BMW X3 xDrive 28i (2011/7) 前編


BMW X3がフルモデルチェンジされた。BMWのSUVは現在、X1、X3、X5、X6という4種類だが、このなかでX6はちょっと毛色が違うので、それ以外の代表グレードを比べてみたのが、下の表だ。

    ① BMW ② BMW ③ BMW BMW
      X3 xDrive 28i X3 xDrive 35i X5 xDrive 35i X1 xDrive 25i
 

車両型式

  CBA-WX30 DVA-WX35 ABA-ZV30S ABA-VL25

寸法重量乗車定員

全長(m)

4.650 4.680 4.470

全幅(m)

1,880 1.930 1.800

全高(m)

1,675 1.775 1.545

ホイールベース(m)

2.810 2.930 2,760

駆動方式

4WD
 

最小回転半径(m)

  5.7 5.7 6.4 5.9

車両重量(kg)

  1,850 1,900 2,170 1,710

乗車定員(

  5

エンジン・トランスミッション

エンジン型式

  N52B30A N55B30A N52B30A

エンジン種類

  I6 DOHC I6 DOHC TURBO I6 DOHC

総排気量(cm3)

2,996 2,979 2,996
 

最高出力(ps/rpm)

258/6,600 306/5,800 218/6,100

最大トルク(kg・m/rpm)

31.6/3,000 40.8/5,000 28.6/3,500

トランスミッション

8AT 6AT
 

燃料消費率(km/L)
(10・15モード)

10.6 12.0 8.4 9.9
 

パワーウェイトレシオ(kg/ps)

7.2 6.2 7.1 7.8

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ストラット ダブルウィシュボーン ストラット

5リンク インテグラルアーム 5リンク

タイヤ寸法

  245/50R18 Fr:245/45R19
Rr:275/40R19
255/55R18 225/55R17

ブレーキ

前/後 Vディスク/Vディスク

価格

車両価格

598.0万円 694.0万円 798.0万円 480.0万円

備考

    xDrive 50i:
1045万円
sDrive 18i:
363万円

このX3は従来からX5との差別化が完全ではなく、そんな状況で低価格で買い得のX1が発売され、益々X3の存在意義が薄れてきそうだったが、今回のFMCで上手い具合にX5>X3>X1という階層ができたようだ。その理由として、価格とエンジン出力をみてみると、
  X1 sDrive 18i 353万円 150ps
  X1 xDrive 25i 480万円 218ps
  X3 xDrive 28i 588万円 258ps
  X3 xDrive 35i 694万円 306ps
  X5 xDrive 35i 798万円 306ps
  X5 xDrive 50i 1045万円 407ps
となり、X5のV8上級モデルを別格とすると、X1からX5までの車格と排気量(パワー)別の価格差は、おおよそ100万円刻みとなっているのが判る。なかでも、X1 xDrive 25iとX3 xDrive 28iは全く同じ型式のエンジンであり、同じ排気量にも関わらずチューニングで差を付けている。恐らく、エンジン原価は殆ど同じだろう。 BMWも結構こういう商売が上手いというのか、セコイというのか。ポルシェも同様だが、真面目の塊みたいなドイツ人も、実は結構上手い商売をしていて、経営のためなら多少の胡散臭いことも平気でやる面もあるように思うが、どんな物だろうか?
 


写真2
BMWのSUVラインナップのベースを受け持つX1。”1”という割には1シリーズというよりも3シリーズに近い。
 

 


写真2
こちらは上級SUVのX5。

 

エクステリアはキープコンセプトだが、先代(E83)X3の安っぽさは解消されている。更にアウターサイズは 全長4,650×全幅1,880×全高1,675mmで、これは先代に比べて、長さで+65mm、幅で+25、ホイールベースで+35mmと確実に大きくなっていることもあり、先代よりも見た目は立派になっている。特に全長が65mm長くなったこと もあり、ラッゲージスペースが先代に比べて奥行きが深く、十分なスペースが確保されている (写真7〜8)。

大きく立派で安っぽさも無くなったことで、弟分のX1に負けそうだった先代に対して、やっと一クラス上の内容となり、前述したように X5>X3>X1というヒエラルキーが完成したことになる。
 


写真3
フロントグリルは誰が見てもBMW。

 


