Alpina B5 BiTurbo 特別編 その2  ⇒その1へ戻る
1,500万円のスポーツサルーン選び

それではいよいよ、本題に入ろう。

このサイトの読者の多くは、BMWに代表される欧州のプレミアムカーのオーナー、もしくはオーナー予備軍でだと思われる。そしてターゲットとなる車は、サラリーマンが自腹で買う場合は車輌価格400〜500万円級が主流だろう。車種でいえばBMW320i、メルセデスC200、そしてアウディA4 1.8TFSIに代表されるDセグメントクラスで、このクラスからが本格的なドイツ御三家のフィーリングを味わえるベースモデルともいえ、所有する喜びや、チョッと人とは違う優越感も感じることができる。
そして、その上には600〜700万円級のオーナーがいて、5シリーズやEクラスのいわゆるEセグメントサルーンのベースグレードが手に入るし、前出のDセグメントならばエンジンパワーのある3L級も視野に入ってくる。まあ一般的に考えると、サラリーマンが個人で買うには、このくらいが限度だと思うが、このクラスは世間の常識から考えたら、その満足度も充分過ぎるだろうし、もうひと頑張りしてEセグメントの3L級となれば、パワーの免でも完璧だが、そんな事をやっていると価格はドンドンと上がってくる。
そして1千万円を越えて、更に1,500万円級ともなれば、それはもう強烈な動力性能やため息の出るほど高級なインテリアなど世界が違ってしまうが、人間の欲望は限が無いから、もしかして慣れれば当たり前になってしまうのかもしれない。

そういう事を考えれば、今回の企画である「1,500万円のスポーツサルーン選び」 というのは、世間一般で見れば物凄〜くレベルの高い、当サイトの読者諸氏にとっても、多くは非現実的と感じるだろう。富裕層の定義も色々あるようだが、聞くところによると日本では年収が1,500以上を指すということを聞いたことがある。年収1,500万円の勤め人といえば、勤務医、大手都市銀行や金融関係、その他所謂大企業、それも押しも押されもしない業界の代表的な企業。例を挙げればトヨタ、ニッサン、ホンダなどの自動車メーカーやパナソニック、ソニーなどの電気メーカー、その他とにかく一流の上に超が付く企業に勤務して、しかも管理職であることが前提となる。高額所得の職業としては定番の医師だって、 勤務医で1,500万円越えとなるのは、それなりの経験やポジションが必要だろう。そういう、世間では勝ち組エリートの収入をもってしても、1,500万円級のクルマというのは、年収と同じ訳だから、収入に対するクルマに投資する割合、通称”クルマエンゲル係数”はヤンキー兄ちゃん並となってしまう!

以上のような現実を考えれば、今回の企画はトンデモ無い事をやらかしている訳だが、まあ気持ちは大きく持って、憂さ晴らしも兼ねてやってみよう。勿論、本当にこれらのクルマを検討している読者に対しては何かの参考となれば幸いだとういうこともあって、決して悪ふざけでやるわけにもいかず、結構真面目にやってみ ようと思ってはいる。

あっ、勿論経費で購入する社長や院長のことも忘れてはいないですよ。今回のクルマたちはドアが4つあるから、顧問税理士さんだって嫌な顔はしないでしょう。

と、前置きが長くなってしまったが、早速今回の対象車を下の表に並べてみる。

    @Alpina APorsche BMercedes
Benz
CJaguar DMaserati
      B5 BiTurbo Panamera S E63 AMG XJ Super
Sport SWB
Quattrporte S
 

車両型式

  N/A ABA-970M48A CBA-212077 CBA-J12MA ABA-MQPS

寸法重量乗車定員

全長(m)

4.910 4.970 4.895 5.135 5.110

全幅(m)

1.860 1.930 1.870 1.900 1.895

全高(m)

1.490 1.420 1.440 1.455 1.440

ホイールベース(m)

