LEXUS GS 250 (2012/2) 前編


 

先ごろFMCされたレクサス GSは、日本国内では初代と2代目まではアリストと命名されてトヨタブランドで売られていた。初代アリスト(S140系、写真1)は1991年に発売され、93年からは北米でレクサス GSとして発売された。発売当時の価格は380万円(3.0V)〜518万円(4.0 Zi‐Four)であり、20年前としては高価なクルマだった。内容的には型式から判るように、クラウン マジェスタ(S140系)をベースとしたもので、言ってみれば北米クラウンだった。

2代目は1997年に発売されたS160系(写真2)で、ベースはこれもクラウン(S150系)だった。価格は356万円(S300)〜449万円(V300ベルテックスエディション)で、3Lツインターボ(280ps)を搭載したV300の動力性能はマニアというよりも、いわゆるヤンキー系に人気があり、中古車はシャコタン、フルスモーク、そして爆裂マフラーというあまり嬉しくないイメージがついてしまった。

そして、2005年のレクサスチャンネル国内展開で3代目アリストは国内でもレクサスGSとなった。因みに米国レクサスブランド車と国内トヨタ車の関係は、LS=セルシオ、GS=アリスト、ES=ウィンダム、IS=アルテッツアという具合で、価格もトヨタ車としての発売だからレクサスブランドよりも数十万円以上安かった。トヨタとしてはトヨタブランド時代とは別のクルマであることをアピールしたいようだが、これはチョッと無理がある。何より笑えるのは、トヨタ時代のウィンダムのTVCFで「レクサスES、日本名ウィンダム」なんていうのをやっていたが、あの時点では米レクサスと同じクルマであることをアピールしていたから、今更否定してもねぇ。

特にGSの場合はアリストとは別物である事を強調して、ヤンキー車の直系である事実を隠したいようで、言ってみれば今でこそトップアイドルだが、無名時代にアダルトビデオに出演していたり、風俗店で働いていたのを必死で隠す芸能プロダクションのようなものだ。
 


写真1
初代アリスト(S140、1991〜1997)。
北米では1993年より発売された。
 

 


写真2
2代目アリスト(S160、1997〜2005)。
この2代目までは国内ではトヨタブランドだった。
写真のクルマはゴールドのレクサスマークがついているが、これが噂の”なんちゃってレクサス”だ。
 

 

次に今回の新型がどのように変わったのかを先代と比べて見る。今回試乗したGS250は以前は設定の無かった2.5Lモデルであり、その意味でも興味があるが、言い換えれば先代には2.5Lが存在しないので比較は3.5Lで行うことにする。また、参考にトヨタブランドで今まではGSの兄弟だったクラウン アスリートと米国でもレクサスのライバルであるニッサンのインフィニティブランドから車格的に真っ向ライバルとなるM、すなわち日本ではフーガと呼ばれているモデルとも比較してみる。

    Lexus Lexus Toyota Nissan
      GS250 (旧)GS350 Crown 2.5 Athlete Fuga 250GT
 

車両型式

  DBA-GRL11 DBA-GRS191 DBA-GRS200 DBA-Y51

寸法重量乗車定員

全長(m)

4.850 4.870 4.945

全幅(m)

1.840 1.820 1.795 1.845

全高(m)

1.445 1.425 1.470 1.500

ホイールベース(m)

2.850 2.900

駆動方式

FR
 

最小回転半径(m)

  5.3 5.2 5.6

車両重量(kg)

  1,640 1,650 1,610 1,700

乗車定員(

  5

エンジン・トランスミッション

エンジン型式

  4GR-FSE 2GR-FSE 4GR-FSE VQ25HR

エンジン種類

  V6 DOHC

総排気量(cm3)

2,499 3,456 2,499 2,495
 

最高出力(ps/rpm)

215/6,400 315/6,400 203/6,400 225/6,400

最大トルク(kg・m/rpm)

26.5/3,800 38.4/4,800 24.8/4,800 26.3/4,800

トランスミッション

6AT 7AT
 

燃料消費率(km/L)(10・15モード)

