TOYOTA CROWN 3.5 Athlete (2013/2) 前編 | |
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昨年末にクラウンがFMCを実施したが、この新型クラウンについては発売直後に速報版として2.5ロイヤルサルーンに試乗した。そして、今回は本命としてアスリートシリーズから3.5アスリートGという最上級モデルに試乗してみた。 クラウンにはオーソドックスなロイヤル系とスポーティーなアスリート系があるが、アスリートというグレード名が初めて付いたのは7代目クラウン(S120、1983-1987年)のMC(1985)からだったと思う。その後もアスリートはグレード名として途絶えたり復活したりという状況だったが、11代目(S170、1999-2003年)からは正式にロイヤルシリーズとアスリートシリーズとなった。このシリーズ化は通称ゼロクラウンと呼ばれた12代目(S180、2003-2008年)でも同様で、以後今回の14代目(S210)まで両シリーズが準備されている。 なおアスリートシリーズという呼び名は長いので、本試乗記ではアスリート系と表記する。その、アスリート系には2.5Lと3.5Lがラインナップされているが、ロイヤル系には3.5Lが無くて2.5L(と、ハイブリッド)のみとなる。アスリート系のグレードはベース(ナビがない)のアスリート(2.5:357万円 3.5:設定なし)、中間グレードのアスリート S(2.5:413万円 3.5:497万円)、そして豪華装備(主にレザーシート)のアスリート G(2.5:490万円 3.5:575万円)の3グレードとなる。 今回試乗したのは3.5アスリート Gにバックソナーなどのオプションを付けまくり、ボディーカラーは特別色のホワイトパールのために3.7万円増し、更にはモデリスタのエアロパーツやマフラーカッターなど28万円まで装着していたので、車両価格は633万円となり、税金や諸経費を含めた乗り出し価格は何と687万円となる! なお、ロイヤルシリーズはロイヤル、ロイヤルサルーン、ロイヤルサルーンGというグレード展開で、要するに単にロイヤルといった場合はロイヤルシリーズなのか、ロイヤルというベースグレードなのかがハッキリしない。なにやらややこしいが、まあロイヤルでもロイヤルサルーンでも、呼び方は個人の好きにすれば良いだろう。 |
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ここで今回の新型と先代のクラウンのスペックを比較してみる。 ![]() 今回はFMCとはいうもののプラットフォームはキャリーオーバーされているので、当然ながらホイールベースは同一であり、アウターサイズもほぼ変化はないが、トレッドは新型が10oほど広かっている。これは足回りについて多少の改良をしたのだろうか? エンジンについても2.5Lおよび3.5Lとも新旧全く同じで、型式も性能も同一となっている。ただし、3.5Lのトランスミッションについては6ATから8ATへと変更されているのが大きな違いで、3.5Lと8ATの組み合わせは同じエンジンを搭載しているレクサスGS350でも未だ搭載されていないもので、何故か格下のクラウンが先行採用されている。 今回のFMCは、言ってみればビッグマイナーとも言える程度のものだから、エクステリアもフロントのスピンドルグリル以外は大きく目立つ変化はない。ただし、ボディーには強いプレスラインはなく、滑らかというかのっぺりとしている。そのスピンドルグリルも実車を見ると写真ほどにはアグレッシブではなく、特にロイヤルに関しては殆ど違和感がない。そしてアスリートにしてみても、ちょっと慣れれば問題なく受け入れられそうに思うが、どんなものだろうか。リアからみるとアスリートの排気管は左右各1本出しで、合計2本となっているのに対して、ロイヤルは排気管をバンパー内から下に向けることで、外から排気管が見えないようにしている。 |