2.970 2.920 2.875 3.030 3.065

駆動方式

FR
 

最小回転半径(m)

  N/A 5.1 5.3 5.8 6.2

車両重量(kg)

  1,950 1,880 1,920 1,950 2,050

乗車定員(

  5 4 5 4 5

エンジン・トランスミッション

エンジン型式

  N/A M48 156 N/A N/A

エンジン種類

  V8 DOHC Turbo V8 DOHC V8 DOHC S.C. V8 DOHC

総排気量(cm3)

4,394 4,806 6,208 4,999 4,691
 

最高出力(ps/rpm)

520/5,500 400/6,500 524/6,800 510/6,500 430/7,000

最大トルク(kgm/rpm)

72.9/3,000
-4,750
51.0/5,000 62.4/5,200 63.7/5,500 50.0/4,750

トランスミッション

  8AT 7DCT(PDK) 7AT 6AT 6AT
 

 燃料消費率(km/L)
(10/15モード走行)

N/A 9.1 6.1 6.4 6.6
 

パワーウェイトレシオ(kg/ps)

3.8 4.7 3.7 3.8 4.8

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

N/A ダブルウィシュボーン 3リンク ダブルウィシュボーン

N/A マルチリンク マルチリンク ダブルウィシュボーン

ブレーキ方式

前/後 N/A Vディスク/Vディスク
 

タイヤ寸法

前/後 Fr:255/35ZR20
Rr:285/30ZR20
Fr:245/50ZR18
Rr:275/45ZR18
Fr:255/40ZR18
Rr:285/35ZR18
Fr:245/40ZR20
Rr:275/35ZR20
Fr:245/40ZR19
Fr:265/40ZR20

価格

車両価格

1495.0万円 1,374.0万円 1,495.0万円 1,655.0万円 1,595.0万円

備考

RHD:+39.7万円

       

このクラスになれば性能も内装も文句のつけようがなく、それでも更に高級感を求めるならば各種のオプションが充実しているので、各自の好みに合わせて如何にでもなる。そこで、今回は単に個人的な見解を書くに留めておく。なお、実際に試乗した経験のあるのはアルピナ以外にはパナメーラSだけで、ジャガーとマセラティについては試乗どころかシートに座って内装を眺めた事も無いから、脳内比較になってしまうが・・・・。
とにかく、やってみよう。
 

@ Alpina B5 BiTurobo
 

アルピナB5については、既に試乗記本編にて詳細に取り上げてあるので、あえて説明はしないが、今回の5車種の中でも最もマイナーで上品という独特の性格を持っている。
 

A Porsche Panamera S
 

パナメーラーの場合は500ps級が目白押しの比較車の中では400psと最も低出力(!)だが、これは今回の趣旨である1,500万円のスポーツサルーン選びという事を考慮したからであり、500ps級のパナメーラが欲しければベース価格で2,061万円也の予算を用意すればよい。
パナメーラの最大の問題点は5車の中では最も広い1,930mmという全幅にある。まあ、街乗りでの不便さは腕でカバーというのもアリだが、駐車スペースが物理的に足りない場合はどうしようもない。通勤に使うとしても勤務先の駐車場に2m近い幅のクルマを止めるスペースがあるかどうか?オーナー経営者の場合だったら、 鶴の一声で幅を広げた専用駐車場を用意すれば良いのだが、勤め人となると、いくら役職が高くても、そうは中々いかないだろう。
内装については掲載写真は幾分地味だが、オプションを奮発すればいくらでも豪華になる。これが、2,000万円超のターボだと、標準でも高級感に満ち溢れた内装になるのだが。そういえば、パナメーラの内覧会が開催された時には、会場のホテルの 駐車場には複数のベントレーが止まっていたそうだから、アルピナで言えばB5ではなくB7と同じ世界かもしれない。って、我々庶民からすればどれもみな別世界なのに、その中でも上下があるとは、もう何が何だか判らなくなってきた。