11.6 10.0 12.4 12.2
 

パワーウェイトレシオ(kg/ps)

7.6 5.2 7.9 7.6

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ダブルウィッシュボーン

マルチリンク

タイヤ寸法

  225/50R17 225/45R18 245/50R18
 

ブレーキ

前/後

Vディスク/Vディスク

価格

日本国内価格

510.0万円 552.0万円 425.0万円 427.4万円
 

備考

350:580万円 2.5L設定なし 3.5:487万円 370:457.8万円

表から判るのは新型GSは全長とホイールベースは先代と同じで、全高のみが20mm高くなっていることだ。しかも先代はBピーラー以降、後席付近のルーフをクーペのように 低くしていたから、見かけはともかく実用性では大いに疑問のある構成だったが、今回は真っ当なセダンとしてのプロポーションとなった。ユーザーの中にはスポーティは4ドアクーペ的なフォルムを惜しむだろうか、セダンとしての真っ当さからいえば勿論新型本来の姿だろう。

ところで、ライバルであるニッサン フーガと比べると、買い得感では圧倒的にフーガとなる。何しろ2.5Lで80万円もの価格差があるのだから、逆に日本では競合することはないであろう。そういう意味ではフーガのライバルはクラウンとなり、それではGSは誰が買うんだ?となっていまう。ただし、先代までのGS (S19#)は”S”というクラウンと共通の型式を使っていたが、今回は”L”というGS専用(L1#)となったことは、クラウンの派生車の立場から脱却したのだろうか?

それでは早速本題に入って、新型(L10系)と先代(S190系)の実車を比べてみることにする。フロントの最大の違いは、今後のレクサスのアイデンティティとなるスピンドルグリルだろう(写真4)。これについても賛否両論色々あるが、メルセデスやBMWは別格としても、アウディのシングルフレームグリルくらいの認識度は持ちたいも のだ。アウディがあのグリルを始めたのは、A4では2004年の先代(B7系)からだし、A6では2005年の先代(C6系)からだから精々数年くらいの歴史なわけで、レクサスも数年以上続けて、次期モデルでも同様なグリルとすれば結構認識されるのではないだろうか。また、リアについても、アリスト時代からの特徴であった丸 目4灯のテールランプも廃止されて、他のレクサスモデルと共通イメージの横長となった。また、排気管は最近のトヨタの上級車に見られる横に長いディフューザーとなった(写真5)。
 


写真3
斜め後方から比べると殆ど共通点が無いように思える。定番の4つ目のテールライトも廃止された。
 


写真4
新型はスピンドルグリルを採用し、4灯も廃止したので全く別物となった。
 


写真5
テールライト以外では排気管が丸から横長のディフューザーとなった。
 

写真 6
数字上は新旧の全長、ホイールベース共に同一寸法で全高のみ新型が20mm高い。それと共に先代のクーペのようなルーフラインが、新型ではオーソドックなセダンに近づいたことで、リアの居住性は大きく向上している。
 

フロントライトはポジションランプがLED化されているが、LEDヘッドライトは一部の車種以外はオプションとなる(写真7)。またリアのテールランプは当然ながらLEDのようだ(写真8)。

次にトランクリッドを開けてみると、先代よりも多少は奥行きが広がったように見えるスペースだが、先代だって恐らくゴルフバック4個は積めるはずで、GSクラスの法人ユーザーは経営者自ら が運転して、親会社の担当者(資材のヒラか班長、頑張って係長)を乗せた平日接待ゴルフというのが重要な任務だから、これが積めないと中小企業の社長さん達には絶対に売れない ことになる(写真9)。
 


写真7
ヘッドライトは一部車種でLED方式が採用されているが、250の標準はディスチャージライトとなる。ただし、ポジションライトはLED化されている。
 

 


写真8
テールライトも当然ながらLEDとなっている。
 

 


