PORSCHE 981 CAYMAN (2013/5) 前編 | |
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ポルシェが911を完全に一新して997から991となったのが2011年末(2012年モデル)であり、それに続いて半年遅れでボクスターが987から981となり、それから約1年遅れで今回ケイマンが新型となった。ご存知のようにケイマンはボクスターのクーべ版であり、言ってみればボクスターに金属製のルーフを付けたような構造だから、ウエストラインから下やインテイアなどはボクスターと共通となっている。 しかも、ボクスターは911と半分以上の部品を共有しているわけで、このサイトでもカレラS 、ボクスターS、そしてカレラ4という順番で試乗しており、インテリアについては其々詳しく紹介してきたこともあり、今回は旧ケイマン(987)および現行ボクスターとの違いを主とすることで、重複を避けることにする。実際に、コンソールやセンタークラスターなどは911も含めて事実上全て同じだし、コクピットに座ってみれば911は5連メーター、ボクスターは3連メーターという大きな違いを除けば、これまた殆ど同じフィーリングだし、ケイマンに至っては天井や後方を見なければボクスターと区別が付かないくらいだ。 前置きはこのくらいにして、早速一覧表をみてみよう。今回はボクスターとケイマンの現行モデルを比較する。
先ず気が付くのはボクスターとケイマン、ボクスターSとケイマンSの型式がそれぞれ同じであるということで、型式認証ではケイマンはボクスターの派生車である、ということだ。全長はケイマンが5o長いがこれは事実上同じだし、全幅は完全に同じ、そして全高はソフトトップのボクスターが屋根の厚みが無いことから15o低いが、これも内部から見れば同じとなる。ホイールベースが等しいのは当然としても、トレッドも同じだからシャーシーも同一とうことだ。車両重量はオープンのボクスターがクローズドクーペのケイマンよりも10kg軽い。普通は補強を必要とするオープンの方がクローズドクーペより重くなるのが常識で、たとえば911の場合ならカレラ(PDK)が1,430kgであるのに対して911カブリオレ(PDK)は1,500kgと70kgも重い。この理由はボクスターは最初からオープンモデルとして設計されているので効率よく高剛性を得られるのに対して、911は本来がクローズドクーペとして設計されたものを補強してオープンモデルとしたためだ。 実を言うと、ここでボクスターとケイマンの骨格図を比較して見ようと思ったのだが、残念ながらボクスターについては資料が見つからずケイマンのみが入手できたので、下記に添付しておく。これを見ると、アルミや高張力鋼を随所に使うという随分凝った作りになっていて、冷間圧延鋼、要するに普通の鉄板は殆ど使われていないのに驚くが、3.4Lスポーツで1,400sを切るくらいの車両重量を実現できているのはちゃあんと理由があったわけだ。因みにフェアレディ ロードスターはMTで1,550sだから、ボクスターS(MT)の1,360sよりも190sも重いことになる。 ![]() エンジンに関してはベースモデルもSもそれぞれケイマンが10psほど上回っているが、実際には同じエンジンであり、この程度の差別化をする意味が判らないが、ヒエラルキーとしてケイマン>ボクスターとするためだろうか。そして、0-100km/hもケイマンがそれぞれ丁度0.1秒勝っているのもわざとらしい。 それでは新旧ケイマンのエクステリア比較から初めてみる。なお、今回比較するのは981が「素の」ケイマンであるのに対して、987はケイマンSでしかもオプションのエアロやらウィング、そして過激なタイヤ&ホイールなどを装着しているので、新型は随分とハンディがあるのだが、写真1~2を見ると、新型の高級感はハッキリ認識できる。本来ポルシェというのは初代911(901)以来、高性能スポーツカーとしては何となく垢抜けないというか、背が高くてカッコ悪いものだったが、今回はポルシェらしくないというか、一見するとフェラーリ?と勘違いするくらいだった。まあ、真っ赤なボディカラーということもあるが、少なくとも987は絶対にフェラーリには見えないから、新型のポルシェらしく無いカッコ良さは大いなる魅力がある。とはいえ、人によっては例によって「こんなのポルシェじゃない、俺の青春を返せ!」というセリフが出ることもあるだろう。こういうのは、生粋のボルシェ乗りか、単に知ったかぶりの中坊(実は中年だったりするが)という両極端の場合で、やはり普通の感覚では新型のエクステリアに魅力を感じるのではないか。最良のポルシェは最新のポルシェの言葉に間違いはない。 |
