BMW ACTIVE HYBRID 3 & 5 (2013/7) 前編

  

プリウスが世界初の量産ハイブリッド車(HV)として発売されたのは1997年12月だから、既に15年以上も経過したことになるが、当時HVは電気自動車(EV)へ移行するまでの暫定的な方式と思われていた。しかし、 EV用のバッテリーの開発は思うように進まず、結局15年以上経ったいまではむしろHVが主流になった感さえある。そして、BMWでさえもHVをラインナップするなどとは、正直言って15年前には想像すらしていなかった。

BMWのハイブリッド車の日本国内販売は3シリーズのActive Hybrid 3が昨年の7月に、5シリーズのActive Hybrid 5はそれより少し早い3月だった。ということは、Active Hybrid3の発売から既に1年が経過していてチョッと白け気味だが、今回やっと取り上げる気になったので紹介しよう。というのは、新しいレクサスISもハイブリッドのIS300hが全体の7割というから、この手のプレミアムクラスでのハイブリッドというのも捨てたもんじゃあない、ということで、それではBMWのハイブリッドってどんなもんなの?ということもあった。なお、ISと時期を同じくしてアコードも新型となり、国内ではハイブリッドモデルのみを販売するが、アコードの場合は正直いってISとはクラスが違うのは言うまでもなく、アコードのライバルはアウターサイズ的に近いクラウンでもなく、やはりカムリということになる。

実はBMWのHVとしては7シリーズベースのActive Hybrid 7が2010年に発売されているが、7シリーズというのは多くが法人登録であり個人ユーザーが自腹で買う例は少ないであろうとうことで、特に取り上げてはいなかった。そこで今回は7シリーズに比べてより一般的な3および5シリーズHV車(とはいえ、これも充分に高価だが)に試乗してみた。まずは3、5シリーズのHVと代表的なガソリンおよびディーゼル車の諸元比較から始めることにする。

表を見るとActive Hybrid 3と5ではパワートレインが全く同じであり、さらに電気式モーターを取っ払ったエンジン部分は535iとも同じであることが判る。要するにハイブリッドといっても、元々高性能モデルである335i (現在国内販売なし)や535i に更に電気モーターのアシストを加えたより高性能なモデルであり、日本車のハイブリッドのように燃費を第一にしている訳では無さそうだ。表を見れば燃費ではディーゼルの320dのほうが良い結果となっていて、経済性を重視するならば320dが正解ということになってしまう。しかも、価格差は230万円もある! これは5シリーズでも同様で523dの燃費は16.6q/LでActive Hybrid 5の13.6q/Lよりも勝っている。

ハイブリッドによる重量増は1,820sの535iにモーターやバッテリーを追加したActive Hybrid5が1,960sだから、その差は140sであり、これが重いか軽いかを判断するために米国ではライバルであろうインフィニティM35h(フーガ ハイブリッド:1,840kg)とM37(フーガ 370GT:1,720kg)の差を調べれば、120kgだからハイブリッド化による重量増加はActive Hybrid 5と大して変わらない。そして、フーガのモーターは68psだから、BMWと比べて電気系の容量も似たようなものだ。なお両車とも小型軽量のリチュウムイオン電池を採用しているから、この面での違いも無さそうで、結局両車とも妥当なところか。 なお、米国での価格(MSRP)はActive Hybrid5が61,400ドルからに対してM35hは54,750ドルであり、日本ほどではないがBMWは結構な高値だった。

今回の試乗は3シリーズのActive Hybrid 3と5シリーズのActive Hybrid 5を一気に実施した。そこで車両の紹介として、先ずはActive Hybrid3から始める。

外観上はガソリンもしくはディーゼルの3シリーズとひと目で分かるような違いは見当たらなかった。現行3シリーズの場合は、ベースグレードの他にMODERN / LUXURY / SPORTという3種類のデザインラインがあり、エンジンの違いよりもむしろ、このデザインラインの違いで外観上が多少異なるため、デザインラインが同一ならばハイブリッドモデルも直ぐに見分けがつかない。