写真9
トランクスペースは先代に比べて多少奥行きが深くなったように見える。また、開口部もより広くなっている。
 

ところで、今回の試乗車は新規に設定された2.5Lを選んでみた。新型GSのグレード展開は各排気量に対して、それぞれベースグレード、”I package”、”F SPORT”、”versionL”の4種類となり、価格は以下のとおりである。それにしても、”00”や”50”など10万円単位の切りの良い数字が並んでいる。
 
  (Base grede) "i package" "F sport" "versionL″
GS250 510万円 550万円 590万円 600万円
GS350 580万円 620万円 680万円 670万円
  GS350(AWD) 620万円 660万円 700万円 710万円
  GS450h 700万円 740万円 800万円 790万円

それでは、これらのグレードがベースグレードに対して何が違うのかについて、主な部分を記してみる。
最大の相違点はシートであって、表皮はベースグレードがファブリック(写真11-1)であるのに対して、”I package”は本皮(写真11-2)、”versionL”はセミアニリン本皮となる。これが”F SPORT”の場合はアクセントの入ったファブリックでサイドサポートのしっかりした、いわゆるスポーツシートとなる。なお、以下の写真で紹介するのは試乗したベースグレードとショールームに展示してあった”I package”で、その他の2グレードの紹介は別途機会を見つけて取り上げる事にする。

ドアを開けた第一印象としては、ベースグレードの場合はブラック基調の内装がオーソドックスというか無難な雰囲気だが、他にアイボリーも選択でき(写真10‐1) 、これだと大分イメージが変わるだろう。これが”I package”となると本皮シートが目に付くし、写真のクルマはサドルタンという少し明るいブラウン系だから、ブラックの ベースグレードである試乗車とは雰囲気が大いに違って見える(写真10‐2)。ベースグレードのシート表皮は毛足の短いスエード調で、一見アルカンターラかとも思うような質感だが、この手の表皮は経年変化や手荒い使い方で表面が禿げてくる心配があるし、個人的にはトヨタがスポーツファブリックと呼んでいる欧州調の粗い織り目の、如何にもファブリックというのが好きだが、まあ、このグレードは高級車的なスエード調の方が好まれるかもしれない。なお、シート調整は両グレードとも電動式でポジションも2つ分のメモリーを持っている(写真1 1、12)。
 

写真 10-1
ベースグレードはファブリックシートが標準となる。

写真 10-2
”I package”になるとシート表皮が本皮となるのが最大の相違点だ。  


写真11-1
ベースグレードのファブリックシートはスエード調で、いかにもトヨタっぽい。
 

 


写真11-2
”I package”に標準の本皮シート。カラーは何種類から選べる。
 

 


写真12-1
ベースグレードでもメモリー付きの電動調整が標準装備されている。

 


写真12-2
”I package”のシート調整はベースグレードと同じ。サイドスカットルプレートには”LEXUS”のロゴが入っているのはプレミアムブランドのお約束。
 

 

インパネのデザインは水平基調となり、最上部のディスプレイは横長というBMW的なものになっている。先代のトヨタ臭さ丸出しのインパネから打って変わって BMW 5シリーズ的雰囲気となった訳で、エクステリアで はEクラスそっくりのフ ロントをから、オリジナリティを持たせた分だけ、インテリアデザインはちょいと失敬したのか? 先代では全体的に如何にもトヨタ的だったが、今回はやっと抜け出したようだ。特にセンタークラスターは、先代が視線移動が必要な低い位置にディスプレイやオーディオ&エアコンのコントロール類を配置していたが、今回は運転中の視認性や安全性も考慮されたのだろう。

センタークラスターにはオーディオ部としてCDの挿入用スロットと最小限の操作ボタンのみがあり、チョッと細かい調整はディスプレイを使用して行う (写真15)。ディスプレイを使った調整での入力装置はコンソール上にあるマウスのようなリモートタッチと呼ばれる装置で行う(写真16)。これは言ってみればBMWのiDriveに端を発する新世代の入力装置のトヨタ版である。ところで、ディスプレイが今回から横長となったが、これは 幅方向を左右に分割して使うという使いこなしを覚えないと、事実上小さい画面と同じになってしまう。BMWの横長も、世間では使い物にならない旨の意見が横行しているが、それって単に使い方が悪いだけだと思うのだが(写真18)。