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上記ではアスリートは外観上ロイヤルと大きく違わないと述べてきたが、実は良く見れば両車のフトントフェンダーは全く違うプレス型を使用している、要するに形状が異るの部分がある。文章で説明するとややこしくなるが、写真6を参照すればアスリートは峰の角がハッキリしているのに対して、ロイヤルは丸みを帯びているのがわかると思う。また、よくよく見ればボンネットフードのプレスも異なっている。それにしても、販売数量の期待できないアスリートのために、こんな大物のプレス型を別立てとするのは、トヨタの余裕かこだわりか? エクステリアで"ATHLETE"のエンブレムはといえばリアのトランクリッド後端のみとなる(写真10)。 また、アスリートとはいえクラウンのシリーズの一つだから、Cピラーには王冠のエンブレムがついている(写真7)。王冠といえば、フロントグリルにも立派なクラウン(王冠)マークが付いてるのを忘れていたが、あまりにも当たり前で気が付かなかったくらいだ。 ヘッドライトはアスリート系の全グレードにバイキセノンヘッドランプが標準装備されている(写真8)。またLEDフォグランプもアスリートの全グレードに標準装備となるなど、ライト類は充実している。なお、アスリートGには、前方車両に当たる部分だけを自動的に遮光し、ハイビームを保持したままで走行できるアダプティブハイビームシステムと、夜間のコーナーリング時にタイヤの切れ角・速度に応じてロービームの照射軸を移動させるインテリジェントAFSが標準装着されている。 |
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アスリートの内装はブラックを基調としているが、ファブリックシート装着車の場合にはシート表皮中央とドアインナートリムの一部に、えんじ色を使ったテラロッサという内装も選択できる(写真11)。そして、シート表皮はトップグレードのアスリートGがレザーで、それ以外はファブリック(写真12)となる。レザーシートは、座面と背もたれの中央部には細かい通気穴があいている(写真13)。シートの調整はベースモデルも含めて電動で、クラウンには手動調整の設定が無い(写真14)。 ドアのインナートリムについては、肘の当たる部分はウレタンの入ったレザー(人工皮革か?)が使われているが、これまたベースグレードから採用されている(写真15)。 |
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インパネはクルマの樹脂部品の中でも大きな部類であり、しかもウレタンを配合して弾性を持たせるなどをすると、ますます金型設計は難しくない、要するにイニシャルコストが高い部品のために、シリーズ毎に別の金型を用意する、なんてことは無理な相談だ。そこでクラウンの場合はといえば主流であるロイヤル系に合わせるわけで、結局アスリートという名前にしてはやたらに幅を広くして豪華に見せるセンタークラスターでも判るように、ロイヤルと共用というよりも、流用といった方が現実に合っている(写真16)。 そのセンタークラスターはといえば、最上部にナビのディスプレイを配置しているが、このディスプレイはレクサスが欧州車風の横長を採用しているのに対して、クラウンは従来型の比率を採用しているから、横長のように2分割で使うなどという器用なことが出来ない情弱オヤジからもクレームがないように配慮している(写真17)。そして、ナビのディスプレイの下にはもう一つのディスプレイが配置されていて、これはエアコンの操作を始め各種の設定用に使用する。BMWもレクサスも各種の設定はナビ用のディスプレイをパソコンのマウスのような方法で切り替えて使用するために、IT落ちこぼれオヤジには使いづらいが、クラウンはその辺をしっかりと対策している。 アスリートはオーナーカーを想定しているのでリアの装備は質素で、リア用のエアアウトレットもフロントセンターソールの後端を利用した一般的なもので、リアから温度設定などを調整することは出来ない。これが、ロイヤルシリーズの場合はオプションでリアエアコンが装備できる(ロイヤルを除くロイヤルサルーンのみ)。 |
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内装をみれば確かに日本の高級車クラウンだけあって、ダッシュパネルはレザー貼りでステッチが入っている(写真20)など高級感は充分だが、何しろベースがコテコテの演歌調高級車であるロイヤルだから、それを元にしたアスリートは何とか演歌調を隠すのに必死になってシート表皮やドアのインナートリムをスポーティーに見えるように努力はしているが、骨格になる大物樹脂部品は同じ物を使用するから、基本的には演歌調配置であり、この辺がアスリートの辛いところだ。 ということは、内外装に関してはアスリートと言えどもロイヤルに毛が生えた程度で、決定的な差別化は出来ない状況だから、これが嫌ならば150万円程のエクストラコストを払ってレクサスGSを買うことになるが、まあそれは走ってみての結果から考えることにしよう。 ということで、この続きは後編にて。 |