写真1
この角度で比べるとハイブリッドモデルの特徴は殆ど判らない。


写真2
リアも殆ど同じだが、ハイブリッドモデルはベースがエンジンが6気筒ターボのため、排気管が同じエンジンを積む335i に準じて左右から出ている。

それではエクステリアで明らかにハイブリッドモデルと判別できる部分はといえば、Cピラー側面とリアトランクリッド後端にある"Active Hybrid 3"のエンブレムとなる(写真3)。トランクリッドにエンブレムを付けるというのは多くのクルマが実施しているから当然として、Cピラーにデッカいエンブレムを堂々と貼り付ける(写真4)のはあまり美しいとはいえないが、まあこれは各自の趣味に任せよう。

ハイブリッドといえば、パワートレインと共に気になるのがリアのラッゲージスペースであり、一般的に大型のバッテリーをリアシートバックレストとトランクスペースの間に置くことから、トランクスペースは極端に奥行きがない場合が多く、リアシートを倒してトランクスルーなんていうのは夢のまた夢、なんていう状況だが、Active Hybrid3に関してはなんと、ガソリン(とディーゼル)エンジンモデルとほとんど変わらないスペースがある(写真5)し、トランクスルーすら可能だ(写真6)。


写真3
トランクリッド後端には他の3シリーズと同様に車種を表すエンブレムがある。


写真4
更にハイブリッド車にはCピラーに”ActiveHybrid3”のエンブレムが追加されている。


写真5
トランク内のスペースはハイブリッドにも関わらずガソリン&ディーゼル車と同等のスペースを持っている。


写真6
ハイブリッドでもトランクスルーが可能なのは立派で、これはハイブリッドの経験ではダントツのトヨタ製のレクサスIS並だ。

ドアを開けてインテリアを見ると、やはりハイブリッド独特のものは見当たらない。試乗車はオプションのレザーインテリアを装備していたから、3シリーズとしては高級過ぎる(?)くらいだが(写真7)、勿論320iだって同じデザインラインとオプションを選べば、写真と同様になる。

ここで床面に目を移すと、乗り口にあたるドア・シル・プレート(サイドスカットルプレート)には"Active Hybrid 3"のゴロがある。今まではこの場所にデザインライン、すなわち"BMW Sport"`や"BMW Modern"というロゴがあったのだが、ハイブリッドに限っては異なっているようで、やっとハイブリッド独特の部分を発見!といっても機能上は全く関係ない内容だが(写真8)。

写真7
試乗車はオプションのレザーシートが装着されていたが、特にハイブリッドとしての違いはやはり見当たらない。


写真8
ドア・シル・プレートは本来デザインラインが表記される(写真右)が、ハイブリッドの場合のみ"Active Hybrid 3"となる(写真左)。

次にインパネに目を移すと、まあここまでの状況から想像は出来たが、やはりハイブリッド独特の部分は無くて、写真で比べてもどちらがハイブリッドか全く判別がつかないくらいだ(写真9)。そして、勿論センタークラスターにあるオーディオとエアコンの操作パネルも同じだし、更にはセンターコンソール上のiDriveのコマンドダイヤルとその周辺のスイッチ類までも同じだった。ただし、ディスプレイに移る画像は当然ながらハイブリッド独特の部分があるが、まあそれはソフトウェアでどうにでも対応できるから、要するに別部品にすると金のかかるハードウェアについては完全に共通化して、内部のメモリーに記憶される制御コードのみを変えることで対応している訳だ。これは、世界一ハイブリッド車の生産台数が多いであろうトヨタでさえも、ハイブリッド専用車種ではないクラウンやレクサスIS,GSなどでは、ハイブリッド独特の操作機構などは無く、如何にもハイブリッド車という操作はプリウス等のハイブリッド専用車に限られている。

写真9
この写真ではグレードの表記がなければ区別がつかないくらいにインパネも共通となっている。


写真10
iDriveのダイヤルと周辺のスイッチなどは完全に共通となっている。


写真11
センタークラスターのオーディオとエアコンも同じ。

結局、ActiveHybrid 3とガソリン&ディーゼルの3シリーズのエクステリア&インテリアを比較しても、デザインラインが同じならば殆ど同じ、という結果だった。それでは5シリーズの場合はどうかといえば、実はこれまた同じなので特に比較はしない‥‥‥という訳にもいかないので、5シリーズの比較は中編にて。

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