さてパナメーラSの乗り味はといえば、サルーンとはいえ、そこはポルシェのポリシーなのだろうか、走りの質は911系を彷彿させるもので、アルピナ等のサルーンベースのクルマに比べると良く言えばスポーティーだが、悪く言えばドライバーの為のクルマであり、1,500万円超えの高級サルーンというイメージとは全く異なる。このクルマは法人(特に医療法人)の経費で買えるポルシェだから、走ることが好きなクルマ好き以外には勧められない。
 

B Mercedes Benz E63 AMG
 

BMWのライバルは当然ながらメルセデスで、5シリーズのライバルはEクラス。となると、アルピナB5のライバルはAMG E63であることに異論は無いだろう。この2車を比べてみれば、どちらもEセグメントとしてアウターサイズは同等で、パワーも約520psだし、価格も殆ど同じ約 1,500万円。ところが、エンジンはB5が4.4Lツインターボに対して、E63は6.2Lの自然吸気となり、片や過給で、片や排気量でと、パワーの出し方は全く違う。
内装は基本がEクラスだから、その中では最高級とはいえメルセデスの田舎臭さみたいなものは如何しても抜け切れていないような気がする。 BMWがその名のとおりにバイエルンという都会にあるのに対してメルセデスはシュトゥットガルトという田舎が本拠地となっている。これは、横浜が本社(つい最近までは東銀座)のニッサンと名古屋のトヨタみたいなものだろうか。

そして、もうひとつ。アルピナが上品で大人の雰囲気に溢れているのに対して、AMGのイメージといえばアグレッシブというか下品というか。これに乗っていると、頭が悪そうに見えるとか、危ない商売に間違えられるとか、というデメリットもあるが、チンピラやヤンキーは寄り付かないから、逆に煽られたり、トラブルになったりする可能性は低いメリットもある。それでも、メルセデスのラインナップとなった最近では、以前のように下品丸出しという訳ではなくなったが、一度確立したイメージから抜け出すのは容易ではないようだ。

まあ、何だかんだとネガティブな面も並べては見たが、この手の超弩級スポーツサルーンとしては最もメジャーだったりする。

と、ここで最新情報を入手した。
E63がマイナーチェンジによりエンジンがV8 6.3リッターNAから、V8 5.5リッターターボに変更されるという。今まではどちらかと言うと大排気量のNA路線だったAMGが、世界的な流れである小排気量ターボ化の波に乗って方針を変更したようだ。 これにより性能は、 最高出力は524から525psと同等だが、最大トルクは62.4から71・4kg・mと大幅にアップしている。新しいE63の動力性能はサルーンが0〜100km/hを4.3秒と、アルピナB5の4.6秒よりも0.3秒上回ったことになる。
 

C Jaguar XJ Super Sport SWB
 

ジャガーXJの場合は、明らかに他とはサイズが異なり、これはセグメントが異なるのは見てのとおりだが、それではと同じエンジンを塔載したEセグメントのXF Rだと、価格は1,200万円となり予算が余ってしまう。もっと高いのは無いのか!と怒る院長の顔を思い浮かべながら必死で「あと300万円かぁ」と悩む事務長の 姿が目に浮かぶ。ところが、XJ Super Sport の場合は逆に150万円程予算が足りなくなってしまうが、その辺は裏金かなんかで処理するとか、まあ、事務長さんの悩みは尽きないようだ。

ところで、ジャガーといえば英国製高級車の代名詞で、その内装は英国貴族を髣髴させると思っている読者も多いようだが、実はジャガーの創始者のサー・ウィリアム・ライオンズは自動車会社の見習い工から身 を起こした文字通りの成り上がりであり、ジャガーのレザーとウッドを多用した内装も、平民から見た貴族の世界を現していた。 因みに英国貴族が乗るクルマはショーファードリブンならばロールスロイスで、自ら運転するにはベントレーということになる。ただし、日本ではベントレーもショーファードリブンが多いようで、4ドアのベントレーを運転してご機嫌で高級ホテルに乗り付けると、運転手と間違えられて地下駐車場に誘導されるから、必ず2ドアクーペであるコンチネンタルGTかオープンのコンチネンタルGTCを選ぶことをお勧めする。