写真4
先代(E83)は素材色バンパーなど、何となく安っぽいエクステリアだった。
 

 


写真5
リアも先代からのキープコンセプトで、テールランプの形状も基本的に先代から踏襲している。
 

 


写真6
先代X3のリアは新型のベースになっているのが判る。

 


写真7
新型のリアラッゲージスペースは結構広い。右の先代と比べればハッキリ判る程に違いがある。
 

 


写真8
新型に比べれば、特に奥行き方向で明らかに狭い先代のラッゲージスペース。

 

室内の基本的な雰囲気は3シリーズに準じている。今回写真で紹介するX3は、展示車がアイボリーの内装色にハイラインパッケージ装着によるレザーシート&インテリア 、試乗車は標準のブラック内装にファブリックシートで、どちらも28iだった。

最初に展示車であるHi-Lineパッケージのドアを開けてみると、アイボリーのレザーインテリアということも手伝って、室内はBMWの上級車(5シリーズ以上)に近い雰囲気を持っている (写真9)。ダッシュボードやセンタークラスターのデザインもBMWらしいが、写真のように内装が 明るい色だと特に華やかだが、これが一般的なブラックの内装だと、もっと地味で印象が違ってしまうことになる 、何て考えながら標準インテリアの試乗車のドアを開けると、う〜ん、やっぱり地味だ(写真12)。

シート表皮は例によって標準グレードが織目の粗いファブリックで、ハイラインはシボのハッキリした厚めの革を使うという御馴染みのBMWスタイルで、この国産車とは一線を画する雰囲気に浸りたくてBMWを買う、とうユーザーも多いだろう。見栄えではハイラインに敵わない標準モデルではあるが、シートの調整はフルパワーだし二人分のメモリーも備えているから、夫婦間で共用する場合などは重宝する(写真13)。このシートメモリーという機能は、ドライバーが常に一人の場合は全く不要だが、複数で使用する場合には、交代するたびのシート調整がメモリーがないとベストポジションを探すのが面倒で、いつも中途半端な位置で運転することに相成る 、という場合が多い。

なお、これも他のBMW車とも共通している事実だが、ハイラインパッケージ装着車の場合は、シートのみならず、ドアのインナートリムにもレザーを使用しステッチも見えるから、これは中々高級感がある(写真14)。
 

写真 9
ハイラインパッケージによるレザーインテリアとアイボリーという明るいカラーの室内は、5シリーズ並みの高級感がある。


写真10
例によって分厚いレザー表皮のシートが装着されているハイラインパッケージ装着車。
 

 


写真12
シート表皮などがファブリックとなり、色がブラック系となっているので、同じクルマでも大分印象が変わる標準仕様の室内。
 

 


写真11
こちらは標準グレードに標準装備されるファブリックシートの表皮。
 

   


写真13
標準仕様でもフルパワーシートとメモリーが付いている。
 

 


写真14
ハイラインパッケージでは、ドアのインナートリムにもレザーを使用して、ステッチも入っているから、高級感も満足感も充分に備えている。
 

 

インパネのデザインも基本的には他のBMW車と共通だし、特に車格が同じ3シリーズと似ているが、良くみれば着座位置が高いし室内高自体も高いから、それに伴って床からダッシュボード天板までの距離もある。
オーディオのコントロールパネルは5シリーズと共通となっているが、エアコンのコントロールは3シリーズに近い構成となっている(写真17〜19)。

ところで、3シリーズのオーディオというのは音質的にイマイチであり、その点では5シリーズの音質は3シリーズを遥かに超えている。X3のオーディオユニットの外観が5シリーズと同じであることから、もしかすると音質も3シリーズより上かもしれない。と、気が付いたのは、この試乗記を整理している最中で、試乗時には気付かなかった ために、残念ながら音質はチェックしていない。
 

写真15
3シリーズと共通な雰囲気はあるが、背が高いボディのために、センタークラスタも高さがある。


写真16
ライトスイッチもBMWに共通なもの。
 

 


写真17
オーディオは5シリーズと、エアコンは3シリーズと共通のパネルを使用している。
 

 


写真18
X3と同一の3シリーズのエアコンユニット。

 


写真19
X3のオーディオユニットは外観から見る限り5シリーズと同じようだ。
 

 

室内も一通り見回したので、これからエンジンを始動して走り出すことになるが、この先は後編にて。  

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