VOLVO S60 DRIVe & T6 SE (2011/4)前編


ボルボと聞いて思い浮かべるのは、走るレンガと呼ばれた四角四面のボディや、サルーンよりもワゴンのイメージが強いだろう。しかし、今回試乗したS60のボディは四角くはないし、ワゴンでもない。実はボルボのサルーンというのは決して珍しいものではなく、以前からワゴンとセダンは両方ともラインナップされていた。
今回試乗したS60はボルボのミドルクラスセダンで、初代は2001年に2代目V70(ワゴン)をベースとしたセダンとして発売された。その後、主力であるV70は2007年にフルモデルチェンジ(FMC)されたが、言ってみればマイナーモデルのS60は、旧型がそのまま販売されていた。そして今回 、S60も2011年の3月にV70よりも4年も遅れてのFMCとなった。

NewS60は今現在では、最近流行のダウンサイジングによる新型1.6Lターボエンジンを搭載する”DRIVe”(375万円)と、V70やXC60でも搭載されている3.0LターボエンジンのT6が設定されている。またT6 には標準モデルであるT6 SE(519万円)と、派手な装いのスポーツモデルであるT6 R−DESIGN(579万円)の2モデルがラインナップされている。
これでボルボはワゴンのV70、SUVのXC60、そしてセダンのS60というラインナップが揃ったことになる。ただし、V70についてはボルボによれば、XC60やS60よりも1クラス上ということになっていて、60クラスのワゴンは近々V60として発売されることになっている。そこで、現行の3モデルを以下の表で比較してみる。

    Volvo Volvo Volvo Volvo Volvo
      S60 T6
AWD SE
XC60 T6
AWD SE
V70 T6 AWD
R-DESIGN
S60 DRIVe V70 DRIVe
 

車両型式

  CBA-FB6304T CBA-DB6304TXC CBA-BB6304TW CBA-FB8416T  DBA-BB4164TW

寸法重量乗車定員

全長(m)

4.630 4.625 4.825 4.630 4.825

全幅(m)

1.845 1.890 1.845 1.890

全高(m)

1.480 1.715 1.545 1.485 1.545

ホイールベース(m)

2.775 2.775 2.815 2.775 2.815

駆動方式

4WD FF
 

最小回転半径(m)

  5.8 5.8 6.0 5.5

車両重量(kg)

  1,770 1,930 1,910 1,540 1,660

乗車定員(

  5

エンジン・トランスミッション

エンジン型式

  B6304T B4164T

エンジン種類

  I6 DOHC Turbo I4 DOHC Turbo

総排気量(cm3)

2,953 1,595
 

最高出力(ps/rpm)

304/5,600 180/5,700

最大トルク(kgm/rpm)

44.9/2,100
-4,200
24.5/1,600
-5,000

トランスミッション

  6AT 6DCT
 

 燃料消費率(km/L)
(10・15/JC08モード走行)

8.9/8.5 9.1/9.0 9.7/9.1 12.6/11.4 12.2/12.0
 

パワーウェイトレシオ(kg/ps)

5.8 6.3 6.3 9.1 9.2

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ストラット

マルチリンク

ブレーキ方式

前/後 ディスク/ディスク
 

タイヤ寸法

  255/45R17 235/60R18 245/405R18 235/45R17 205/60R15

価格

車両価格

519.0万円 609.0万円 699.0万円 375.0万円 449.0万円

備考

HDD NAVI 標準

HDD NAVI 未装着

まずは3LターボのT6を比べてみると、エンジンは性能・スペックまで全く同じ。それで車両価格はといえば
  S60:519万円、 XC60:609万円、 V70:699万円
となり、S60とV70では180万円の価格差がある。まあボルボに言わせれば、V70は車格がワンランク上だと言いたいのだろうが、ホイールベースが40mm長いのは判るが、それにしても高すぎないか。もっとも、V70の場合はT6にSEを設定せず、R−DESIGNのみということもあるが・・・・。
実はV70 T6の場合、FMCされた2007年時点ではT6 TEというグレード名で750万円で売っていて、さらに2009年1月のマイナーチェンジでは何と795万円に値上げされた。795万円のワゴンといえばメルセデスE300ワゴン(765万円)よりも高いという設定で、全く何を考えているのだろうか。
それを考えれば、今回のS60 T6SEの519万円というのは、まあ妥当な価格と言えそうだ。

次に新設計の1.6Lターボエンジンを搭載するのはS60もV70も何れもDRIVeというグレードで、価格はS60の375万円に対してV70の449万円と、その差は74万円。T6程ではないが、やはりV70は上級車種といいたいのだろう。 XC60には今現在では1.6Lターボを搭載したモデルは発売されていない。
 


写真1
先代S60のベースとなった2代目V70(1999〜2006年)。
 

 


写真2
2代目V70のセダンバージョンだった、初代S60(2001〜2010年)。
 

 


写真3
V70ベースのSUVであるXC60。
 

 


写真4
3代目V70(2007年〜)

 