オーナメントパネル(BMWで言うところのインテリアトリム)はベースグレードの場合は写真16の ゼニスブラックのみだが、上級グレードでは縞杢、バンブー、ウォールナットから選択できる。このパネルは底部および端部にシルバーの縁取りがあるが、これは5シリーズ(F10)の手法であるの が、インパネデザインとともにBMWチックに見える原因だろうか (写真17)。 そして今度はインパネ天部に目を移すと、何とレザー仕上げでステッチまで入っているではないか(写真19)。試乗車はGS250のベースグレードだが、カタログで調べたらインパネは標準でソフトレザー仕上げが設定されていた。試しに指で触ってみたらば中に柔らかい緩衝材が入っているようで、かなりソフトなパッドになっていた 。
 

写真13-1
インパネはセンタークラスターを縦長とした先代とは異なり、水平を主としたBMW5シリーズに似たデザインとなった。

   

  

写真13-2
”I package”もベースモデルと大きく違うことはない。だだし、インテリアカラーの明るさでイメージは随分異なる。

  


写真14
新型のオーディオ操作パネルはCD用スロットと音量調整など最小限必要なもののみで、それ以外の調整はディスプレイとリモートタッチ(写真17)で行う。この部分については先代のトヨタ丸出しのセンスから グローバル基準へと大いに進歩した。
 


写真15
エアコンパネルの詳細を見たい場合は画面クリックで拡大画面を見て欲しい。
 

 


写真17
ウッドパネルは底部および端部にシルバーの縁取りがあるが、これはBMW5シリーズ(F10)とソックリだ。

 

 

 


写真16
リモートタッチと呼ばれるマウスのような入力装置。
 

   


写真18
ディスプレイは横長で最上部にあるために視線移動が少ないが、ハッキリ言ってBMWっぽい。
 

 


写真19
インパネ上部は全グレードにソフトレザー仕上げが施されている。

 

ドアのインナートリムはこのクラスの高級車としてはオーソドックスで違和感が無い(写真20)。実はこれも先代のトヨタ臭いデザインや素材から抜け出している。尤も、先代の方が豪華だったと嘆くユーザーも存在するのは間違いない。まあ、この辺は趣味の問題だから何とも言えないが、少なくとも5シリーズやEクラスがGSよりも売れている米国の現状をみれば、新型GSの方が喜ばれると思うのだが。

ドアのインナートリムは、アームレスト周辺の実際に腕などが触れる部分にはインパネ天部同様に全グレードでソフトレザー仕上げてなっていて、しっかりとステッチも入っている。この構造と基本的なデザインはリアドアでも同様となっている(写真23)。そのリアにはフロントコンソールの後端にリア用のエアコンアウトレットがある(写真24)が、リア専用の温度調整が出来るのは、最上グレードの”VersionL”(ベースグレードより90万高い)のみとなっている。まあ、ショーファードリブンでもなければ必要ない機能だから、オーナードライバーは普通買わないグレードだ。
 


写真20-1
ドアーインナーパネルは高級車としてオーソドックスな構成となっている。写真はベースグレード。
 

 

写真2 0-2
インテリアカラーの違いで印象が異なるが、基本的にはベースグレードと共通の”I package”だ。ただし、上部のウッドトリムの材質は当然異なる。
 

 


写真21
ベースグレードでもアームレスト近くで肘があたる部分にはインパネと同様にソフトレザー仕上げとなっている。
 

 


写真22
アームレストに組み込まれたパワーウィンドウスイッチやドアロックスイッチ類はオーソドックスなものだ。先端にはミラーの調整スイッチがある。
 

 


写真23
基本的にフロントと殆ど同じデザインのリアドアインナーパネル。
 

 


写真24
フロントコンソールの後端はリア用のエアコンアウトレットがある。写真で手前に写っているのは、リアセンターアームレストの先端部分。
 

 

以上室内を見渡してみたが、次はいよいよ走り出すことにする。  

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