そのジャガーも何度かの経営危機とオーナーの変更を経て、1989年にはフォードグループの一員となり、2008年には、超低価格車で有名になったインドのタタ自動車の傘下となった。 と、色々言っては見たが、日本でのジャガーの位置は、紳士の国の高級サルーンだから、ある面ではアルピナB5とユーザー層が重なることも考えられる。
 

D Maserati Quattrporte S
 

高性能サルーンが今ほど一般的でない頃から、マセラティ クワトロポルテといえば高性能サルーン、それもスーパーカー級の性能で有名だった。初代は1963年だから半世紀にも及ぶ伝統がある。ラインナップとしては今回のクワトロポルテSの上級車種にクワトロスポーツGT S(1,690万円)があり、この場合は最高出力が10psアップの440psとなるが、ターボ過給のB5や大排気量(6.2L)のE63に比べるとスペック的には見劣りがする。
内外装は流石にイタリアンテイスト満点で、とりわけ写真のようにレッドのレザーを使ったインテリアは如何にもイタリア的なお洒落さ満点で、これはドイツ車には真似が出来ない分野だろう。なお写真のような派手なものばかりではなく、ブラックの内装も選べるのは当然だ が、それではマセラティを選ぶ意義が無くなってしまう。

マセラティーを選ぶとなると最も心配なのは信頼性だろう。フェラーリの傘下に入った最近のマセラティーの信頼性はどんな物なのか判らないが、販売ルートや整備網から考えても実用車として使いこなすのは相当な勇気が要りそうだ。まあ、あくまでもイタリアンセダンが好きというユーザー限定だろう。
 

1,500万円のクルマ選び、如何でしたかな?エリートの皆さん、そして社長さんに院長さん。

んっ?そちらのお方は、社長でも院長でも無いようですが、随分と羽振りが良さそうじゃあないですか。
もしかして、か・ん・りょう? それも、け・ん・さ・つ?

冤罪でっち上げて有罪率99%を達成し、見事に出世街道をひた走った検○官僚ならば、退職金の一部で、アルピナでもAMGでも簡単に買えるだろう。沢山の資産を持っていても、あの世に持っていけるわけも無いし、現世でそれだけの悪事を働けば、あの世では間違いなく地獄送りだから、まあこの世の最後を楽しむ為の小道具として 1,500万円のクルマくらい買っても(現世では)バチはあたらないだろう。 でも、ねえ、アルピナなんて乗って欲しくないねぇ。そうだ、1,500万円ならば、ずばりレクサズLS600hL バージョンUZ(1,550万円)がピッタリだ。

と、まあ、各車について思っていることを勝手に綴ってみたものの、このクラスになればどれが良い、ではなくて、どれが好きかということに尽きるだろう。それで、もしも 1,500万円の予算があったとたら、自分自身は何を買うだろう、と考えたみたらば、確かにアルピナB5は性能・内外装とも文句なしだが、自分自身のフィーリングには合っていないも、また事実。 それどころか、今の時代は将来の年金なんて全くあてに出来ないから、1,500万円あったらば老後の資金にとって置くとか、中古マンションを買って賃貸にまわして、その家賃を老後の生活費にするとか、堅実な道を考えてしまうが、いや、まてよ。福島第一原発の事故の結果、米国でもプルトニウムやウランが検出されているらしい。と、いうことは、もしかしたら我々日本人は既に手遅れな程に被曝しているのかもしてない。そうなれば、老後なんてどうでもいいから、今を楽しく生きるしかない。よ〜し、老後の資金は全部おろして・・・・・・、という決断力は?無いよねぇ。