S60のフロントデザインは基本的にXC60を元にしているが、XC60は背の高いSUVのためにボンネット位置が高く、その違いがS60とのイメージを多少変えている。 S60のサイドビューを見れば判るように、ウエストラインを極端にキックアップさせたウェッジシェイプで、走るレンガ当時のボルボとはあまりにもイメージが違う。なお、写真の試乗車はボディの下から100mm程にクロームシルバーのプロテクターのような部品が付いているが、これはオプションの スタイリングパッケージを装着しているためだが、はっきり言ってセンスも品も良くない。
ところで、最近のボルボは、ディーラー展示車も試乗車もボディカラーはホワイトかブラックが多い、というよりもそれしか見たことがない。聞くところによると下取りの関係もあり、殆どのユーザーが白と黒しか選ばないのだとか。
 


写真5
ボディ下部にシルバーの光物が多いのはオプションのスタイリングパッケージのためだが、決してセンスは良くない。
 

 


写真6
この角度から見ると、ボルボであることが全く判らない。
 

 


写真7
XC60を更にアグレッシブにしたフロントビュー。
 

 


写真8
テールランプも先代とは全く異なる。

 

写真 9
サイドから見ると極端なウェッジシェイプとクーペのようなルーフラインがよく判る。
 

S60は、T6にデュアルキセノンヘッドライトが標準装備となり、DRIVeの場合はオプションのナビゲーションパッケージに含まれている。リアに回って、トランクスペースを確認すると、幅方向にタイヤハウスやトランクリッドのリンクカバーなどが出っ張っていて、以外にもスペースが狭い。
ボルボといえば実用性が第一だったのは走るレンガの頃であって、今やクーペのようなスタイルになってしまった最新のボルボは、昔の面影が全く無くなってしまったようだ。
 


写真10
T6に標準のデュアルキセノンヘッドライト。
 

 


写真11
ラッゲージスペースは幅方向が狭く、このクラスとしては決して広くない。
 

 

S60の標準シートは1.6LターボのDRIVeはサイドが人口皮革(T-Tec)で座面がファブリックだが、ディーラーの展示車も試乗車も全てがオプションのレザーシートが装着されていた。また3.0LターボのT6にはレザーシートが標準で装着されている。このレザー表皮は、サイドサポートの部分がなめした平らな革で、座面とバックレストなど実際に 体を支える部分には目の粗いシボのついた皮が使われていて、この大きなシボが独特の雰囲気をもたらしているのに加えて、シートの形状も実に立派で見かけが良いから、ドアを開けた瞬間に、ふーん、成る程、北欧テイストだわい、と関心することになる。ただし、座ってみると見かけほどにはサポートは良くなくて、座面は滑りやすい傾向にあるし、バックレストのサイドサポートも見た目程 には良くない。なお、シート調整はレザーシートがメモリー付のフルパワーとなる。
 

写真12
レザーシートの表皮や形状は高級そうだし、北欧高級家具の雰囲気は・・・・まあ、あるようだ。


写真13
座面のレザーは目が粗くてはっきりしたシボが特徴的で、見た目の良さに大いに貢献している。
 

 


写真14
レザーシートの場合はメモリー付きパワーシートとなる。DRIVeに標準のテキスタイルのコンビシートは手動となるが、在庫のあるディーラーは少ないようだ。
 

 

ダッシュボードの眺めは、特に北欧テイストとは感じずに、ドイツ車との共通点もある(写真15)が、フローティング式のセンタークラスターに人間をイメージしたエアコン調整スイッチがある(写真16)ところは、まさしく最近のボルボとい う感じだ。ボルボはつい最近までナビに対する対応を全く怠っていたが、2009年に発売されたXC60からは、やっとナビが付く場所が確保された。
S60で感心するのはBピラーにリア用のエアコンアウトレットが仕込まれていることで、このクラスでは他に見たことがない。XC60ではリアラッゲージルームのサイドウィンドウにもエアアウトレットがあったところをみると、これは夏季の冷房用というよりも、寒い北国での冬季の窓ガラスの結露防止の意味もなるような気がする(写真18)。
今回試乗した1.6TのDRIVeにはレザーパッケージが装着されていたために、内装を見る限りでは3.0TのT6 SEとの区別は全く付かなかった。本当は標準のDRIVeについても、写真で紹介したかったが、少なくとも経営母体の異なる2箇所のディーラを訪れたが、どちらにも標準内装のDRIVeは無かった。
 

写真15
XC60からはナビが付くようになり、やっと世間並みになったが、S60もXC60に準じている。


写真16
オーディオとエアコンの操作パネルは人間をイメージしたスイッチなどボルボ得意のスタイルで、さらにフローティング式ののセンタークラスタもボルボの特徴だ。
 

 

写真17
ドアのインナートリムにも粗いシボのレザーが使われて、独特の雰囲気を醸し出している。
 


写真18
センターピラーには、このクラスには珍しい、リア用のエアコンアウトレットがある。
 

 

 
写真19
フロントシートの中間、コンソール後端には、カップホルダーと小物入れがある。
 

 

さて、室内も見回したところで、これからエンジンを始動して走り出すことにするが、この先は 中編にて。

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