載した200t に俄然期待が掛かるわけだ。200t の動力性能についてはまあ許せる範囲だったから、これで操舵性がマズマズならば決して悪い車ではないということになる。ただし、今回の200tの試乗車は4WD、というかトヨタでは最近の風習に従ってAWD と表記しているが、要するにFFに対して車両価格は26万高いためにNX 200t F SOORT AWD の価格は518万円となり、先に試乗した300h F SPORT FF との価格差は38万円まで縮まっている。
それで実際の走りだが、こちらのタイヤはF SPORT に標準の235/55R18が装着されていたこととAWD であることから条件は大分異なっているが、最初に広い国道を巡航しただけでも300h より安定感があるというか、300h で感じた妙な不安感が大分少なかったように思えた。とは言っても、SUV とは思えないような安定感、という程のモノでもない。200t のAWD は走行状況によってフロントの配分が100〜50%まで電子制御で変化するから、穏やかな巡航では恐らくほとんどFF(フロント100%)に近い状況であろうから、AWD であるから直ちに直線性に優れているとは言えないが、それでもFFよりはマシだろうし実際にもそう感じる。
200hの試乗車のタイヤは300hがオプション装着していた225/60R18 に対して少しは幅広で扁平な235/55R18 という標準サイズだったこともあり、これらが相まって中心付近の不感帯でのフィーリングなどの操舵感も300hよりは良いように感じた。しかし、感じた何て決して断定していないことでも判るように、誰が乗っても一発で違いが判るほどかというと、それ程でもないのが辛いところだ。
カタログによればNXのAWDは「すぐれたコーナリング性能を実現するダイナミックトルクコントロールAWD」ということで「旋回時にはステアリング操舵量からドライバーの意図するターゲットラインを予測して最適なトルク配分を行い、機敏で安定したコーナリングを実現します。」と謳われているが、実際のコーナーリングはといえば、実は今回の試乗では本格的なワインディング路なんていうものは無く、途中のチョットしたコーナーとか広い交差点を右左折するときに速度を速めにして曲がったくらいだが、確かにFF だった300hよりはニュートラルに近いが、これまたそれ程大騒ぎする程のモノでも無さそうだ。
ただし、雨天などでは大いに威力を発揮するかもしれないし、少なくともFF よりは走りは良いようだから、FF に対する26万円の投資は決して損は無さそうだが、まあこれも各自の好みと考え方次第とはいえ、はっきり言ってしまえばSUV というのはオールマイティな踏破性が売りだからAWD が当たり前であり、FF のSUV (しかもプレミアムブランドのレクサスで) を買うっていう考えが理解できない。
結局走ると曲がるでは価格の安い200tの方が好結果だったが、それでは止まるはどうだろうか? 300hはHVだからトヨタの場合はブレーキにフルエレキのブレーキバイワイヤ方式を採用しているはずで、念の為にエンジンルーム内のブレーキマスターシリンダー付近を見てみると、確かに一般的なバキュームブースターは無く、マスターシリンダ−の形状もチョイと違うから、これは正しくフルエレキだろう(写真45右側)。
次に200h のエンジンルーム内のブレーキマスターを見ると、これは一般的なモノで黒い鍋のような形状のバキュームブースターも見えるから、これはオーソドックスなブレーキシステムだ (写真45左) 。因みにカタログを見ると300h は "電子制御ブレーキ[EBD]" の欄に標準装着のマークが付いているから、これは間違いない。なおホイール内のキャリパーやディスクローターは共通のようで、カタログでも双方ともフロント: Φ328mmベンチレーテッドディスク、リア:Φ281mmディクスと表記されている。そしてブレーキの効きはといえばBMWと同じような軽くて少し踏んだだけで喰い付くように効くタイプで、これには個人の好き嫌いはあるが軽くて良く効くのは間違いない。因みにレクサス各車はブレーキパッドにBMW と全く同じドイツのメーカーのロースチールと呼ばれるタイプを使用しているが、これは効きは抜群だがダストが多いからホイールは1周間で真っ黒になるし、ローターの減りも早い (ローター攻撃性が強い) など、メリットもデメリットも欧州車そのままとなっている。
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