ABARTH 695 EDIZIONE MASERATI (2013/5) 前編 | |
|
|
前回試乗したアバルト500には、同じ1.4Lターボエンジンを更にチューンナップした695というモデルがあり、その695の特別仕様としてMASERATIの名を冠した世界限定499台、日本向けは限定100台の695 EDIZIONE MASERATI(以下695 MASEと記す)が販売されている。そこで、500に引き続いて今回はこの希少モデルの試乗記をお届けする。 このクルマについて、多くの読者が内容的にどんなものかを知らないと思うので、先ずはフィアット500、アバルト500と比較して695 MASEの性能がどうなのかを調べてみる。 アバルト500が本来は1.2L自然吸気(69ps)か精々0.9Lターボ(85ps)を搭載しているAセグメントハッチバック、要するに日本の軽自動車より幾分大きい車格とエンジンのクルマに1.4Lターボ(135ps)を乗せた500に対して、695 MASEは同じ1.4Lターボながら更に加給圧を上げて180ps、すなわち500の135psに対して3割アップであり、これによりパワーウェイトレシオは500の8.2から6.4kg/psまで向上している。 695MASEは性能ばかりではなく内容的にも500より高級化されていて、しかもキャンパストップのカブリオレとなっている。その為に価格もABARTH500の269万円から499万円と概ね2倍となっていて、軽自動車に毛の生えた大きさのフィアット500ベースで500万円という価格も凄いが、これでもかと高級装備を装着されているから、内容からすれば決して高くはない‥‥な〜んて思うのは、カーマニアの中でもその極一部のイタ車ファンの、そのまた極々一部のアバルトファンということになる。因みに499万円という価格は、国産ならばクラウン 3.5アスリートS(497万円)が買えてしまうし、2.5アスリート(357万円)ならば、お釣りでマーチが買えてしまう。更にはあと26万円出せばクラウンとともにスイフト スポーツ(通称スイスポ)も買えてしまい、何と日本の誇る高級セダンのクラウン、それもアスリートとBセグメントのスポーツハッチであるスイスポ(しかもMT)という、理想の2台体制が実現してしまう。 |
|
|
|
695MASEと500の外観上の違いは意外にもそれ程多くない。言い換えれば695MASEのエクステリアは結構大人しい、というか派手なエアロ等の特別なパーツは一切付いていないから、フロント側から比較すれば一般人(いわゆるパンピー)からはちょっと見での区別は付かない(写真3)。そして、リアはといえば、これも殆ど違いはないがよく見れば695MASEのリアウィンドウが小さいのが判る。理由は、このクルマが標準でキャンバストップ仕様、要するにカブリオレモデルだったからだ。カブリオレの場合はアバルト500の269万円に対して500Cが339万円だから何と70万円も高い訳で、695MASEにも70万円分が付いていると思えば、500と695MASEの実質的な価格差は大分縮まることになる。 とはいえ、「俺はキャンバストップなんていらねぇから、その分値段を下げろ!」なんていうユーザーからすれば、やっぱり無意味に高いことになってしまう。その前にイタリー製のキャンパストップなんて聞いただけで経年変化を考えれば恐ろしいものがあるが。(写真9)。 さて、そのキャンバストップだが、カブリオレという割には開くのはルーフのみでサイドはフレームが残っているから、本当の意味でのフルオープンではなく、悪く言えば巨大なサンルーフだが、それでも開放感は充分であり、サンルーフとは世界が違う感覚を味わえる。まあ、考えて見ればオープンといてっても多くのユーザーはサイドウィンドウを上げたままで、本当にフルオープンで走行している例は極々少ないから、695MASEの方式でも実際には全く問題ないのだった。 |
|
|
|
|
|
|
|
他には何か特徴はないのかと考えてみれば、普通は性能の違いを表現するには排気管で差別化する例が多いので、早速排気管の部分に視線を移動したら、ハイ正解! 500が左右各1本の2本出しであるのに対して、695MASEは片側2本出しで左右合計では4本出しとなっていた。ただし、この4本出しは良く見いと判らないような控えめな形状をしている(写真7)。 エクステリアで他に695MASEを主張する物といえばエンブレムであり、リアと両サイドに専用のエンブレムが付いている(写真8)。そして、リアにはもうひとつ大きな違いが有り、実は695MASEがキャンバストップであるためにリアゲートが付けられないことから、500とは異なり単独のトランクを持っていることだ(写真9)。 |
|
|
|
|
|
|
|
今度はドアを開けてみると、500が如何にもイタリアンという感じの黒/赤の内装が目を引いたのに比べて、アイボリー/黒という上品な色(写真10)であり、更に標準の本革シートの質も見るからに高級そうなのは、このシート表皮が例のポルトローナフラウ社製であるからで、これをみても695MASEが単なるホットモデルではない事が判るだろう(写真11)。そして、ドアフレーム下端のサイドスカットルプレートは、これまたMASERATIのロゴも見える実にデザインの良いもので、今まで見たこの手のプレートでもピカ一の高級感とセンスの良さを感じる(写真12)。 なお、ドアのインナートリムについては基本的には500と同じで色のみが異る程度だった 。 |
|
|
|
|
|
|
|
インパネは基本部分は500と共通だが、一見して違いを感じるのは695Maseのステアリングホイールが一部にアイボリーを使用した2トーンであることから、たったこれだけでも見た感じが随分と異る。また、500が3ペダルのMTであるのに比べて695Maseはセミオートなことから、ペダルやシフトレバーなどが異なっている。 センタークラスターのオーディオとエアコンは両車とも全く同じものが使用されている(写真15、16)。それ以外で大きく異るのはインテリアトリムで、500のピアノブラックに対してカーボンファイバー(風?)となっている(写真17)。500の場合はピカピカのピアノブラックが目立ったが、その違いが一見すると695Maseのインテリアと随分違うように見える原因となっている。 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
室内を見て感じるのはフラウ社のレザーを使った上質な室内が、Aセグメントという日本の軽に毛が生えた程度の、欧州で言えば一番小さい(そして安い)カテゴリーで実施されているとで、小さくて高級、という面ではこれに勝るクルマはチョッと思いあたらない。 そして、ハイパワーで特別なアバルト500を更に上回るチューニングによる走りも大いに気になるところだが、この続きは後編にて。 |