Alpina B5 BiTurbo 特別編 その1
 B5試乗記の補足

特別編へようこそ。何時ものように、このコーナーは言いたい放題の毒舌が好みの読者以外はお勧めいたしません。

さて、予告どおりに「1,500万円のスポーツサルーン選び」に行く前に、試乗記の本編で書ききれなかった、いくつかの項目について補足してみる。

先ずは、B5のオプションの件から。
550iには標準装備されているアイテムでも、B5ではオプションとなっているものがあるのは既に触れたが、ここではもう少し踏み込んで みることにする。そこで作ってみたのが下の表で、なるほどB5を550iと同じ装備にするには、更に98.1万円のオプションが必要となることが判明した。
 
  550iに標準、B5ではオプションのアイテム        
    Alpina B5 BMW550i BMW535i BMW528i BMW523i
 

ダイナミック・ダンピング・コントロール

標準 標準 188,000 188,000 188,000
 

ダイナミック・ドライブ *1

212,000 標準 212,000 × ×
 

コンフォート・アクセス

136,000 標準 標準 標準 標準
 

ソフト・クローズ・ドア(フロント&リア)

93,000 標準 93,000 93,000 93,000
 

リア・ビュー・カメラ

96,000 標準 標準 標準 標準
 

リア・サイドウィンドウ
 ・ローラー・ブラインド(手動式

30,000 標準 標準 30,000 30,000
 

スルーローディング
 (リアシート60:40分割式

113,000 標準 標準 標準 標準
 

トップ・ビュー&サイド・ビュー・カメラ

100,000 標準 100,000 100,000 100,000
 

ヘッドアップ・ディスプレイ

201,000 標準 201,000 201,000 201,000
 

合計

981,000        
  *1 ダイナミック・ダンピング・コントロールと同時装着
  単独不可
       

表をみれば、標準のB5は550iどころか、523iですら標準のコンフォート・アクセス、リア・ビュー・カメラそしてスルー・ローディングもオプションとなっていることが判る。なんだよ、1,500万円も出して 600万円チョイの523i以下の装備はねぇだろう!と言いたくなるオーナー(とオーナー予定者)もいるかもしれないが、この理由を考えれば本編で想像したE63AMGと同価格にするために装備を省いた、という仮説は正解のような気がしてきた。要するに、アルピナB5は本来1,600万円のクルマなのだ。そう思っていれば腹も立たないだろう。

実は表を見てもう一つ重大な事実に気が付く。それは、アルピナとBMWでは同じオプションならば価格も同じということだ。そんなの当たり前だろ、といわれそうだが、アルピナはあくまでもBMWとは別の会社であり、、B5は5シリーズの基本コンポーネントを流用しているが、BMWではない別のクルマだから、同じ価格でなくても良いのだ。アルピナの付加価値を考慮して同じ部品でもアルピナから買えば高い、ということだってアリなのだが、その点では実に良心的な商売をしているようだ。

試乗記後編では、B5の走行モードにNORMALより大人しいCOMFORTがあり、これは5シリーズには無いものだと説明したが、COMFORTはダイナミック・ダンピング・コントロール若しくはダイナミック・ドライブ の装着車両で使用可能なために、厳密に言えば550iには 標準で、535i以下の6気筒ではダイナミック・ダンピング・コントロール(18.8万円)を付けることで使用できるというのが正解となる。言い換えれば、世の中の多くの5シリーズは6気筒であり、ダイナミック・ダンピング・コントロールをオプション設定したクルマも少ないから、COMFORTモードの付いた5シリーズに巡り合う可能性は少ないということで後編では詳細説明をしていなかったという訳だ。本音を言えば、特別編に来ない読者(3割程度いる)がB5どろこか、5シリーズの新車を購入する確率は極々低いから、本編では説明に手を抜いたという訳だった。
 



2つ目はエンジンカバー裏のインシュレーターについて。
上の写真をご覧願おう。BMW5シリーズのエンジンカバーの裏側には防音目的のインシュレーターが貼ってあるが、B5にはインシュレーターが無く、複雑な補強が丸見えとなっている。右上の写真は528iの場合だが、5シリーズは全て同様で、B5に近い構成の550iでもインシュレーターは装着されている。
さて、B5には何故インシュレーターが無いのか、といえば、インタークーラーの大型化に伴いエンジンカバーとエンジンフードとの距離が不足し取り付けられない、ということらしい。
それに加えて、B5は5シリーズと違いフォグランプの設定が無いが、その理由はB5のインタークーラーに必要な空気の容量を確保するために、フォグランプのスペースも全て使用して エアインテイクの面積を稼いでいる、ということらしい。



どこかの国のターボ車みたいに、短時間なら抜群の高性能を誇るのに、連続で高負荷を掛けると冷却不足でパワーダウン・・・・なんて事が無いように、万全の設計がなされているようだ。

3つ目は、ATの制御ロジックについて。
アルピナのAT制御では、例えばATモードで7速、すなわちD7で走行中に左のパドルを引いてシフトダウンしようとしても、場合によっては6速にシフトダウンされないということがある 。という話を聞いたことがる。そんなことがあるのだろうか?実は確かにそういう場合があるそうだ。
B5のATコントロールロジックが変速を判断するのは、アクセルの踏み込み量と車両速度の2つの情報による。D8で走行中にアクセルペダルを踏み込んだ際に、ATはキックダウンによりD8からD7にシフトダウンされる。D7での加速後に車両のAT制御は、車両速度とドライバー要求する加速度(アクセル開度)を判断してD8にシフトアップしようとしているタイミングで、ドライバーがパドルによるシフトダウンを要求する操作をした時には、シフトダウンされてM6となる代わりに、D7からM7に 代わるだけで、シフトダウンは行われないという場合があるようだ。

チョッと説明がややこしくなってしまったので、上記の例をもう少し判りやすく整理すると、ATモードで巡航中に加速が必要となりアクセルペダルを踏んだらば、ATはシフトダウンされて加速状態となった。加速が終わって、アクセルを少し戻して巡航に入ったので、ATのコントローラーはシフトアップしようと判断した時に、ドライバーがマニュアルでシフトダウン操作を行った場合には、シフトダウンは行われずにMモードへの切り替えのみが起こる、ということだ。
他にも色々な状況で、マニュアル操作が無視されることがあるそうだ。まあ、幸運にもB5のオーナーになったユーザーは、この辺も色々試す楽しみがありそうだ。

ということでB5試乗記についての補則は、これでお終いにして、本題に入ることにする。

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