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ポルシェは先々代の986/996の時代から911とボクスターのフロントセクションをほぼ共通としているが、フロントエンドのバンパーとヘッドライトの形状を変えることで差別化してきた。ただし、初代のモデルである986/996の初期モデルでは例の涙目といわれるヘッドライトまで共通化したために、911とボクスターの区別がつきにくかったから、特に911のオーナーからは評判が悪かった。これに懲りたのだろう、987/997ではヘッドライト形状を別にして、(ポルシェに精通していれば)一見して区別出来るようになったとさ。めでたし、めでたし。 このようなフロントバンパーでの差別化はポルシェのみではなく、世界中のカーメーカーが採用している方式で、その理由はといえば比較的イニシャルコストの安い樹脂用金型を別にすれば事が済むからであり、これがボディの形状を変えるなんていうとプレス型の新設が必要となるし、何よりも構造材の変更だから設計や耐久試験を再度必要とし、簡単には実現できないのだろう。ついでに言うと、樹脂型でもインパネなどは形状が複雑で、表面は柔らかい弾性樹脂などを使い形状も複雑だから極力共通化するし、MCでの大幅変更も普通はやらない。ということでケイマンとボクスターもフロントバンパーのデザインを変えて差別化している。 サイドから比較しても、新型のスタイルの良さがよく判るが、その前にホイールベースが延長されていることによる見かけの違いというのも大きい。 そしてドアにまでおよぶリアフェンダーのエアーインテイクからのラインが新型の特徴として多いに目立っているが、これがフェラーリ的に見える一つの要素でも有り、この部分だけからば911よりも迫力があるくらいだ。そしてボクスターとはウエストラインより下が全く同じであることが判る。 次にリアーゲートを開けると、奥行きは寧ろ新型の方が狭いくらいで、その分深さを増して容積を確保している。新型の奥行きが狭い原因はホイールベースの延長によるリアオーバーハングの減少だろう。 |
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リアのエンブレムは991と同様にこれまでは無かった”PORSSCHE”のロゴが、それも結構大きく付いていて、その下の”Cayman”は小さい(写真8)。また911やボクスター同様に今回からはサイドミラーが電動で畳めるという機能がやっと備わった。ドアを開けるためにドアハンドルを握ると、ノブが案外チャチなことを感じる。ポルシェのドアハンドルは少なくとも水冷化された986/996以来は伝統的に決して立派ではなく、ケイマンの価格ならば問題ないが、これが2000万円級の911の上級モデルだと、ちょいと頼りない。 そしてドアを開けて、室内を見回す前にドアのヒンジを観察すれば、BMWと同様でスチール製の立派なモノがボディ側に溶接されていた(写真11)。人によっては国産車のプレス品だって車両の剛性からすれば変わらない、何て言っている例もあるが、それならば何故レクサスの最上級車種であるLSは、ドイツ車のようなドアヒンジを付けているのか、ということになる。 |
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ドアを開けて見えるインテリアは。これまたルーフを見なければボクスターと全く区別が付かない程に同一となっている。シートに付いても共通だが、下の写真では両車ともオプションのシートが装着されていて、今回試乗したケイマンはエレクトリックコントロールスポーツシートと、更にシートベンチレーションも追加されていたために、シート表皮はセンターがレザーで通気穴が開いていた(写真13)。なお、ボクスター/ケイマンの標準シートは中央部がアルカンターラとなっているのは先代(987)と同様で、調整もバックレストのみ電動で上下と前後は手動であることも変わらない。それにしても、以前から911の標準シートは中央がレザーで、ボクスター/ケイマンはアルカンターラという差別化をしているが、アルカンターラは高級素材であるし、サポートの良さを考えれば本皮に勝るのだが、人工皮革=廉価版という考えなのだろうか。 ドアのインナートリムもボクスターと共通で、試乗車の場合はアームレスト部にステッチの入ったレザーを使用していたが、これは恐らくオプションだろう。ポルシェの場合は車種と年代、そしてイヤーモデルによって一部に標準でレザーを使っていたり、いなかったりと中々複雑で、購入の際にはディーラーマンに問い合わせるしか無いというのが実情だ。まあ、本来のポルシェはフルオーダ−が原則であり、注文時にはA3版の細かい表に仕様を書き込むようになっているから問題はないのだが、日本人の多くは早く欲しいということで見込み発注のクルマを買うから、そうなると細かい仕様は成り行きだったりして、納車されてからアームレストが樹脂製だった、どうしてくれる、なんてことにも成りかねない。因みに、先代(987)ではドアのアームレストはベースモデルが樹脂製でSがレザーとなっていた。 |
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インパネについても、当然ながらボクスターと共通であり、これまた写真のアングルによっては区別がつかない。そしてセンタークラスターのナビとエアコンの操作パネルはボクスターどころか911とも共通となっている。ただし、エアコンについてはボスクスター/ケイマンの場合はマニュアルが標準となるが、今まで試乗したり見てきたものは全てオプションのフルオートエアコンが付いていた。 |
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兄弟車であるボクスターが約一年前から発売されているから、ケイマンがおよそどうなるかは想像が出来たわけだが、それにしても現車を見ると想像以上に高級化していて、これが600万円代で買えるのが不思議なくらいだ。 そして肝心の走りについては後編にて。 |